くりりんのささやき

心の旅人くりりんが感じたこと、思ったこと。

葡萄もそろそろ食べ納め

2014-09-30 20:39:27 | 日記
 あれほど垂れ下がっていた葡萄も 残るはあと5、6房。
 夏がいよいよ終わります。
 ちょっぴり感傷的な気分。
 読みかけだったパヴェーゼの『美しい夏』(岩波文庫 2006)を読了。
 
 「君は夏じゃないんだ。絵を描くのがどういうことか君は知らないんだ。」
 (河島英昭訳)と恋の相手の画家から言われてしまったジーニア。
  
     そんなこと言われたって ...

 恋はなかったけれど 葡萄の甘い香りとともに私の夏が過ぎて行く。
 そして聞こえるのは くりりん くりりん という虫の音。

     あなたの場所でも聞こえてますか?
 

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ミュリエル・バルベリ『優雅なハリネズミ』

2014-09-28 20:46:53 | 日記
 2006年に発表された美しい作品です(河村真紀子訳 2008 早川書房)。
 聡明さを隠してひっそり生きるアパルトマン管理人のルネ(54歳)。
 彼女が世間に向ける愚鈍な顔は 真実の自分を知られないための、
 「ハリネズミの刺」のようなもの。

 分不相応に美しかったゆえの姉の不幸な人生、
 それを繰り返さないためにルネが選んだ 哀しい処世術です。

 彼女の内面の真実に気づいて共感するのが、
 このアパルトマンに住む上流家庭の引きこもり少女パロマと、
 新しく引っ越してきた裕福な日本人オヅ・カクロウ。

 小津安二郎の遠い親戚だというオヅ、
 心安らぐ彼との語らいやパロマとのふれあいで、
 ルネの人生模様が変わりかけたのですが ..... 。
 

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ヘルタ・ミュラー『狙われたキツネ』

2014-09-26 21:00:54 | 日記
 チャウシェスク政権下の抑圧状況を実体験しているミュラーの、
 1992年発表の作品です(山本浩司訳 1997 三修社)。

 国民の多数を困窮に追いやる経済政策、
 不満を封じるための マスコミ独占、
 秘密警察と相互密告による監視態勢、
 こういったものによって人々の精神が切り刻まれること、
 それが「抑圧」です。

  (今の日本で進行していることと似ていませんか?)

 学校の勤労奉仕に意見しただけで当局から狙われる女教師アディーナ、
 彼女の部屋のキツネの敷物は 彼女が留守にするたびに、
 何者かの手によって 少しずつ切り刻まれて行きます。
 無気味です。
 逃げ出したくなります。
 でも どこへ?

 ♪ ルーマニア人よ なんじの永遠の眠りから目覚めよ ~
 
 チャウシェスクが倒され 禁じられていた歌が響き渡ります。
 しかし 秘密警察とマスコミ独占による反対勢力封じ込めは、
 新政権下でも維持されたのでした .... 。 
 

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『チボー家の人々』(その4)

2014-09-24 19:36:03 | 日記
 戦争への態度をめぐって 対立するジャックとアントワーヌ。
 その意見は正反対なのに どこかでお互いを気遣っている、
 そんな兄弟間の心情が読者の心を揺らします。

 それにしても 第1次大戦開戦に至る国家集団心理の描写がリアル。
 同様の情況が今の日本でも起きているわけで、
 国家存立のためには個人は犠牲にされてもよいと考えるアントワーヌと、
 「ぼく自身が罪悪と考えることを国家がやらせようとするのは
 絶対に我慢できないんだ」というジャック、
 どちらを選ぶのか 読者も自問自答を迫られます。

     ちなみに 私は ジャック側です
     アントワーヌ側の皆さん 悪しからず
     (というか アントワーヌ側の方々は そもそも
     このblogに興味がないでしょう)
 

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柿の実が落ちてしまう

2014-09-22 20:30:37 | 日記
 庭の柿の木 去年剪定しておいたおかげで、
 たくさんの 枝一杯の実を 今年はつけたのに・・・
 
     あ~あ 今日も落っこちてる

 くっつきが悪くて ボトボトと落ちてしまいます。
 赤く熟すまで あと ほんの少しなのに。
 干し柿用の竿も 準備してるのに。

     え!台風が来るって?

