環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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判断基準の相違①: ワシントン条約 「クロマグロ禁輸」をモナコ提案、17年前にはスウェーデン提案が

2009-08-11 13:21:35 | 環境問題総論/経済的手法
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環境問題は世界共通の大問題です。日本とスウェーデンでは「環境問題に対する認識や考え方」が大きく異なります。日本では「環境問題の現象面の分析とその対応」ばかりが語られ、「環境問題の本質」がほとんど議論されないために、環境問題への理解が不十分なのです。

スウェーデンの判断基準で日本の現状を見ますと、「日本の環境・エネルギー問題に対する対応は不十分である」ということになりますし、逆に、日本の判断基準が正しいとすれば、「スウェーデンの対応は馬鹿げている」ということになります。この説明だけではよくわからないと思いますので、皆さんにもお馴染みの具体的例を3つ挙げてみましょう。次の図をご覧ください。この図は14年前の1995年時点で作成したものです。



①の原発と②の気候変動(地球温暖化)については、みなさんはよくご存じのことですので、今日はこの図の③「クロマグロ」の規制提案をとりあげます。 

ワシントン条約は今から37年前の1972年6月、スウェーデンのストックホルムで開かれた「第1回国連人間環境会議」で早期制定の勧告が出され、これを受けて翌73年3月にアメリカ、ワシントンで採択されました。ワシントン条約は、正式には「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)といい、この頭文字をとって「CITES」と呼ばれています。日本の加入は1980年8月。


1992年の判断基準の相違

92年3月2日から13日まで、国立京都国際会議場で「ワシントン条約締約国会議」(この条約の締結国は113カ国)が開かれました。この年の2月、私の職場であったスウェーデン大使館には、日本のマグロ漁業者で組織された「日本鰹鮪漁業協同組合連合会」から3万人もの反対の署名が届けられました。結局、3月の京都会議では、スウェーデンの提案は取り下げられましたが、当時の新聞は「マグロが食べられなくなっては大変と一般の人たちも署名運動に参加し、13万を超す署名が集まり、提案国のスウェーデンを驚かす結果になった」と報じています。





日本が「マグロが食べられなくなる」という目前の理由からスウェーデン提案に反対したのに対し、スウェーデンは「マグロ資源の持続性を確保する」という将来的な理由からこの提案を行ったのです。

●クロマグロ規制見送り、スウェーデン提案撤回(毎日新聞 1992-03-11)

●クロマグロも決着(朝日新聞 1992-03-11)   

●クロマグロ漁獲枠 削減見送りで合意(日本経済新聞 1992-05-26)




92年のスウェーデン提案はスウェーデンの提案撤回で一件落着となりましたが、その詳細はNHK取材班の記録「NHK スペシャル トロ と 象牙」に詳しく述べられています。



16年以上前の判断基準の相違は、現在どうなったか

92年の京都会議でスウェーデンが取り下げた「クロマグロの禁止提案」は16年経た昨年もまた、ホットな話題を提供しています。次の記事が示すように、昨年11月17日から24日まで、モロッコで「クロマグロの漁獲枠規制」に関する国際会議が開かれました。


そして、今日の毎日新聞は「クロマグロの禁輸」が今年11月のICCAT年次会合で議論されていると報じています。16年以上前に始まった議論はまだ続きそうです。 



●高級トロ、さらに遠く(毎日新聞 2009-08-11) 

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