雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

ブログを引っ越ししました

2008年12月14日 09時43分05秒 | JAZZ
以前からなかなか実行に移せなかった「ブログの引っ越し」を
ついに始めました。
年末にかけて、少しづつ過去の記事をFC2 blog へ移していく
予定でいます。
まだ、全然、新ブログの体裁は整っていませんが、
お暇の方は覗いてみてください。


新ブログタイトルは「雨の日にはジャズを聴きながら」です。

アドレスは、http://jazzlab.blog67.fc2.com/  です。
今後ともどうかよろしくお願いします。


C.Baker & E.Pieranunzi / Soft Journey

2008年12月07日 21時01分57秒 | JAZZ
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Chet Baker & Enrico Pieranunzi / Soft Journey

エンリコ・ピエラヌンツィはその長いキャリアのわりには、日本で注目されたのが遅かったため、80年代の作品の中には既に廃盤となり、入手困難な作品も多々あります。その筆頭が幻の仏レーベルIDAに吹き込まれた諸作品です。

IDAには、ソロの 『 Parisian Portrait 』 (1990),マーク・ジョンソンとデュオで羽の生えたウサギ?のジャケが印象的な 『 The Dream Before Us 』 (1990),マーク・ジョンソン,ポール・モチアンとのトリオ 『 Untold Story 』 (1993)、そしてチェット・ベイカーを加えたクインテット作品 『 Soft Journey 』 ( 1980 ) の計4作品が残されていますが、全て廃盤のうえに、IDAそのものが短命だったため流通量も極端に少なく、たまにオークションに出品されても超高額で取引される商品でした。

そんなファン垂涎の作品をペルージャに本部を置くEGEA がここにきて復刻再発してくれているのは既にエンリコ・ファンならずとも周知していると思います。まず2006年7月に 『 Untold Story 』 が、ついで2008年5月に 『 Parisian Portrait 』 が再発されました。そしてこのたび EGEA Histrical Collection の pieranunzi series 第三弾として復刻されたのは、大方の予想に反して、チェット・ベイカーとの共演盤 『 Soft Journey 』 でした。

本作はフロントにチェット・ベイカーとマウリツィオ・ジャンマルコ( ts )、リズム隊にエンリコ、リカルド・デル・フラ、ロベルト・ガトーを配した最高のメンバーで臨んだ力作です。6曲中4曲がエンリコのオリジナルで、その陰影深いエンリコの楽曲が全体の雰囲気を支配しています。10分以上に及ぶエンリコとチェット・ベイカーのデュオ≪ My Funny Valentine ≫ では、翳りと孤独を内包したチェット・ベイカーのボーカルに心酔すること必至です。何故か古色蒼然とした香りが立ち込めてくるのは不思議です。レア盤というだけで中身を伴わない作品も多いなか、本作は非常に充実した内容だと思います。

惜しむらくは、前作同様、アートワークがオリジナルではなかったことです。本作は、もともと1979年に Edizione Pan からLPで発売されました。その時ジャケットがこれ↓。


そして、これを1995年に IDA がCDで復刻した際に使用されたジャケットがこれ↓。


本来なら復刻されただけで感謝しなければならないのですが、できたらアートワークもオリジナルに忠実に復刻してもらいたかったですね。権利の問題もあるのでしょうが、体裁に異常なくらい拘りを持つ日本と、そんなことに全く拘りのないイタリアとの文化の違いもあるのでしょうね。でも、このCDは6面デジパック仕様なのですが、観音開きの内ジャケに、オリジナルLPのジャケット写真が使用しれているのが、ちょっと嬉しいかも。

と云う訳で、残るはあと一枚。マーク・ジョンソンとのデュオ『 The Dream Before Us 』だけです。楽しみだ~。




あと、チェット・ベイカーとエンリコ・ピエラヌンツィの共演盤で復刻が望まれる作品は2枚。Philology の『 The Heart of The Ballad 』と、Space Jazz trio 名義の『 Little Girl Blue 』 でしょうか。「CDである以上、いつかは再発される!」という言葉を信じて、気長に待つとしましょう。

Paolo Di Sabatino / Atelier of Melody

2008年12月04日 18時48分24秒 | JAZZ

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2004年に High Five Quintet の『 Jazz Desire 』が発売されるや否や、輸入盤店を中心に火がついたイタリアン・ジャズ・ブームですが、一過性のブームと思いきや然に非ず。4年経った現在でもしっかりとファンの心を掴み、ジャズ界における新潮流を形成するに至っていると言っても過言ではありません。最近ではジャズ雑誌で特集を組まれることも珍しくなく、伊ジャズメンが来日すればライブ会場はいつも満員で熱気に溢れています。そんな状況を見ていると、ジャズ界の中心軸は少しづつ米国から欧州に移動しているのでは、と思えて仕方ありません。

さて、イタリアの技巧派ピアニスト、Paolo Di Sabatino ( パオロ・ディ・サバティーノ 、1970 ~ ) の新譜が発売されました。すでに10枚以上のリーダー作を吹きこんでいるサバティーノですが、今回は何と Atelier Sawano からのリリースです。今までサバティーノを聴いてきたファンは、サバティーノと澤野工房の組み合わせに違和感を感じるかもしれません。彼はラテン気質全開の熱いプレイで聴き手を魅了するタイプでしたから、優雅な抒情性を重んじる澤野の理念にはそぐわないのでは、と思っていました。でもそこは流石に両者ともプロ中のプロです。情熱と抒情のミクスチャー感覚が絶妙の、素晴らしい作品に仕上がっています。伊ジャズ・ファンにも、澤野ファンにもアピールできるサウンドです。

