毎年10月の10日前後。私はこの時期になると、どうしてもいくらの醤油漬けが食べたくなる。海がないこの県のスーパーであっても、ありがたいことに生筋子が並んでいる。
もう何年前のことかあまり覚えていない。高校生の頃にはすでにあったような。普段、まったく台所に立たない父が、、、食事を済ませた自分の器も下げない父が、いくらの醤油漬けとイカの塩辛だけは、台所に立ち手作りする。(調理器具の準備・片付けは結局母がやらされているのだが…。)でも、私も母も、家族もみんな父が作ったいくらの醤油漬けとイカの塩辛が大好きだった。待ちきれない私は、父が黙々といくらをほぐしていくのを隣で見ていたこともある。見ているだけだったのが、自分でもやってみようと思ったのは、一人暮らしを初めて4年目か5年目くらいの時だった。
細かい父の指先の動作、水で洗って白濁する様子。そんなものを思い出しながら、今年もいくらの醤油漬けを作った。10月の10日前後あたりの時期が、身が入りすぎず小さすぎずちょうどいいとのこと。
白濁した粒が、漬け込むことによって綺麗に透き通ってキラキラしていく。真っ赤な宝石を頂く。