Con Gas, Sin Hielo

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「キングスマン」

2015年09月23日 23時52分36秒 | 映画(2015)
英国紳士なのに、とてつもなく不謹慎。


長い歴史を持つスパイ映画に、「キックアス」、「X-MEN:ファーストジェネレーション」のM.ヴォーン監督が挑んだ本作。

いずれの過去作品もおもしろかった印象があるので、それなりの期待をして観たのだが、正直な話、ここまで度肝を抜かれるとは思わなかった。

様々な解説に書かれているが、本作は、最近のシリアスなスパイものに不満を抱いていた監督が、かつての007シリーズで描かれていたような伝統的なスパイものの世界観を基盤に配役と脚本を構築している。

そこで欠かせないのが英国紳士であり、一見お堅いC.ファースM.ケインといった英国人俳優がクラシカルなスーツに身を包み、華麗に悪と対峙する。

お堅い紳士が派手で軽快なアクションをこなすのは、まさに古い時代のスパイ映画そのもので、そのギャップに萌えたことを思い起こさせる。

これだけなら単なるスパイ映画の再興なのだが、更にひと味ふた味付け加えたところにM.ヴォーンの技を感じた。

まずは、振り切った殺人描写である。

R-15指定の時点で何かあることに薄々気付いてはいたのだが、冒頭から人間が縦に真っ二つにされるなど、人体が弾け飛ぶ描写がてんこ盛りである。

といってもこれらの場面は、あまりの多さ故に残酷さを超えて、もはや記号と化していた。その極め付けが「威風堂々」に乗せて打ち上がる花火であり、その直前に絶体絶命に追い込まれた主人公の反撃として爽快にシンクロする。

不謹慎だと分かっていても腹を抱えて笑ってしまった。映画館でこれだけ笑ったのはいつ以来だろう。

お堅い英国紳士>派手で軽快なアクション>残酷なのに爽快な惨殺と、次々に気持ちよく裏切る画像を提供する一方で、軸となる脚本がしっかり組み立てられていたことも大いに評価したい。

舞台装置やキャラクターを古典的に設定していたからこそ、敵役を現代社会の申し子のようなIT長者に置くことで対照性が際立つ。それと並行して、年代や経験の対照性に焦点を当てた若い青年の成長物語が進んでいく。

先輩エージェントのハリーの思い、新米青年のエグジーの境遇が丁寧に描かれており、いずれのキャラクターにも感情移入できる。

小ネタの配置や回収も心憎い。新米エグジーと同じ目線に立てたからこそ感慨深い逆転劇(アーサーの場面)や再現劇(ラストの場面)が実現した。

不謹慎な場面は際立つけど、全体を通してみると、やはり極めて「粋」なスパイ映画だった。

(95点)
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