全13曲で収録時間70分。平均5分程の短めの曲ですが、どれもアレンジ、構成が非常に凝っていて、ジャケットのアートワークのように色彩感豊かな楽曲が並ぶ密度の濃い作品です。全くダレることなく最後まで一気に聴かせる魅力があります。5曲が彼のオリジナルで、その他はスタンダードやジャズメン・オリジナルなどです。ベースは Marco Siniscalco 、ドラムは Glauco Di Sabatino という方ですが、両者とも僕は初聴です。でも二人ともなかなかのツワモノです。サバティーノの右手から綺羅星のごとく繰り出される音連射は、ヴィヴィッドに聴き手の心を揺さぶるでしょう。

最近の澤野工房にマンネリ感を抱き、食傷気味な方にも、きっと満足していただける秀作です(キッパリ)。個人的には2008年Atelier Sawano のベストです。(ちなみに2位はロバート・ラカトシュの『 You and The Night and The Music 』。3位はトヌー・ナイソーの『 For Now and Forever 』。)

Paolo Di Sabatino / Atelier of Melody   2008 Atelier Sawano AS081
Paolo Di Sabatino (p)
Marco Siniscalco (b)
Glauco Di Sabatino (ds)


Paolo Di Sabatino / Paolo Di Sabatino  2001 Around Jazz

手許にあるサバティーノのコレクションは、澤野の最新作を含め以下の計7作品。『 Foto Rubate 』、『 Introducing Paolo di Sabatino 』、『 Threeo 』、『 Italian Songs 』、『 Paolo di Sabatino 』、『 ARK Trio 』。

とりあえずこの7作品の中でベストを選ぶとすると、やはり幻本にも紹介されたセルフ・タイトルの『 Paolo di Sabatino 』でしょう。本作はHigh Five Quintetの一連の作品にも負けずとも劣らないハード・バップの傑作ではないかと。ステファノ・ディ・バティスタ、ヤヴィエル・ジロット、ダニエレ・スカナピエコと、伊国の超ツワモノ達が参加しています。この三者が一堂に会するわけではなく、基本的には1管フロントのカルテット編成です。

これを聴いていると、ルカ・マンヌッツァには申し訳ないけど、High Five Quintetにサバティーノが加入していれば、より完成度の高い究極のバンドになっていただろうにと、思うのですが.....。


Walter Bishop Jr. / Speak Low HQ-CD仕様 ( 2 )

2008年12月02日 12時37分00秒 | JAZZ
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さて、今まで所有していたCDは1998年ころに発売された国内盤(現在廃盤)です。ジミー・ギャリソンのベースが全面にせり出し、ちょっと引いたところでピアノとドラムが鳴っているようなバランスです。とにかく、極太コリゴリベース音が耳につきます。3弦4弦の開放弦の音など地響きするほどの凄い箱鳴りがします。まあ、そこがいかにもジャズ臭くて心地よいのですが。まさにジャズ喫茶で映える音作りです。

では今回のHQCD盤はどうかというと、まず一聴して気づくのが各楽器のバランスの変化です。ベースが一歩引いた位置に定位し、さらにエッジの鋭く立ったすっきりした音色に衣替えしているのです。ビショップのピアノも輪郭がクリアになった印象を受けます。明らかに洗練された音として蘇っていますが、その代償としてジャズ特有の熱い空気感は損なわれたように感じられるのです。そして、音が変化したことは理解できるのですが、果して音質が向上しているのかどうかというと疑問です。単にマスタリングの違いを音質の違いと誤認している可能性もあるし。本当なら同じマスタリングを施された素材で比較検討しないとだめなのでしょうね。

というわけで、本盤一枚だけで判断するのは危険ですが、HQCD盤は音質が向上したか?という問いには、ちょっとビミョーとしか答えられません。 ただし、音の変化の傾向からすると、新しい録音作品をHQCD処理することはそれなりのメリットがあるのではないかと思います。今のところ、HQCD や SHMCD は旧作のリイシュー盤が殆どですが、これからは新録音もこれらの高音質CDでリリースしてもらえればありがたいですね。

12月24日には、ソニーから新たな高音質CD、Blu-Spec CD が発売されます。これは、Blu-ray で採用されているカッティング技術の導入と、Blu-ray 用に開発された高分子ポリカーボネートの使用を特徴としたディスクです。

上位規格のDVD audio や SACD、あるいは従来からあるXRCDなども巻き込み、ますます高音質CDの競争が激化しそうな気配です。はたしてCD売上向上の起爆剤となれるでしょうか。個人的には浅ましい音楽産業の罠にハマらないよう、しばらくは静観しようと思っていますが、それにしても消費者に散財させようとあの手この手で新規格を出してくるものですね。そのあたりの企業努力には素直に敬服いたします。

