勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

『イノシシプリンセス』ー第6巻ー

2023-01-17 | 原神のお喋り

 

 そこで、姫と二人の智者は北にある極寒の地にやってきた。


辺り一面が氷と雪に包まれている。


あまりの寒さに、姫の体は震えた。


だが、引き返す事なく、彼女は凍える風の中へと進んで行く。


賢い狐と頼れる亀は、骨を刺すような寒さに耐えきれず、姫にこう言った。


「コンコンコン~こんな寒くて危険な場所で冒険だなんて、王が知ったら心配する。帰ろうよ、コンコンコン~」


「その通り、吹雪はどんどん激しくなっていく……少し休み、風が止んでから進むんだ。悪いが、私は叫ばない。」


だが、辛抱強い姫は二人の提案通りにせず、極寒の中を進んで行くことを決めた。


何せ、失った友人を救い出すより大切なことはないのだから。


そうして一行は、足と爪が凍てつき、吐き出した息が凍るまで歩き続けた。


氷山に流れる、氷の張った川のほとりで、姫は寒風を漂う妖精を見付けた。


古き知的な妖精は、雪山の上に住んでいた。彼女たちは実体はないが、強大な魔力を有する。


「ふん~ふん~あなたがここの主ですか?どうか吹雪から抜け出す道を案内してくれませんか?」


姫は礼儀正しく、感覚の無くなった足を震えながら話しかけた。


知恵の狐と頼れる亀じいも、期待の眼差しを妖精に向け、凍り付いた爪で雪の中を掻きまわした。


「フーフー」


妖精は軽やかな声で言った。


「いいよ。でもフーフー」


「お返しに、君たちの体力をもらうよ。


君達が吹雪の中を進めば進む程、どんどんお腹が空いて、寒くなるからね。


まあ、命の危険はないと思うけど……多分ねフーフー」


(クンクン。相手は吹雪の精霊だもの)と姫は思った。


(それに、国で最も賢くて、私を気にかけてくれる人達が側にいるわ。何があっても大丈夫よ!)


姫は躊躇う事なく、精霊の要求を受け入れた。


賢い狐も頼りになる亀じいも、口を挟む隙がなかった。


「ふん~ふん~合理的な条件です!では、狼さんの所まで案内して下さい。」


そこで精霊は、凍える川の流氷に姿を変え、固く決意した姫を険しい雪山の反対側へと導いた……

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