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フィリピン少数民族 守る固有文字・・教える親減少、政府援助もなし

2013-09-16 | その他先住民族



これも塩漬け記事ですが、大事な記事だと思い保存していました。

                *****

2011年9月26日
朝日新聞


「フィリピン少数民族 守る固有文字・・教える親減少、政府援助もなし」


「鳥はマンギャンの文字ではどう書きますか?豚は?」

フィリピン中部のミンドロ島。山奥のバイ地区にある学校「マンギャン教育センター」の教室で、生徒達は教師の質問に競って手を上げる。

曲線のない鋭角的な文字だ。



16の子音と3つの母音を組み合わせた48文字が基本。

同島の山岳少数民族マンギャン族が守り続ける民族固有の文字だ。


同国には現在、国語のタガログ語など約170種の言語があると言われる。

フィリピンにしかない固有文字を守るのは、日常生活ではマンギャン語を話すマンギャン族の一部など、2,3の少数民族だけだ。

他の言語は16世紀以降のスペインと米国による植民地統治下で学んだローマ字で表現されている。

電気もない山間部に住むマンギャン族の多くは、竹で作った家に住み、焼畑農業と狩猟採集生活を営む。

服装も腰布に上半身は裸か、Tシャツのような簡単な上着、それに山刀といったシンプルなものだ。


彼らがいつから文字を使い始めたのか、わかっていない。

16世紀にスペイン人が、原始的な生活の中で固有の文字を使う住民の文化に目を見張った、という記録があるだけだ。

「親に聞いても、自分の両親から学んだ、としか知らない。
この文字は長い間、竹の家の中で、親から子へと伝えられてきたのです」と教師は言う。

小刀で竹筒に刻まれてきたこの文字は、日常の会話を記すためではなく、民族独自の7行詩を表現する「アンバハン」と呼ばれる文語を記すために使われていたという。

マンギャン族が住む山中は、植民地時代に、西欧文化を半ば強制された平地からは隔絶されていた。

そのことも、古くからの文字を西欧文化の波から守った。


だが近年、マンギャン族の子供たちも平地の小学校に通う。

少数民族の民族文字の教育は義務教育の範囲外なので、小学校では教えない。

民族文字を教える親達も減っている。


センターの1年生の生徒72人に聞くと、家で民族文字を習ったことがある生徒は10人だけだった。

「家で学んだことがある子とない子では、民族文字の学力が違うので、初めはクラスを分けている」と教師。

政府の補助が受けられない授業で、人手は多くかかり、負担は大きい。

しかもマンギャン文字を教える学校はマンギャン族が自主運営するこのセンターだけだ。


マンギャン族にとっても、いまや最初に覚える文字はローマ字。

日本の中学・高校にあたるセンターに進学して初めて、民族文字を教科書で学ぶことができる。

「残念だが、フィリピンが高度な文化をもっていたことを示すこの貴重な文字は消えつつあります」。

この村に半世紀以上住み、生活と教育の向上に献身してきたオランダ人の元カトリック神父は嘆く。

自らマンギャンの言葉と文字をマスターし、50年近く前に「教育センター」を設立、教科書も作った。

だが母国の友人たちから集めてきた資金は、友人たちの高齢化で得られなくなっている。


子どもたちは学校でタガログ語や公用語の英語を学ばなければならず、とても忙しい。

その上民族文字は山を下りて平地で仕事を得るための役には立たない。

政府からの援助もない中で、子供たちがこの先も学び 続けたいと思うかどうかに、文化の存続がかかっている。

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