そんなCD販売合戦が熾烈化する一方で、すでにネットにおける24 bit / 96kHz のロスレス配信が現実化しています。近い将来、ごく当たり前にようにパッケージを介さない音楽視聴が可能となるでしょう。そんな中、ハイエンド・オーディオ・メーカーである Linn が昨年、Klimax DS というネットワーク対応DAC を発表しました。今月のジャズ批評 No.126 で後藤誠一氏もレポートされていましたね。値段が2,940,000円と、まだまだ一部の金持ちの愛玩具的製品ではありますが、いずれ低価格化が進めば、その時こそ世の中からCDが消え去る時なのではないでしょか。

Walter Bishop Jr. / Speak Low HQ-CD 仕様 ( 1 )

2008年12月01日 15時42分41秒 | JAZZ

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最近、店頭や雑誌等でやたら目につく  SHM-CD ( Super High Material CD )や HQ-CD ( High Quarity CD ) 仕様の作品ですが、これらはより高品位のポリカーボネートを基盤に使用し、読み取り時に生じるデータエラーを軽減した高音質ディスクのことです。これらのディスクは従来のCD規格内の製品であるため、SACDとは違い通常のCDプレーヤーで再生できることが売りです。

SHM-CD は、ユニバーサル・ミュージックが開発、商標登録したディスクで、最近になってワーナーやBMGなども参入し、リイシュー盤を立て続けに発売しています。

一方、HQ-CDは、EMI ミュージックがこの9月に発売開始したばかりの高音質CDで、液晶パネルに用いられている透明度の高いポリカーボネートを基盤材料に使用している点ではSHM-CDと同様ですが、さらに従来のアルミニウムにかえて特殊合金の反射膜を採用しているところでSHM-CDとは差別化を図っているディスクです。

これらの高音質CDについて、評論家たちは挙って激賞していますが、ネット上では賛否両論があるみたいです。大体、音楽データとしては従来と何ら変わっていないのですから、基盤や反射膜の素材を改良しただけで、そんなに劇的な音質改善効果があるとは到底思えないのですが。

基本的に僕は、< すでにCDで所有している作品に関しては、24bit digital remaster 化されようが、紙ジャケ再発されようが買い直さない > という主義を貫いてきましたが、先日、かつては幻の名盤と賞されてジャズ喫茶で人気のあったウォルター・ビショップ・Jr.の 『 Speak Low 』 の HQ-CD 盤を店頭で発見したのです。

実はこの作品は非常に思い出深い作品です。大学時代にLPで購入し、当時はMDもmp3プレーヤーもなかった時代ですから、当然カセットテープにダビングし、年がら年じゅう聴きまくった作品です。当時僕はベースを弾いていたのでこの作品は絶好の教材でした。なにしろベースのジミー・ギャリソンのベースラインが美しく、しかも図太くデカい音量で記録されていたので、耳コピーしやすかった。しかも収録曲が ≪On Green Dorphin Street ≫、≪ Speak Low ≫、≪ Milestone≫ と練習曲には最適なスタンダードが並んでいるのです。特に当時モード的楽曲でのベースライン作りに苦戦していた僕には ≪ Milestone≫のラインは非常に参考になったものでした。また、≪ Speak Low ≫も弾いてみると意外に難しいコード進行で、つまりはAメロでGm7-C7が8小節続くのですが、ここでケーデンスに則ったラインでは限界があり(当時はそう思った)、やはりモード的手法で音を選んでいった方がラインを作りやすいこともこの作品で知ったのでした。そんなわけで人一倍、本作には思い入れが強かったのです。

閑話休題。そんな愛聴盤ですから、反射的にこのリイシュー盤が目に飛び込んできたのです。そして僕はそのジャケットに貼られていた大きな赤いシールに目を奪われました。

“ この音! 今までの「 スピーク・ロウ 」は何だったんだ? 寺島靖国 ”

過去の LP や CD で発売された音を完全否定する寺島氏。僕はその完全否定された音を長年愛聴してきたのです。寺島氏独特の挑発的誇大表現なのは分かっていますが、でもそう言われちゃ、聴かずにはいられない。本当に音は良くなっているのか、自分の耳で確かめてみようと思い、買って聴き比べてみました。

このような場合まず重要なことは、僕のような平凡なリスナーでもその音質の違いを享受できるか、ということです。雑誌等で記事を書いている評論家諸氏は、高価な再生装置を用いて十分な音量のもとで評価を下しているのです。当然、彼らの耳は素晴らしい感度をもっているわけで、おそらく、そういう好条件下で両者を比較すれば、その差が歴然とするのは想像に難くありません。

しかし、問題は僕自身が感じるか否かであり、他人の評価など意味がありません。合計150万円程度の平均的オーディオシステムで、マンション住まい。そして元来音質に無頓着な性格の僕が、その差異を体感できなければ、いくら高音質を謳った SHM-CDであれ、HQ-CDであれ、その存在は全く意味を持たないのです。オーディオなんて、所詮、個人的世界の中で繰り広げられる妄想のようなものですから。

つづく


American Clave / Anthology

2008年11月28日 05時39分34秒 | JAZZ
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一週間ほど前に、渋谷のジャズ・カフェ 『 メアリー・ジェーン 』 に立ち寄った際に店内で流れていた音楽、それが American Clave ( アメリカン・クラヴェ )の 2枚組コンピレーションCD 『 Anthology 』でした。

最近はこの種のオルタナティブというかアンダーグラウンド・ジャズを滅多に聴かなくなってしまったので、 段ボールに仕分けて物置部屋の奥の方に放置していたのですが、メアリー・ジェーンで聴いていたらムショウに懐かしくなり、一昨日、段ボールから探し出して聴いて、夜な夜な独り悦に浸っています。

