
マルは客間で、その生き物を介抱していた。
ターシャと名乗る生き物は、どうやらマルに危害を加えるつもりはないようだった。
マルの投げた石鹸に当たって、どこかを痛めたらしい。
ひとりで立っては歩けないようだ。
マルは服を着て、彼を部屋に連れて来て応急手当を始めた。
ー ボクはターシャ。南の島から連れてこられた。
彼はポツポツと話し始めた。
もちろん、彼の素性を知りたいと思っている、マルの心を読んでのことだろう。
ターシャとは、聞き慣れない名前だ。
「私の知り合いに、ダーシャさんってのぁ、いるげどなぁ・・・」
ターシャの背中にパップ剤を貼りながら、マルは話を聞いた。
彼は元は南の島でたくさんの仲間達と暮らしていた。
一名「メガネザル」ともいうそうだ。
ところがある日、ネズロン兵がたくさん押し寄せて、
彼と、彼の仲間を20匹ほど捕らえて、日本に連れ去った。
彼らメガネザルたちは地下の実験室の中に入れられて、
それぞれネズミとの合体手術を施され、
知能や大きさ、体の強さも格段に増強された。
実験室には、彼らの他にも、世界中から集められたたくさんの動物たちが閉じ込められている。
拒絶反応の故だろう、その後ひと月以内に、ほとんどの仲間は死んでしまい、
今ではその種では、彼だけが生き残った。
彼はネズロンから、「メガネズミ」と呼ばれるようになり、
徐々に戦いのための訓練をさせられるようになった。
どうやらネズロンは、彼を人間や多くの生き物たちを殺す道具として使おうと考えているらしい。
知能が人間並みにアップした彼には、おおよその事情は理解できた。
ネズロンが、わざわざ彼のような弱そうな動物を連れて来たのには、理由がある。
それは、彼の仲間は、昔から「ある能力」を持っていた。
その能力ゆえに、弱い体でも自然界で生き残って来たのではあるが。
その力とは、「テレパシー」。
「んだらば、なんで、私が石鹸投げるのを、よけられねがったのや?」
マルの質問に、ターシャは顔を赤らめて、うつむいてしまった。
ー そ、それは・・・
まあ、それは、いい。
しかし、ネズロンも可哀想なことをするものだ。
世界各地から罪無い動物たちを捕らえて来ては、自らの野心のために「戦闘兵器」として改造を加えているとは。
ー ボクは、ひと月ほど前に、地下から逃げて来たんだ。
必要もなく生き物を殺すのは、いやだ。
自分の国に、帰りたい。
けれど地下から出たら、外はとても寒い。
あちこちと彷徨った末に、この人里離れた温泉宿を見つけた。
風呂場はとても暖かい。
屋根裏には食べ物の虫たちもたくさんいる。
当分ここに住み付いて、まもなく来る冬を越そうと思ったんだ。
可哀想なターシャ・・・
話を聞いて、マルの身内にふつふつとたぎるものがあった。
「大丈夫! 心配すんな!
オラが、無事に国まで帰してやっから。
それと、そのネズロンの地下基地、叩き潰して、みんな助けでやっから!」
ー ありがとう。マル。
ターシャの大きな目が、潤んだようだった。

しかし平安の時もつかの間、
突然、ターシャは飛び起きた。
ー ネズロンが来た!
シマッタ! うっかりした。
ターシャは首をゆっくりと回転させた。驚くべきことに、その首は真後ろまで回る。
ー 5人、10人、・・・・・・25人。
ネズロン兵が、この家を取り囲んでいる。
ボクを、掴まえに来た。
ターシャのもうひとつの能力、「透視」。
首を180度回転するだけで、全方位を視野に入れることができる。
壁があろうが、暗闇にいようが、ターシャはすべてを「見る」ことができるのだ。
マルは全部まで聞かないうちに、反射的にバックの中のオーブシーバーを手に取った。
例え休暇中でも、非常事態に備えてこれだけは身から放さない。
「安心しろ!
