<鳥インフル>東北厳戒 対策徹底も不安消えず
青森市の家禽(かきん)農場で飼育されていた食用アヒル(フランスガモ)から毒性が強いH5型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出され、東北の養鶏業者や行政の警戒感がかつてないほど高まっている。新潟県で立て続けに鶏への感染が確認されたこともあり、生産者は消毒など感染阻止に追われ、自治体は万が一への備えを急いでいる。
【埋却へ】アヒル4720羽 殺処分完了
家禽への感染は11月下旬に確認された青森市の食用アヒルが東北初で、関係者に衝撃を与えた。鶏4万5000羽を飼育する竹鶏ファーム(白石市)の志村竜生常務は「国内では西日本に多かったが、一気に青森、新潟まで来た。正直びっくりしている」と話した。
ブロイラー生産の岩手県内最大手、十文字チキンカンパニー(二戸市)の十文字保雄社長も「東日本では従来、鳥インフルエンザの発生リスクはそれほど高くなかった」と語り、隣県での事態に驚く。
各生産者は、出入り口や鶏舎周辺などへの消石灰散布、出入りする人や車両の制限、従業員の長靴の履き替えや靴底の消毒の徹底など対策に懸命だ。鶏舎には野鳥の侵入防止策を施し、従業員に対して野鳥が集まる場所に近づかないように呼び掛ける業者もいる。
「これ以上、対策はない」と7万羽の養鶏場を営む秋田県羽後町の桜田淳一さん(58)は言う。それでも「ウイルスは目に見えない。どこで感染するか分からない」と不安は消えない。
福島県のブランド鶏、川俣シャモを生産する川俣シャモファーム(川俣町)の従業員橋本健太さん(36)は「鳥インフルエンザは最大の脅威。出たら終わりだ」と気を引き締め、住田フーズ(岩手県住田町)の羽田仁一社長は「できることを徹底する」と語った。
行政の緊張感も高まっている。秋田市の動物園で飼われていたコクチョウからウイルスが確認されたことを受け、山形県は11月21日に対応マニュアルの警戒レベルを2から3に引き上げた。家禽への感染判明に備え、近くゴーグルやゴム手袋を補充する。
岩手県は同29日に危機警戒本部を設置。鶏10万羽を殺処分する場合、県職員620人が3交代で作業に当たる計画だ。宮城県の対策本部は処分対象が5万羽を超える場合には自衛隊への出動要請を想定し、関係機関との調整を急ぐ。
秋田、福島両県も関係部局による連絡会議を開き、情報共有を進めている。