アメリカン・クラーヴェなんて俺は知らん、という方もいらっしゃると思いますので、簡単に説明しておきます(と、言っても、僕もほとんど知りませんが)。

アメリカン・クラーヴェは、NY のアンダーグラウンド・シーンの鬼才、キップ・ハンラハンが1980年に創立したレーベルです。1954年NYラテンの中心地、ブロンクスで生まれたハンラハンは、幼い時からパーカッションに慣れ親しみ、のちにインド、ガーナ、バリなどを巡りながらその土地のリズムを吸収していきました。さらに70年代に入ると、ジャン=リュック・ゴダールやテオ・マセロに師事し、映画や音楽プロデュースについて多くを学んだといいます。70年代末には映画制作を企画しますが、予算不足のため断念。よりローバジェットで実現可能な音楽の制作に興味を抱くようになっていきます。そしてついに1980年にアメリカン・クラーヴェを創立しました。

アメリカン・クラーヴェが提示する音楽は、ラテン・パーカッションをベースとして、そこにジャズ、ファンク、R&B、ノイズ、ポエトリーなどの要素を取り入れた「脱ジャンル音楽」です。一応、キップ・ハンラハンの一連の作品は、レコード店ではジャズのコーナーに仕分けられていますが、この音楽をジャズと呼んでよいかどうかわかりません。ただ参加ミュージシャンを見渡すと素晴らしいジャズ・ミュージシャンが名を連ねています。ドン・ピューレン、カーラ・ブレイ、スティーブ・スワロウ、アート・リンゼイ、デヴィッド・マレイ、アラン・トゥーサン、レスター・ボウイ、エヴァン・パーカーなどなど (ロバート・ワイヤットやジャック・ブルースなんかも参加している作品もある)。

パーカッションを核にしたNYラテンと言ってしまえば簡単なのですが、ハンラハンの音楽には他の誰とも似ていない異質な輝きを放っています。しなやかで繊細な感性をもったハンラハンは、常に社会に対する不条理、音楽業界のマジョリティーに対する怒りなどを静かに内に秘め、そのエネルギーを自らの音楽に転換していったのです。NYの街の、しかし決してビジネスマンが行きかう昼間の表通りではなく、排水溝から立ちのぼる生臭い悪臭がただよう薄暗い路地裏に息づく耽美でクールなラテンの響。彼の音からはそんなイメージがリアルに思い描けます。

彼は多くのアーティストをプロデュースしてきましたが、その中でも最も評価されているのが、タンゴ界の巨人アストル・ピラソラの作品です。ハンラハンがプロデュースしたピラソラの作品には、『 Tango Zero Hour 』( 1986 ) 、『 The Rough Dancer and The Cyclical Night 』 ( 1988 ) 、『 La Camorra : The Solitude of Passionate Provocation 』 ( 1988 ) の3枚があります。この3枚によりヒラソラ自身の評価もより一層高まりました。一番人気はやはり最初の『 Tango Zero Hour 』でしょう。当初はアメリカン・クラーヴェからリリースされたこれらの作品も、のちにワーナーから発売されるようになり (ハンラハンがお金に困って、版権を譲渡したのでしょうか)、04年のワーナーのジャズ部門閉鎖に伴い、現在はノンサッチから発売されています。

そんなわけで、アメリカン・クラーヴェは決して多くのカタログを所有するレーベルではないのですが、何から聴いたらよいのか分からないという方には、この2枚組コンピレーションは最適です。サンプラーという体裁はとっていますが、実は80年代のハンラハンを短時間に俯瞰し、理解することのできる作品として貴重だと思います。

実を言うと、最近のハンラハンならびにアメリカン・クラーヴェの活動については全く知りません。僕がアメリカン・クラーヴェに興味を持ったのは2000年に発売された村井康司氏の著書『 ジャズの明日へ 』 ( 河出書房新社 )で紹介されていたのがきっかけで、その頃に熱病にかかったように夢中で聴き漁ったのですが、その熱もすぐに冷めて、最近はその存在すら忘れていました。結局、キップ・ハンラハンの扉は開けたものの、その中に奥深く入りこむことはできなかったです。今ならあの頃とはまた違った理解の仕方ができるかと、今回針を落としてみましたが、やっぱりある一定のところから先には惚れ込めない何かがあるのですね。40代半ばにして理解できないものが今後、理解できるようになるとは到底思えず、やっぱりこの種の音楽は僕にとっては永遠の越境音楽なんだろうなぁ、と溜息をついている次第です。

Aaron Parks @ Cotton Club

2008年11月24日 05時42分57秒 | ライブ
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Aaron Parks ( アーロン・パークス )のライブを、丸の内 コットンクラブに観に行ってきました。今回の公演は19日から22日までの4日間。僕が観たのは最終日22日の2nd show 。いくらメジャー・デビューしたとはいえ、まだまだ日本では知名度の低いアーロンですので、当日ぎりぎりの予約でも余裕で間に合うだろうと高を括っていたらどんでもない。当日に電話したらすでに 1st show は満席とのこと。仕方なく9時30分開演の 2nd show を観ることにしました。

