まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

あんこを煮る 30days blog♪day 20

2020-10-28 17:55:00 | 日記

新豆は皮が柔らかくて早く煮えるんですよ、と教えてくれたミナコさんには大変申し訳ないのですが、昨年購入した「新豆」を仕舞い込んでいたら旧豆になってしまいました。ちょっと残念な煮上がりになりましたので、再挑戦です。今度はちゃんと新豆を新しいうちに煮ましたよ。

袋に書いてある通り、まずは豆をきれいに洗って、豆の5倍くらいの水と一緒に火にかけます。ぐらぐら沸騰したらいったんお湯を捨てます。それからもう一度、豆の5倍くらいの水と一緒に火にかけます。沸騰したら極弱火で柔らかくなるまで。完全に芯が無くなったらお湯を捨て、豆と同量か1.2倍くらいのお砂糖を入れて火にかけながら練ります。おそらくこれがスタンダードな作り方なんじゃないかな。

で、これを書いてる今は「柔らかくなるまで」のちょっと持ち余りする時間なんだけど、その間にあんこ炊きについてのあれこれをネットで見ていたら、なんだか面白いものを発見しました。

和歌山にある老舗のあんこ屋さんの物語です。百年の歴史があるその店に、ある男性がやってきました。その男性はとても有名な「さすらい のあんこ職人」で、彼に店の自慢のあんこを試食してもらったところ、「このあんこ、腐ってますな。」って。あんこ屋の社長は、じゃあ、腐ってないあんこを作って見せてよ、と喧嘩腰で言い、「いいですよ。」ってその場で彼が作ったあんこを食べて、これは完敗だと思ったんですって。早速あんこ製造担当の自分の娘を彼のもとに修行に出し、帰ってきたところで百年続けてきた作り方をガラリと変更したそうです。ってこれはダイジェストにしてみたけど、本編の物語がとても面白く素敵な文章だったから、ぜひ探してみて。「きたかわ商店」検索でいけると思う。(リンク貼らないんかい)

さすらい のあんこ職人の小豆の煮方は、まず洗った小豆の入ったボウルに熱湯をざばあ。ホイッパーでグルグル。こうすることで小豆が渋みを出すのを封印するんですって。お湯を捨てたら次は沸騰しないように注意しながら煮て、小豆の芽の出る部分(へそ)が外れたら、お湯とへそを捨てる。それから本炊きします。へそが取れてると煮えるのが早いんだって。

「変えてはならない商道、変えねばならない商法」というのがあんこ屋の座右の銘なのだそう。商売は哲学と科学。哲学にあたる商道は変えてはいけないが、商法にあたる科学は進歩するものだから、良いものに変えていかなければならない。なんてかっこいいんでしょう。変えるったってそこには先代、先々代から受け継いできた伝統とかしがらみとかプライドとかがあるのだから、並大抵のことではないと思う。この店のあんこ食べたくなったわ。

もう一つ、これはすごいなと思った社長のセリフは「先生は毎回言うことが違うという人もいるけど、常に進化してるんだと思います」ってやつ。こないだ教わったことと違うじゃん、全くもう、じゃなくて、「進化」と捉えるポジティブさ。教えを乞う姿勢について再認識しました。最近不真面目な生徒だからな、気をつけなきゃ。

さて、でもやっぱり気になるのはさすらい のあんこ職人さんですよ。どんなお方なのか調べてみました。21歳で有名な和菓子屋に就職しメキメキ頭角を表し、44歳でとある地方の菓子工場の立ち上げに携わり、若い弟子が出来たのだそうです。しかし工場はたった3年で閉鎖、可愛がっていた弟子は全く違う職に就いたものの、うまくいかず自ら命を絶ってしまったと。それを知ってあんこ職人さんは辞職しました。自分の責任だと思ったんだそうです。大手和菓子屋からの再就職の誘いを全部断って、困ってる小さな和菓子屋を助けながら全国を巡っているんだって。マイカーで北から南、車中泊する70代。ドラマチックすぎて言葉もない。

まだあんこ職人さんの人生の尺には足りませんけれど、わたしもここまでで痛い思いもそこそこして来ました。その瞬間、「これまでのは間違いだった。リセット。」ってするのか「もうズタボロだ。でもこのわずかな身と皮に食らいついていくしかない。コンティニュー。」ってするのかは、わたし自身が決めてきたこと。合ってたか間違ってたかは人生が終わる時にしかわからないんだけどね。もしあんこ職人さんが横浜でフラフラしてるところに遭遇したら、こんなふうに申し上げたいです。お弟子さんのことはとても残念だったけど、それは彼の選択で、あなたに責任はないと思います。でもそのことをご自身の責任だということにして人助けに身を捧げているのもあなたの選択で、そのおかげでたくさんの人たちが救われています。心から尊敬します。って。

と、書いてる間に小豆は煮えたみたいです。白砂糖どこにしまったっけな。