赤い傘と一杯の珈琲とちょっと一息

なんとなく考えたことを書き留めていきます。

欠点と発達

2016-12-28 | 言葉にする
吉野弘の「生命は」という詩がある。その詩は「生命は 自分自身だけでは完結できないように つくられているらしい」という一節からはじめる。はじめてその詩を読んだとき、すーっと何かが染み込んでいくような気持ちになったのを覚えている。そしてその詩は次の一節でおわる。
「生命は その中に欠如を抱き それを他者から満たしてもらうのだ」と。
私は人は生まれてから死ぬまでずっと「発達」し続けていると思う。どんな営為のなかにも個人の発達が必ず含まれる。その「発達」とは何なのだろうか。「発達」というと、何かが出来るようになったとか、前と何かが変わったとか、何かに向かって努力をしているとか、そんなことが思い浮かぶ。それは往々にして動的なものと捉えられがちだ。でも、静的なものもあっていいのではないだろうか、と思う。
人間は誰しも欠点がある。それを努力によって克服できた人は大した人だと思う。でも、欠点は必ずしも克服できるものでもない。ましてや欠点のない人なんていないのではないか。だから、欠点が克服できないからといって、努力していない、成長していない、と切り捨てるのは如何なものか。例えば、自分を知ること、自分と他者の関係を知ること。それは、欠点を自覚すること、欠点を他者に満たしてもらっていることを感じることでもある。そんなことも立派な「発達」だと思う。
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家探し

2016-12-15 | 日記
訳あって、近々引越しをすることになった。1年半になるルームシェアも終わりになる。新しい家を探しているが、なかなかこれだというものがなく、少し焦っている。
キッチンはできればシステムキッチンがいい。そしてガスコンロでできれば2穴以上がいい。キッチンの収納も重要だ。そして、お風呂は掃除のしやすいタイプを。ユニットバスだけは避けたい。間取りは1LDKか2DKがいい。階数は2階以上がいい。
そう考えると、いろいろこだわりがあるのだなあ、とも思う。大学の周辺はやはり高めで、少し遠ければ通学費用がかかるものの家賃は安い。合計すればそんなに変わらないのだろうか。どちらを優先すべきかも迷う。
こちらに来てからの2度目の引越しになるが、これまでとだいぶ心持ちは違う。新しい1歩でもあるのだが、不安も多く、うだうだしている。
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この世界

2016-12-07 | 言葉にする
知人から誘いを受けて、映画「この世界の片隅に」を見てきた。この日は勤労感謝の日で、私が上映開始30分前に到着して間も無くチケットが売り切れるという状況だった。こうの史代という漫画家の存在は、初めて知った。これは原作を買っておかねばならない、と思った。
実写ものとは違い、荒いタッチで描かれたものなど様々な表現方法が織り交ぜられていた。のにもかかわらず、実写よりもずっとリアルに感じたのは私だけではなかったようだ。井伏鱒二の小説『黒い雨』を読んだ時に感じたような、そんなリアルさだった。その背景には、詳細な調査を用いて、事実に基づいて書いているというところもあるのだろう。また、監督が言う、「この世界」とは今皆さんが生きている「この世界」なのだ、というメッセージが表現にしっかり重ねられてもいたのだろう。そんな表現のプロに脱帽した。
私も、ある地域の状況を描くことを仕事の1つとしているわけなので、こんな先人たちから学ぶことはとても大きい。そう考えると、本務と無関係だと思えることや、意味のないと思えるような、生活の中での時間(文化活動)はやはり大事だ。それが多忙化で奪われていることの問題性は、もっと強調されるべきなのかもしれない。
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