あとでわかったのですが、どうやら某企業社員や某カード会員に優待券が大量に配られたようです。僕も Blue Note から送られてきた割引券( チャージ料金6.825円が4.200円に )を利用しました。おそらく正規料金で観た方はほとんどいないのではないでしょうか。

今回のメンバーは、最新作 『 Invisible Cinema 』 ( 前項あり )にも参加していた Mike Moreno ( g )、Matt Penman ( b ) を含むギター・カルテット編成。ドラマーだけが Eric Harland ではなくJochen Rueckert ( ヨッヘン・ルカート )に代わっている。

ヨッヘン・ルカートはほとんど馴染みのないドラマーですが、古くはマーク・コープランド、最近ではカート・ローゼンウィンケルのサポートをしています。NYの気鋭ギタリストMisja Fitzgerald Michel ( ミシャ・フィッシェジェラルド・ミシェル )の『 Encounter 』( 2006 ) でも叩いていました。75年ドイツ生まれのヨッヘンはNY のロック界でも活躍中で、しかもドラマーとしてではなく、ベーシスト、プログラマー、プロデューサーとしても名を馳せているようです。

アーロンがメンバーを簡単に紹介のあと演奏が始まりました。アーロンはどことなくニューハーフっぽいしゃべり口調で、ちょっと意外。ほとんどMCなく淡々とアーロンの世界観を綴っていくステージです。ガレスビーの ≪ Con Alma ≫ を除きすべて『 Invisible Cinema 』からの楽曲。アンコールにはタイトルは失念しましたがBe-Bop の曲を演奏してくれました。やっぱり全編にマイク・モレノの宇宙系ギター・サウンドが効いています。たとえアーロンのソロに短いオブリガートつけるだけでも、瞬時にホール内の空気を変えてしまう存在感が彼にはあります。やはりアーロンの理想とする音世界にはマイクのギター・サウンドは不可欠な要素なのだということが実感されるステージです。アルコールにより全身の知覚神経が軽く麻痺していることもあり、心地よいトランス感に浸れることができました。特に4曲目に披露した ≪ After Glow ≫ は、アーロンのテンポ・ルバートで始まるのですが、この導入部がただただゆっくりと聴き手を陶酔の花畑に誘うkeithy な美旋律満載で、うっとりしてしまいました。約80分のステージは全く退屈することなく、浮遊感漂う音場に身を任せながら、最高の時間を過ごさせていただきました。

というわけで、帰宅後、ライブの感動を思い起こしながら『 Invisible Cinema 』を聴き直していましたが、もう一枚、アーロンの名演が聴ける作品として、 Patrick Cornelius ( パトリック・コーネリウス )の『 Lucid Dream 』 ( 2006 ) を引っ張り出して聴いています。パトリックはNYで活躍中の新進気鋭のアルティストで、昨年、アーロン周辺のミュージシャンとしてマイク・モレノやローガン・リチャードソンなどの新譜を拙ブログで紹介した際、ブログ『 ジャズ新譜ナビゲーター 』のナカーラさんから教えてもらったミュージシャンです。ここでのアーロンのソロもかなり出来が良いです。

 2 songs upload from the album 『 Lucid Dream 』

ちょっと話は逸れますが、12月号のSwing Journal にアーロンの記事が掲載されていましたが、その中で、彼は「 以前の4枚のリーダー作( Keynote の諸作品のこと )は、誰も掘り出せないような地中の奥深くに埋めてしまいたい気持ちだ。」と話しています。彼の若い頃の折り目正しいスタイルも僕は好きですが、自身としては許せない過去なのでしょうね。なんだか気持ちは分かるような気がします。

Set List ( October 22, 2008 at Cotton Club, MARUNOUCHI , 21:35~ )

1) Nemesis
2) Con Alma
3) Riddle Me This
4) After Glow 
5) Harvesting Dance
6) Praise
< Encore >
7) Be-Bop の曲。タイトル失念。

Aaron Parks (p)
Mike Moreno (g)
Matt Penman (b)
Jochen Rueckert (ds)

Modern Art Trio / Progressive Jazz

2008年11月22日 18時14分54秒 | JAZZ
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Franco D'Andrea(フランコ・ダンドレア )が Modern Art Trio 名義で70年に吹き込んだ名盤『 Progressive Jazz 』 が復刻されるという情報は、今年の春頃には入っていたのですが、発売日などの詳細はその後も全くアナウンスがなく、そのうち僕も忘れてしまっていました。が、ついに、やっと、発売されました。復刻ししてくださったのは、パオロ・スコッティ総帥率いる Deja Vu Records です。仕様は紙ジャケ&LP 。最近はアナログ収集に全く興味がなくなった僕も、今回は随分迷いましたが、やっぱり紙ジャケを購入しました。でも、この紙ジャケがなかなか素敵なのです。

詳細はまたあとで。

というのも、これからコットンクラブにアーロン・パークスを観に行ってきますので、とりあえず、退散。

November 20, 2008

2008年11月20日 23時47分45秒 | JAZZ
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今日は毎年楽しみにしているボジョレヌーヴォーの解禁日。というのは嘘で、ワインには全く疎い僕にとってはボジョレヌーヴォーのどこがいいのか、正直わからない。最近は随分少なくなったが、以前は接待で嫌という程、高級ワインを飲ませてもらったので、高いワインなのか、そうでないワインなのかだけは一口飲めば分かるようになったつもりでいる。