 結局去年と同じく10数個の収穫になってしまいそう。
 父が元気な頃は数百個実ったのに・・・
 
     「お前じゃ 実ってあげないよ」
 
 それが柿の本心なのかも知れません。
 愛情 足りないのかなあ .... 。
 

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フローベール『聖アントワヌの誘惑』

2014-09-19 20:52:48 | 日記
 聖アントワヌが様々な異端や異教から知的な試練に曝される様を描く、
 論争劇風の小説です(渡辺一夫訳 岩波文庫 初版1940)。
 
 結局 聖アントワヌは論駁に成功しませんでした。
 それなのに何故か突然天啓を得て 小説は楽観論的な結末で終わります。
 「解説」によれば あまりに絶望を誘う草稿の結末を、
 フローベールは教会関係に配慮して削除したとのこと。

 発見された草稿では 聖アントワヌが最後に見るのは、
 十字架に押し潰され 人々から罵倒され暴力を受けるイエスの無惨な姿。
 「おお神よ、(私にとって)あとに何が残るのでしょうか?」
 という聖アントワヌの悲痛な叫びで草稿は終わっているそうです。

 (私の感想)
  草稿の結末がフローベールの宗教・哲学的思弁の到達点だとすれば、
  彼はイエス・キリストないしは人生というものを、
  最も深いレヴェルで理解し共感していたと言ってよいでしょう。
 

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『新しい江戸時代が見えてくる』

2014-09-17 20:41:24 | 日記
 大石学学芸大教授の 平明な江戸時代通史です(2014 吉川弘文館)。
 「明治以降」の近代日本とは切り離されがちだった江戸時代が、
 実は 近代日本の真の意味での出発点であったことが よく理解できます。

 私の読みによれば、
 「明治維新」による国家改革は 「維新」というほどのこともなく、
 江戸時代265年間で ほとんど準備されていたようです。
 「維新」の中心人物たちは おいしいところだけ持って行った、
 と言っても過言ではないでしょう。
 むしろ機会主義者特有の了見の狭さゆえに、
 「平和」と「文明化」の江戸時代から、
 退行させてしまったことも多いでしょう。
 
 (だから 私などは 今の政治家を評価するに際して
 「明治維新」を神聖視する人は まず信用しないことにしています)
 

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『地上最後の刑事』

2014-09-14 21:12:50 | 日記
 簡単に「自殺」だとされた事件に疑念を抱く.... 、
 警察物ではおなじみのパターンですが この小説で違うのは、
 あと半年ちょっとで小惑星が地球に衝突すること。
 
 そんな情況でも地道な捜査で真犯人を探すのが ヘンリー・パレス、
 地球の滅亡もものかは ひたすら真相を追うハード・ボイルドな男、
 彼こそが「地上最後の刑事」、 
 作者ベン・H・ウィンタースが生んだ新たなヒーローです。

    ほんとに自殺なの?
    と首をかしげることが多すぎるこの頃
    彼のような刑事がいてほしいと願うのは
    決して私だけではないでしょう
 
 地球の滅亡は避けられないのか?とSF物的な興味も抱かせる、
 三部作中の第一作です(上野元美訳 2013 ハヤカワ・ミステリ)。
 

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フローベール『初稿 感情教育』

2014-09-12 21:01:56 | 日記
 筑摩書房フローベール全集の第7巻に収められています。
 フローベールいまだ無名の23歳、
 後に「ボヴァリー夫人」で世に出るずっと以前に書かれた長編です。
 作家自身は完成作とは認めませんでしたが これがなかなか面白い、
 素材の味が生きている感じがします。

 俗物的な成功を求めるアンリー、
 書いてはひたすら書き直すことに感情の充実を求めるジュール、
 二人の若者の生き方を対照させながら 作者は自らに問うています。
 俺はどっちを選ぶんだ?

