◆『「かわいい」論 (ちくま新書)』(四方田犬彦)
今回も、書評というよりは「日本文化のユニークさ」というテーマや「マンガ・アニメの発信力の理由」というテーマにそう形で本の内容を取り上げたい。
「日本文化のユニークさ」の三番目は次のようなものであった。(ほかの三つについては「日本文化のユニークさ15:キリスト教が広まらなかった理由」などを参照のこと。)
(3)大陸から適度に離れた位置にある日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験をもたず、また自文化が抹殺される体験ももたなかった。
これがどうして「かわいい」文化に関係があるのか。『「かわいい」論』の中には、ドナルド・リチーの『イメージ・ファクトリー―日本×流行×文化』から紹介して語る次のような一節がある。日本人が未成熟で子供じみたものにひときわ愛着を示し、自分も子供っぽい自己イメージを進んで周囲に示したがるのはなぜか。それは、幼稚であること、無害であることを通して隣人の警戒を解き、互いにその幼稚さを共有しあいながら統合された集団を組織していくからではないか。
言い方を少し変えれば、日本は古代からほどんどずっと、子供っぽさ、幼稚さ、無害、素直さなどをどこかで互いに認め、共有しあって社会関係を結ぶことが許される平和な社会だったのではないか。逆に、成熟し独立した人格こそが、人間にもっとも大切な価値であるとする社会とは、個々が人が独立した主体として責任をもって判断しながら生きていかなければ、いつ殺されるかもしれない熾烈な社会なのではないか。「かわいい」ことが生き延びていくうえでプラスにもなる社会と、かわいかろうとなかろうと、殺されるときには殺されてしまう社会との違い。
日本は、「かわいい」が積極的な価値をもつほどに平和な社会だったのではないだろうか。
《関連記事》
★「カワイイ」文化について
★子どもの楽園(1)
★子どもの楽園(2)
★子供観の違いとアニメ
★『「萌え」の起源』(1)
《関連図書》
★『世界カワイイ革命 (PHP新書)』
★『「かわいい」の帝国』
★『逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)』
★『「萌え」の起源 (PHP新書 628)』
今回も、書評というよりは「日本文化のユニークさ」というテーマや「マンガ・アニメの発信力の理由」というテーマにそう形で本の内容を取り上げたい。
「日本文化のユニークさ」の三番目は次のようなものであった。(ほかの三つについては「日本文化のユニークさ15:キリスト教が広まらなかった理由」などを参照のこと。)
(3)大陸から適度に離れた位置にある日本は、異民族(とくに遊牧民族)による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験をもたず、また自文化が抹殺される体験ももたなかった。
これがどうして「かわいい」文化に関係があるのか。『「かわいい」論』の中には、ドナルド・リチーの『イメージ・ファクトリー―日本×流行×文化』から紹介して語る次のような一節がある。日本人が未成熟で子供じみたものにひときわ愛着を示し、自分も子供っぽい自己イメージを進んで周囲に示したがるのはなぜか。それは、幼稚であること、無害であることを通して隣人の警戒を解き、互いにその幼稚さを共有しあいながら統合された集団を組織していくからではないか。
言い方を少し変えれば、日本は古代からほどんどずっと、子供っぽさ、幼稚さ、無害、素直さなどをどこかで互いに認め、共有しあって社会関係を結ぶことが許される平和な社会だったのではないか。逆に、成熟し独立した人格こそが、人間にもっとも大切な価値であるとする社会とは、個々が人が独立した主体として責任をもって判断しながら生きていかなければ、いつ殺されるかもしれない熾烈な社会なのではないか。「かわいい」ことが生き延びていくうえでプラスにもなる社会と、かわいかろうとなかろうと、殺されるときには殺されてしまう社会との違い。
日本は、「かわいい」が積極的な価値をもつほどに平和な社会だったのではないだろうか。
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《関連図書》
★『世界カワイイ革命 (PHP新書)』
★『「かわいい」の帝国』
★『逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)』
★『「萌え」の起源 (PHP新書 628)』
熾烈な戦いの歴史とキリスト教世界のきびしく罪を問われる文化にとっては、穏やかで平和なだけでなく、罪を背負わずに物事を考える日本は、天国でしか実現されない世界であった所に、ある日、日本のアニメが出て来た、それは人間を裁く神の罰を心配する事も無く、人間が協力して生きていっている世界だったのではないでしょうか?
それは、この世には存在するはずの無い夢の世界、理想の人間関係を体験できる日本が実際にある事への感動!。
期待が過剰で失望する人々もいるようですが?
日本のアニメ・マンガがどのような新鮮さをもって出会われたのか、その生の声を、私もできるかぎり調べてみたいと思っています。
そういうしっかりとした調査が、今後ますます必要になってくるでしょうね。