そんなわけで、ボジョレヌーヴォーの味には興味はないものの、近所のイトーヨーカドーの可愛い売り子さんの笑顔に負けて、アルベール・ビショー社のハーフ1780円のワインを買ってきた。

飲みながら聴いているのはやっぱりフランスがイイだろうということで、Orchestre National De Jazz の『 In Tempo 』。 Laurent Cugny が指揮を務めていた1996年の作品。この時期の同バンドには、ステファノ・ディ・バティスタ、ステファン・ギローム、フラビオ・ボルトロ、それにステファン・ウシャールなど、驚くほど豪華なメンバーが在籍していた。「バティスタはサイドメンで起用した方が生きる」、という仮説を見事に証明した傑作だ。

November 18, 2008

2008年11月18日 23時36分12秒 | JAZZ
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仕事の移動時間を利用して、渋谷の老舗ジャズ喫茶(ジャズカフェ)、Mary Jane ( メアリージェーン )に立ち寄る。渋谷南口を出て大きな歩道橋で246号を超え、少し路地を入ったところにメアリージェーンはある。渋谷の繁華街から離れているため意外に知られていない。

ここはジャズ喫茶といっても食事のメニューが豊富で、ランチもやっているので、タラコのパスタを頂く。

この日店内に流れていたのはBugge Wesseltoft ( ブッゲ・ヴェッセルトフト )のピアノ・ソロ集『 It’s Snowing On My Piano 』 とAmerican Clave のコンピレーション。ブッケは2年ほど前にお邪魔した際にもかかっていた。ブッゲも American Clave もこの店のオーナー、福島哲雄氏の十八番だ。ここから発信された尖がったジャズは多い。

ブッケ・ヴェッセルトフトはノルウェーの先鋭キーボーディストであり、またフューチャージャズ・レーベル “ JAZZLAND ” の主催者でもある。
ブッゲのラジオはこちら。( Last. FM )


Bugge Wesseltoft  『 It's Snowing on My Piano 』  1998

雑 記

2008年11月17日 22時52分50秒 | JAZZ

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11月13日 木曜日
ジャーナリストの筑紫哲也さんが7日に肺癌で亡くなられていたことを知る。
昔、テレビのインタビューで氏が、煙草の煙をはきながら沖縄問題について熱弁をふるっていたことを思い出す。
大量殺人兵器のごとき煙草を右手に持ちながら反核を訴える筑紫氏が妙におかしかった。
そういえば、以前、倉本聰さんも富良野自然塾の話をしながら煙草を吸っていた。何を話しても説得力に欠けるような気がした。

11月14日 金曜日


拙ブログ始まって以来、初の7のぞろ目、777位!
なんだか嬉しくなって、思わずSS撮ってみる。

11月15日 土曜日


仕事に忙殺される。午前中に胃内視鏡を40人こなす。もうヘロヘロ。
仕事帰りに同僚と白金台の有名フランス料理店、OZAWA で夕食を食べる。
同僚がオーナーシェフと知り合いとのこと。
オマール海老の茶わん蒸しがこの世のもので作ったとは思えないほど美味しかった。また行きたい。


11月16日 日曜日

あいにくの雨。屋内で遊べる場所ということで、10月にオープンしたばかりの埼玉県越谷市にある日本最大のショッピングモール、イオンレイクタウン( AEON Lake Town ) に行く。とんでもなくデカくて途方に暮れる。船橋ららぽーと TOKYO-BAY の比ではない。文字通り、湖まで人工的に作っちゃてるし。でも、店舗はこれといって目新しさはない。ただデカいだけ。この施設の隣に、これまた馬鹿デカいララシティー( ららぽーと新三郷+コストコ+IKEA )を建設中っていうんだから、何を考えているのやら。どう考えても作りすぎでしょ。でも暇つぶしには最高ですわ。コインゲームに子供そっちのけで夫婦で夢中になり、幸せな時を過ごした。

11月17日 月曜日

仕事を早く切り上げ、急いでBlue Note Tokyo へ。 今日は High Five Quintet のライブ。早く着きすぎたので、ビールを飲みながら南博さんの 『 白鍵と黒鍵の間に 』 を再読。やっぱり滅茶苦茶面白い。はっきり言って、氏の音楽よりもテキストの方に魅力を感じてしまう。続編出ないかな~。
ライブは最高。それ当然。スカナピエコはだいぶ疲れきっている様子。今日は朝9時に起こされたようだ。
僕はファースト・セットを観たが、帰り際にセカンドを観に来ていた Rhodia さんにご挨拶。可愛くて、そしていかにも社交的で誰からも好かれそうな女性でした。


Richard Whiteman / Slow Night

2008年11月12日 22時05分22秒 | JAZZ
カナダ人ピアニスト、リチャード・ホワイトマンの3年ぶりとなる通算6枚目の最新作です。

96年の『 Grooveyard 』がコアな輸入盤ファンの間で人気となり、99年の『 Avenue Rhodes 』が例の『 幻のCD レア盤~ 』に掲載され、さらには05年の『 All or Nothing At All 』が寺島靖国氏の監修するコンピレーションCDに収録されるなど、着実に日本でもファンを増やしてきたホワイトマン。 今回もピアノ・トリオ編成でスタンダードを中心に演奏しています。何故か、椎名林檎の≪ 歌舞伎座の女王 ≫ もやってます。