オメエはオラが、守ってやっがら!」
マルの力強い声が、部屋に響く。
(『第3回』に続く)
ターシャと名乗る生き物は、どうやらマルに危害を加えるつもりはないようだった。
マルの投げた石鹸に当たって、どこかを痛めたらしい。
ひとりで立っては歩けないようだ。
マルは服を着て、彼を部屋に連れて来て応急手当を始めた。
ー ボクはターシャ。南の島から連れてこられた。
彼はポツポツと話し始めた。
もちろん、彼の素性を知りたいと思っている、マルの心を読んでのことだろう。
ターシャとは、聞き慣れない名前だ。
「私の知り合いに、ダーシャさんってのぁ、いるげどなぁ・・・」
ターシャの背中にパップ剤を貼りながら、マルは話を聞いた。
彼は元は南の島でたくさんの仲間達と暮らしていた。
一名「メガネザル」ともいうそうだ。
ところがある日、ネズロン兵がたくさん押し寄せて、
彼と、彼の仲間を20匹ほど捕らえて、日本に連れ去った。
彼らメガネザルたちは地下の実験室の中に入れられて、
それぞれネズミとの合体手術を施され、
知能や大きさ、体の強さも格段に増強された。
実験室には、彼らの他にも、世界中から集められたたくさんの動物たちが閉じ込められている。
拒絶反応の故だろう、その後ひと月以内に、ほとんどの仲間は死んでしまい、
今ではその種では、彼だけが生き残った。
彼はネズロンから、「メガネズミ」と呼ばれるようになり、
徐々に戦いのための訓練をさせられるようになった。
どうやらネズロンは、彼を人間や多くの生き物たちを殺す道具として使おうと考えているらしい。
知能が人間並みにアップした彼には、おおよその事情は理解できた。
ネズロンが、わざわざ彼のような弱そうな動物を連れて来たのには、理由がある。
それは、彼の仲間は、昔から「ある能力」を持っていた。
その能力ゆえに、弱い体でも自然界で生き残って来たのではあるが。
その力とは、「テレパシー」。
「んだらば、なんで、私が石鹸投げるのを、よけられねがったのや?」
マルの質問に、ターシャは顔を赤らめて、うつむいてしまった。
ー そ、それは・・・
まあ、それは、いい。
しかし、ネズロンも可哀想なことをするものだ。
世界各地から罪無い動物たちを捕らえて来ては、自らの野心のために「戦闘兵器」として改造を加えているとは。
ー ボクは、ひと月ほど前に、地下から逃げて来たんだ。
必要もなく生き物を殺すのは、いやだ。
自分の国に、帰りたい。
けれど地下から出たら、外はとても寒い。
あちこちと彷徨った末に、この人里離れた温泉宿を見つけた。
風呂場はとても暖かい。
屋根裏には食べ物の虫たちもたくさんいる。
当分ここに住み付いて、まもなく来る冬を越そうと思ったんだ。
可哀想なターシャ・・・
話を聞いて、マルの身内にふつふつとたぎるものがあった。
「大丈夫! 心配すんな!
オラが、無事に国まで帰してやっから。
それと、そのネズロンの地下基地、叩き潰して、みんな助けでやっから!」
ー ありがとう。マル。
ターシャの大きな目が、潤んだようだった。

しかし平安の時もつかの間、
突然、ターシャは飛び起きた。
ー ネズロンが来た!
シマッタ! うっかりした。
ターシャは首をゆっくりと回転させた。驚くべきことに、その首は真後ろまで回る。
ー 5人、10人、・・・・・・25人。
ネズロン兵が、この家を取り囲んでいる。
ボクを、掴まえに来た。
ターシャのもうひとつの能力、「透視」。
首を180度回転するだけで、全方位を視野に入れることができる。
壁があろうが、暗闇にいようが、ターシャはすべてを「見る」ことができるのだ。
マルは全部まで聞かないうちに、反射的にバックの中のオーブシーバーを手に取った。
例え休暇中でも、非常事態に備えてこれだけは身から放さない。
「安心しろ!
オメエはオラが、守ってやっがら!」
マルの力強い声が、部屋に響く。
(『第3回』に続く)
怪人製造の秘密。
迫り来るネズロン兵。
もう、わくわくしながら読んでしまいました。
タンクトップ姿のマルが、かっこいいですね。
昔読んだマンガを思い出したり、
世界の動物をネットで検索したり、
これといった画像を印刷したり、
登場人物が決まれば、話の筋はだいたい自然にできてくるものですね。
私はまったくの想像を発展させるのは苦手なので、
やはり、何か現実の物の中に「モデル」が欲しいんですよ。
マルちゃんの絵を描くのには、いろいろなスポーツ選手の写真を参考にしています。
前にKenさんに教えていただいた、ネットでの検索が役に立っています。
僕の話の中では、まだ「しゃべる怪人」が出てきません。
コミュニケーション不可能な「異世界の住人」になっているんですよ。
でも、そのうちに何か語りだすヤツが現れるのかもしれません。
(退治するのがかわいそうになってしまうかも。)
ストーリー全体の監修としてお願いします。
このストーリーを、本編第4話「『黄色い太陽! オーブイエロー』だぞ!」とさせてください。
タイトルリストにあるとおり、各メンバーにクローズアップした回を準備しています。
第一回のコメントでも書きましたけど、特に何かを気にする必要とするわけではありませんので。
よろしくお願いします。
これらのオーケストラが、ドラマなんですね。
どんなにかっこいい主役でも、それだけではイラストにしかならない。
生きた人物になるには、悪役も、脇役も、小道具も、通行人も、必要なんですね。
なんだか、人生みたいです。
各々の主役に対しては、悪役だって、欠かせないんでしょうね。
それあっての、人生なんですかね。
「オーブ」を作って行くのに日々ぷよぱぱさんの払っている努力は、すごいものがあると想像してます。
私にいちいち断らなくても、好きなとおりにアレンジしていいんですよ。
私は私で、このストーリーが終わったら、自分の作った「マルちゃん・ストーリー」を自分のサイト内だけで纏めてみようかと思っています。
放っておくと、私のblogの中では埋もれてしまいかねないんですよ。
ちょっと記念に、残そうかと思っています。
そういう面をちゃんとサルベージされてるのに感心しました。
多くの人が参加して一つの物語をつぐむと
明るいストーリー、シリアスなストーリー、優しいストーリーと色々な話が展開して本当に面白いと感じてます。
迫りくるネズロン兵、続きが楽しみです。
Kenさんの軽快なリズムや、ぷよぱぱさんの繊細なストーリー展開には感服しています。
なかなか真似はできませんね。
それが個性なんでしょうか。
でもblogを初めて、随分「書く」ことに慣れました。
表現の幅が広がるとともに、心の世界も広がるような気がしますよ。
書くってことは、意外と大切ですね。
自分自身に返って来ます。
今回も少し長くなってしまいました。
まだ先が続くので、気を長くしてつき合ってくださいね。