「ああ、確かに『隠し念仏』ってもぁ、言うな。」
私は驚いた。九州から来る知人に、このでは葬儀のやり方に一風変わった風習が残っていると話したところ、ぜひ話を聞きたいから土地の古老に会わせてくれという。なんでも「隠し念仏」とかいう民俗宗教を調査しているそうだ。そこで隣りのジッちゃんに頼みに行ったら、なんとこのムラの念仏が「隠し念仏」なそうだ。
「オレらはただ、『お念仏』っていうがな。このあたりじ . . . 本文を読む
「ジッちゃんいますか~?」
用事があってちょっとお隣りの戸を叩いた。「おう!なんだ?」座敷から出てきたジッちゃんはヤッケを羽織っていた。
「あれ、出かけるところですか?」
「ん・・・いや、ちょっと寒いからナ・・」
ジッちゃんは半袖シャツにヤッケを羽織って休んでいたのだった。たぶん冬服はみんな仕舞ってしまっていて、手近にあった雨具を着込んだのだろう。
そう、確かにこのところとても涼しい。
もう小学校 . . . 本文を読む
ふと、なんだかおかしいな、と思った。
遠くに見える若木の枝が一本裸になってる。
近づいてよく見たら、枝の先から葉っぱがきれいに無くなっていて、その下の葉に隠れるように、一匹の芋虫がいた。
モクメシャチホコ
蛾になるととてもきれいな木目の模様が羽根に出るという。でも私はまだ彼らの成虫には出会ってない。
つい先日も幼虫には会ったのだけれど、翌日見たらもういなかった。それ以降その木の葉は食べられて . . . 本文を読む
朝食の後に田の草取りをしていたら、おお!と驚いた。
目の前の稲葉で、まさにヤゴからトンボが生まれ出ようとしている。
すわ!トンボの羽化!これはカメラにおさめないと。
おいちょっと待ってろよ今カメラをとってくるから・・・とトンボに言い残して畦畔を上がる。折りよく軽トラにデジタルカメラが積んであった。
こんな場面には滅多に会うものじゃない。実際稲作5年目にして初めてだ。
按配よくカメラにおさめて . . . 本文を読む
梅雨空の土に盛り上がる草を見ると思う
この世界はエネルギーに溢れてるんだと
この葉っぱのひとつひとつのように
いつか私もほとばしるように生まれてきたのだと
たくさんのものを愛し、たくさんのものを憎み
たくさんのことをしてたくさんのものを作り
たくさんのことを産んだ
しかしそれは、なんだったのだろう
みんな生まれて、消えていった
あの時々にそんなことをする必要は
なにもなかった
過去の残像、未来 . . . 本文を読む
あれはたぶん、イチモンジセセリ・・・
足元の蝶はキツネ色に輝く羽をひらひらとはためかせ、私のぐるりを舞い飛んだ。
なんという蝶か、または蛾なのか確かめたかったけれど、そんな思いも叶わず手の中をするりと抜ける子どものように、明滅しながら風に吹かれて空へと消える。
それが飛び立った辺りを見回すと、数枚の葉が糸で綴られた「つと」が目に付いた。
まさか今飛んだ蝶の子どもでもないだろうに、でもそれを見てな . . . 本文を読む
動物は、野生動物でも家畜でも、薬を撒布した草を好んで食べるという奇妙な性質を持っている。
このことは第二次世界大戦が終了して間もなく、つまり農薬が盛んに使われるようになってから各地で報告されるようになった。
当時アメリカで一般的に撒布されていた除草剤(2・4D)を使った実験では、薬をかけるとトウモロコシやビートの硝酸塩含有量が飛躍的に高まった。もちろん道端や畑に通常見られる草に対しても同じ。
そ . . . 本文を読む
昨夜帰ったのは12時近かった。
眠くて眠くてすぐに寝たかったんだけど、いざ布団に入るとなんだか眠れない。
どこかでプ~ン・・と音がする。起きだして今年初めての蚊取り線香を焚いた。
やはりお酒を飲んでから寝よう。ついでに家に入りたがりのアポロを入れてやろう。
その時に玄関からたくさんの虫たちが一緒に入ってきた。
そうして居間の蛍光灯に群がっていた虫たちが、やがてちゃぶ台の上にポトリ、ポトリと落ちて . . . 本文を読む