とにかく、ホワイトマンのジャズを聴くといつもユーホリックな気分で満たされます。ふ~、イイねえ、このスイング感。特別な仕掛けや気負いなど全くなくて、それでいて滋味溢れる豊かなフレーズが次々と紡ぎだされる。最初のワン・フレーズでその場の空気を仄かに暖めてくれるような優しい音です。

現在ジャズ界が直面している閉塞感を何とか打破しようと日々、新しいジャズを探求、模索している先鋭ジャズメンを尻目に、ひたすらスイングし、自身の歌を綴っていくことに音楽人生をかけているピアニストです。10年先、20年先も彼は今と変わらないスタイルで、トロントあたりのクラブで弾いていることでしょう。

なんだか、聴いていると、ジャズにハマり始めた若かりし頃の熱くてピュアだった気分が蘇がえってきちゃいます。

ちなみに本作は廉価盤CDを制作している Tapas Records ( 配給はガッツプロダクション ) からリリースされていて、値段は税込1200円。あまり値段のことを強調すると何処からか槍が飛んできそうなので、ここは小さな声で….超お買得です

Igor Prochazka / Easy Route

2008年11月11日 21時34分18秒 | JAZZ

アダム・マコビッチ、ロベルト・バルザールと、チェコスロヴァキアのアーティストが続いたので、ついでにもう一人聴いてみましょう。

チェコ共和国に生まれ、ドイツでクラシック音楽を10年以上学んだ後、現在はマドリッドを拠点に活躍中の若手ピアニスト、Igor Prochazka ( イゴール・プロハースカ ) のデビュー作です。

ブルー・スカイ、乾いたブライトサンド、そしてオレンジ・イエローのアンティーク車。輸入盤取扱い店でも、ひときわ目を引く印象的な美しいアート・ワークの作品なので、手にとった方も多いのではないでしょうか。実際にもかなりのセールスを獲得しているようです。そしてアート・ワークだけでなく内容もそれに負けないくらい秀逸です。

何と言っても、4 ビート一辺倒では決してなくて、ロックやソウルの軽快なリズムを基調とした洒脱なナンバーを大々的に配したことが本作の特徴です。ピアノトリオというシンプルな編成でも、豊かなバックグラウンドを持つアーティスト同士が、柔軟な発想で取り組めば、たとえテクニック的に凡庸であっても、素晴らしい音楽が作れる、という見本のような作品です。

本作はジャズ批評誌の最新号 No.146 『 ピアノ・トリオ Vol.4 』でも3人のライターが推薦されていました。全7曲で録音時間35分ですから、1時間以上の作品が当たり前の時代にあっては、非常に短く感じます。あっという間に聴き終えてしまいます。でもその潔さがかえって作品のイメージを明確にし、よい結果を導いているようです。6曲がイゴール・プロハースカのオリジナルで、1曲がベーシストのクリスチャン・ペレスのオリジナル。やはり、これから売れるためには、クラシック音楽教育に裏付けられた高度な技術と、哀愁かつポップな馴染みやすいメロディセンスが必須条件なのでしょう。あと4ビートだけに拘泥しているとダメですね。

  

余談ですが、ジャケットの車はスペインの自動車メーカー、SEAT ( セアト )の60年代から70年代にかけて生産された車のようです。当時はフィアットとのライセンス契約で、フィアットのモデルを生産していました。このSEAT 850 もその一台です。しかし、1980年にフィアットが撤退し、現在はフォルクスワーゲン傘下にあるようです。日本への正規ルートでも輸入は行われていないので馴染みが薄いかもしれません。

で、面白いのは、リーフレットにある上の写真です。フロント中央に羽を広げたようなロゴが付いていますが、よく見ると『 JAZZ 』 と書かれてあります。本当はここには社名の『 SEAT 』と記されている車なのですが、この撮影のためにわざわざ特注したのでしょうか。お金のかかっていないアート・ワークのようで、隠れたところにちゃんとお金をかけている粋なお仕事ですね。


アルバムのタイトル曲 ≪ Easy Rout ≫ 。

Robert Balzar Trio / Overnight

2008年11月09日 08時32分11秒 | JAZZ
金曜日にアダム・マコビッチを聴いていたら、チェコスロヴァキアのピアノをまとめて聴きたくなって、Emil Viklicky ( エミール・ヴィクリツキー )、Matej Benko ( マチェイ・ベンコ )、 Naj Ponk ( ナイポンク )などのCDを棚から引っ張り出して聴いていました。そんなことをしていたら偶然、拙ブログにたびたび来てくださる Marty さんが「 Robert Balzar Trio の 『 Overnight 』 を買いましたよ。」 とコメント入れてくれたので、久しぶりに僕もバルザールの 『 Overnight 』 を聴きながらこうして書いています。

ロベルト・バルザールはスロヴァキアの売れっ子ベーシストで、ピアノはスタニスラフ・マハという人が弾いています。この作品はジャズ批評の最新号 No.146 『 ピアノ・トリオ Vol.4 』に掲載されています。紹介している方は diskunion 吉祥寺店の水野悠さんです。僕もこの作品が大好きだったので、「よくぞ取り上げてくれた!」と、もし彼が目の前にいたら、熱く手を握りしめ、思わずドードレブスカ・ポルカを踊りだしていたかもしれません。水野さんは本作以外にも、アラン・パスクァの『 The Way You look Tonight 』、エヴジェニー・レベデフの 『 Fall 』、南博の 『 Like Someone In Love 』、ロバート・ラカトシュの 『 Never Let Me Go 』 etc を紹介されていて ( どれももベースが良い作品 )、いずれも非常に共感できる作品ばかりなので、これからも彼の推薦盤をチェックしていこうと思っています。