 答えは出ました。
 その答えに忠実に 彼は生き 書き そして書き直しました。
 10年以上後「ボヴァリー夫人」で成功してからも、
 その姿勢は変わりませんでした。
 
 「成功などはどうでもいい。夜鳴鶯の歌は、
 人に聞かれないからといって、美しさが減ってしまうものだろうか。」
                         (平井照敏訳)
  

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巨峰 vs ナイアガラ

2014-09-10 19:49:58 | 日記
 勝手にマスカット・アレクサンドリアだと思っていた家の葡萄、
 実はナイアガラでした。
 たしかに 瀑布のように葡萄棚から下がっています。

 で 正しい名前を教えてくださった方から巨峰をいただきました。
 大きい 甘い 種がない まるで葡萄の三冠王。
 
    むむっ せっかくの自家生ナイアガラが泣いている

 なんだか可哀想になって 私はナイアガラの小さな一粒を口に・・
 あれれ 何だろう 巨峰にはない美味しさが!?
 そんなに甘くはないけれど香りは芳醇、
 種を噛み分ける時 皮をギュッと絞る時、
 一粒で何度も美味しさを味わえます。
 
    巨峰にだって負けていないよ

 私のナイアガラは 自信を取り戻しました。
 

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『火曜日の手紙』

2014-09-08 19:25:49 | 日記
 フランスの女性作家エレーヌ・グレミヨン(1977~ )のデビュー作(2010)、
 「母」の秘密に関わる心理サスペンスです(池田奈央子訳 2014 早川書房)。
 
 「母」になる以前の 一人の女としての姿を探すというテーマは、
 前に取り上げた『秘密』(こちらこちら)と同様に、
 愛と推理が混じり合った格好の小説題材を、
 特に女性作家たちに与えているように思えます。
 
 サスペンスですから 筋立ての紹介は控えますが、
 悲しい結末です。
 戦争に行く夫 その子をどうしてもこの世に生じさせたい妻、
 その愛がもたらした 悲しい結末です。

 
  

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しど虫に刺された!

2014-09-06 19:50:50 | 日記
 あんなに気をつけるように母から言われていたのに、
 忘れて柿の木の下を通っていて 柿の葉に触れたと思った瞬間、
 左手の甲に ひどい痛みが !
 
     あ ああ しど虫 !?(と悶絶)

 どれくらい痛いって 痛点目がけて注射針を刺されたような...
 たちまちプクッとふくらみました。
 水道の水をジャージャーとかけて ムヒSを擦り込んで 暫時経過、
 痛みは引きました。

     しかしリベンジは終わっていない
 
 柿の木の所に戻り よく見ると、
 葉の裏から しど虫がちょこっと頭を出しています。
 あざやかな黄緑色 美大の学生でも造れないようなフォルム。
 
     美しい でも痛い
     
 4匹ほど地面に落として踏み潰しました。   
 

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『チボー家の人々』(その3)

2014-09-04 20:21:52 | 日記
 全5分冊中の第3分冊に入りました。
 医師アントワーヌが父に安楽死処分をする場面が語られた後、
 第1次大戦直前のヨーロッパ社会の「空気」が語られます。
 
 自分の仕事と情事の達成がアントワーヌの最大の関心、
 弟ジャックが語る政治の現実に目を向けようとはしません。
 「戦争なんて起こるはずがないのさ」。
 
 ところが指導者たちは着々と戦争の準備を進めていたのでした。
 弟のジャックは何とか戦争を回避したいと焦っています。
 アントワーヌとの認識の差は埋められません。
 (アントワーヌにとって 人の死はあくまで「他人事」なのかも、
 安楽死処分で死ぬのは彼自身ではないのと同じように... )

 兄弟の対話によって社会の「空気」を描出する筆致が見事です。
 恐ろしいことに その「空気」は、
 今の日本社会のそれと よく似ています。  
 

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赤紫蘇ジュース

2014-09-02 20:06:15 | 日記
 柔らかい青紫蘇(大葉)と異なり 赤紫蘇はサラダなどの生食に適さず、
 梅干しとか 天ぷらとか 用途が限られます。
 なのに 後先考えずに購入した小さな赤紫蘇の苗が、
 ひと夏の間に大きく育ちすぎて始末に困りました。

     そこで思いついたのが 赤紫蘇ジュース!

 沸騰させたお湯に 赤紫蘇の葉をたっぷり入れ、
 お湯に色がつくまでグラグラ煮立てます。
 できた原液に酢をひと匙ふた匙・・

     ほうら あっという間に真っ赤っか
 
 好みの甘さにととのえて あとは冷やすだけ、
 誰でも作れる赤紫蘇ジュースの完成です。
 夏ばて解消に いいかも。
 

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