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『「萌え」の起源』(1)

2009年12月25日 | 世界に広がるマンガ・アニメ
◆『「萌え」の起源 (PHP新書 628)

著者は、「チャンバラ小説や捕物長を書くことを生業としている」という。この本は、著者の時代小説家として知識や感性をいかしながら、日本の伝統という視点を含めてマンガ・アニメを語っている。

「結びにかえて」のなかで著者は、この本で明らかにしたかったことを次のようにまとめている。

①日本人は本来、生命と無生命を区別しない文化を持っている。
②日本人は「小さくて丸っこくてカワイイもの」に愛着を感じる。
③日本のヒーローは他人のため、自分を捨てて、見返りを求めずに戦うことで存在意義を見出している。
④日本人の理想とする正義とは、敵を否定し殲滅することではなく、みんなで幸福になるために互いに知恵と力を合わせることである。
⑤これら日本古来の感性と文化が手塚治虫の出現によって拡大され、マンガ・アニメをはじめとする戦後のサブカルチャーに受け継がれた。
⑥それは日本独自のものでありながら、言語や思想や文化の壁を越えて世界に受け入れられる普遍性を持っている(らしい)。

これらの主張が、いろいろな作品や具体例に触れながら展開されていて興味深い。上の主張のいくつかをもう少し詳しくみながら、私の考えも付け加えていきたい。

まず前回の記事との関連で、「②日本人は「小さくて丸っこくてカワイイもの」に愛着を感じる。」について。

著者が、「萌え」や日本のマンガについて考えるようになったきっかけは、いわゆるSD(スーパー・デフォルメ)キャラクター・フィギュアに興味をもったことだという。その小さく丸っこいフォルムや小さくデフォルメするときの細部の処理法などが根付にそっくりだと気づいたことだという。和服の帯に印籠や煙草入れなどをさげる紐のすべり止めになるあの根付だ。江戸時代に発展した根付の動物などの「丸っこい可愛らしさ」が、SDキャラやマンガ・アニメの可愛らしさに共通するのは、もともと日本文化の中に、二頭身や三頭身のキャラクターを好ましいと思うセンスがあったからではないかと著者は気づいた。

では日本の伝統の中にそういう美的センスがあるのはなぜか、までは著者は探っていない。しかし、前回見たように、そこに日本人の、子供への愛着が関連しているのは確かだろう。鉄砲伝来の時代から江戸時代末期、明治初期に日本を訪れた西洋人が、いちように驚いたのは、日本人の子供への愛情、ときに「崇拝」とさえ思えるような接し方であった。

さらにその背景を求めるなら、日本には縄文時代からずっと続く母性原理の文化が、父性的な一神教によって抑圧されずに生きつづけていたことが指摘できるかもしれない。子供や子供らしい無邪気さ、可愛らしさに高い価値を置く文化は、母性的なセンスを大切にする文化だともいえる。

《関連記事》
「カワイイ」文化について
子どもの楽園(1)
子どもの楽園(2)
子供観の違いとアニメ


《関連図書》
★『世界カワイイ革命 (PHP新書)
★『「かわいい」の帝国
★『逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)
★『「萌え」の起源 (PHP新書 628)

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