さて、まずはバルザールの経歴について簡単に触れておきましよう。
All About Jazz と こちらを参考にしました。 )

彼は1962年にチェコ共和国のポーランド国境近くにある町ナーホドに生まれました。12歳の時にウッドベースを学び始め、ブルノ音楽学院でクラシックのコントラバスとピアノを学んだそうです。85年よりプロとしての活動を開始し、プラハ活動拠点として、スタジオやテレビ番組のビッグバンドでの仕事をはじめ、国内外の著名なミュージシャン達との共演を重ねていきました。自己のトリオを結成したのは96年で、98年にはデビュー作 『 Travelling 』 ( jazzpoint ) をリリース。2000年には二作目となる『 Alone 』 ( cube ) をリリース。05年に三作目となる本作『 Overnight 』を Sonny / BMG よりリリースし、メジャー・デビューを果たしています。今年発売されたジョン・アバークロンビーとの共演盤 『 Tales 』 ( BCWD music ) が第四作目となる最新作です。

自己のバンド以外では、前述したエミール・ヴィクリツキー ( p ) 、チェコの人気シンガーソングライター、ダン・ベルタのサポート・メンバーなどで人気を博してきました。ピアノ・トリオ・ファンならナイポンク・トリオの94年の幻の名盤 『 Birds in Black 』 ( カラスのジャケット ) で弾いていたのでご存じの方も多いでしょう。

バルザールはとにかく滅茶苦茶うまいです。弦を高く張り、指で弦を引っ掻くように力強く弾くので、アタック感が明瞭で、ブリブリ、ゴリゴリのウッドベースらしい音が出ます。アンプリファイされない、木の香り漂う美しい音質です。それでいてサム・ポジションでのソロも軽々とやってのけるので驚きです。驚異的なテクニックです。同郷の名手、ジョージ・ムラーツと非常によく似たスタイルですね。

作品全体の印象としては美メロ満載の抒情派路線なのですが、ベースの重心が低く、ドラムのジジ・スラヴィチクも要所要所で適度に暴れてくれるので、聴き終えた後、確かな余韻を残してくれる素晴らしい仕上がりになっています。抒情的と言っても透明感はあまり感じられず、むしろ、霧のかかったような仄かな抒情性が全編に漂っている感じです。雲の隙間から差し込み、海面を仄かに照らす太陽の光が美しいジャケットのアートワークのように、ダークだけれど哀愁感を湛えた作風です。

全9曲で、そのうち6曲がバルザールのオリジナル。その煌めくソングライティング力も彼の魅力の一つです。特に M-6 ≪ night ≫ のメランコリックなメロディーは、一度聴いたら忘れられない魅力を放っています。

この作品、ちょっと不思議ですが、中古店で安く出回っているのをよく見かけます。新品を手に入れるのは難しくなってきていますので、ぜひ中古店で探してみてください。そういえば、11月7日に移転オープンした diskunion お茶の水駅前店 に昨日寄ってきましたが、このCDが2枚も売られていましたよ。

Adam Makowicz & George Mraz / Classic Jazz Duets

2008年11月07日 23時14分33秒 | JAZZ
≪ 今夜はこんなの聴いています ≫

一昨日は風邪をひいてしまい、発熱と咳のため百々徹さんのライブはキャンセル。昨日はなんとか解熱剤の大量内服+座薬で熱を下げ、Blue Note Tokyo での Gordon Goodwin’s Big Phat Band のライブを観てきました。いやー、かっこよかった。観衆のノリがいまひとつだったのが残念でしたが、演奏自体は非の打ちどころがなかった。今日はだいぶ体調も回復したので、まずは傷んだ体に優しいジャズを選んで聴いています。

アダム・マコービッチ( 1940年生まれ )は、旧チェコスロバキア出身のピアニスト。寺島靖国氏が「 チェコスロバキアの溶岩のようにゴツゴツしたピアノ 」と比喩した人です。「 ヨーロッパのジャズ・ディスク 1800 」( 1998年 ジャズ批評社 )によると、ポーランドのフレデリック・ショパン音楽学校でクラシックを学んだが、ラジオ番組「 USA JAZZ Hour 」を耳にしてジャズの魅力にとりつかれて中退。60年代にはトマシュ・スタンコらとフリー・ジャズのバンドを結成したり、ワルシャワを中心に自己のバンドで活躍。78年に長年の夢であった米国に移住。現在も活躍中です。「 幻のCD 廃盤レア盤~ 」に『 Naughty Baby 』( 1987 Novus ) が取り上げられていましたね。

本作は、渡米後、初めてジョージ・ムラーツと録音された81年の作品で、その後二人は長年にわたり交友を深め、デュオでの数枚の作品を残しています。マコヴィッチは恐るべき演奏技術の持ち主で、特に右手のフレーズが超速いです。印象としてはアート・テイタムやオスカー・ピーターソンを聴いているときの驚きに似ています。

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これイイです→≪ If ≫ ( 米国70年代に活躍したソフトロック・グループ、Bread の名曲 )