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難題山積の文在寅政権の韓国

2017年05月22日 12時02分31秒 | 国際・社会
熱狂的な左派の期待に応えられなかったとき、何が待っているか やられたことは…

 核開発や弾道ミサイル発射で挑発を続ける北朝鮮、改善しない日本や中国などとの外交、経済低迷や失業・雇用問題。大統領当選と同時に就任した文在寅(ムン・ジェイン)大統領(64)は、内外でのやっかいな問題をいきなり背負い、「歴代政権で最も困難な状況」(韓国メディアなど)のなか、奔走をしている。

ノンストップで政権スタート

 文在寅政権の発足は、「スタートを切った」というよりも、大統領当選というゴールの後も、休まずにそのまま疾走を強いられているという形容がピッタリだ。

 朴槿恵(パク・クネ)前大統領(収賄容疑などで逮捕)の罷免を受けた繰り上げ大統領選挙、当選と同時の就任という異例のケースのため、仕方のないことだが、文在寅大統領は当選の喜びに浸る間もない。多忙を極め、政権発足からの10日間を過ごした。

 4月17日から22日間の選挙戦を、5月8日深夜にソウル中心部の街頭演説で終えた文氏は、翌9日夜、開票開始とほぼ同時にに事実上の勝利宣言をした。

 翌10日朝、当選が正式に決まるや韓国軍最高司令官としてソウルの自宅から軍の李淳鎮(イ・スンジン)合同参謀本部議長に電話で最初の指示を出した。続いて、歴代大統領や朝鮮戦争で命を失った戦死者らが眠る国立墓地を参拝。正午からは夫人を伴い、国会での就任式に出席した。本来なら盛大なところだが、式は国会内での簡素なもので、宣誓と就任演説は先例にならってこなした。

 第19代大統領に就任した文氏は、そのまま大統領府に入り、報道陣を前に自ら首相候補と大統領秘書室長、情報機関トップの国家情報院長を指名。見ていて、本当に慌ただしい政権初日だった。

 韓国の歴代大統領の中で、文氏は最も多忙な政権の初日を過ごしたであろう。しかも、選挙戦から休むことのなく文氏の激務は現在も続いている。


朴政権の借金背負う

 新政権が、前政権のできなかったこと、課題を背負うのはどこの国でも同じだ。ただ、朴槿恵政権から引き継いだ文在寅政権の課題は膨大。課題を引き継ぐと言うよりも「そのまま背負わされた」と言った方がいい。

 それほど、文在寅政権の発足時の韓国はまずい状況にある。韓国国民の誰に聞いても、その現実を否定はしない。

 韓国国民の最大の懸念は「暮らし」。韓国経済は低迷を続けており、再生は相当厳しい。文在寅大統領が選挙中、最も力説したのは「雇用」であり失業対策だった。韓国の今年第1四半期(1~3月)の失業者は1年前より1・2%増え116万7000人だった(韓国統計庁による)。うち約47%の54万3000人が大学卒業以上の学力を持つ者で、史上最悪を記録した。

 失業は特に若年層で著しく、格差も拡大している。家計負債額は1300兆ウォン(約130兆円)。カード債務の返済不能の件数、額は増加をたどっている。

 「公共部門を中心に81万人分の雇用を創出する」と公約していた文氏は就任直後に「約31万人の公共企業の非正規職員を、任期中に全員正規職にする」と表明した。

 大統領直々の約束に、非正規職の間で期待は高まっているようだ。ただ、国の経済が回復しない現状で、民間企業の雇用までがいきなり回復するわけはない。

 雇用や格差是正は文氏が朴槿恵氏に敗れた前回2012年の大統領選でも争点となり、当時、文氏も改善を約束した。だが、これらの問題、韓国経済は「何もできなかった朴槿恵政権」(韓国紙)を経て、5年前よりも、もっとまずい状況になっている。

 こうした現状にも関わらず、文氏はバラ色の雇用創出に加え、「社会の公正と正義」を掲げ、あえて韓国経済を牽引してきた財閥の改革を進める方針だ。


この半年間の大きな後退

 経済をはじめとした国内問題だけではない。

 核・ミサイルの開発を進め、挑発を続ける北朝鮮。その北朝鮮のミサイルに対応するための米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備に猛反発する中国。慰安婦問題をめぐる日韓合意の精神に反し、ソウルの日本大使館前に続き、釜山の日本総領事館前に慰安婦像を違法に設置したことによる日本との関係のさらなる悪化。トランプ米政権との関係構築にも出遅れ、先行き安泰とはいえない。韓国メディアは「四面楚歌」と韓国外交を憂えている。

 就任前までは反米・反日的な言動が目立った文在寅大統領だったが、就任式の演説では、米国との関係について「韓米同盟を一層強化する」と明言した。また、「朝鮮半島の平和のために東奔西走する」と述べ、「必要なら直ちにワシントンに飛んでいく。北京、東京にも行き、条件が整えば平壌にも行く」と断言した。

 かつての同志である盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が指向したバランサー(仲介者)を自任しているかのようで、「平壌にも行く」との発言は、南北対話への熱望も感じられる。だが、文氏の思いは、その北朝鮮によって、わずか4日後の14日に砕かれた。弾道ミサイル発射だ。

 文氏はこの日、外交・安保関連の閣僚や高官が出席した国家安全保障会議(NSC)で北朝鮮を非難し、「対話の可能性を念頭に置いているが、対話は北朝鮮が態度を変えなければできない」と言わざるを得なかった。

 北朝鮮という爆弾を抱え、文在寅政権の韓国は急いで主要各国との外交関係修復に急いでいる。首脳会談の早期開催に向け、日米中などに特使を派遣した。6月下旬には文氏が訪米し、首脳会談に臨む。


自ら作った負の遺産

 経済、外交など課題山積の文在寅大統領。ただ、これら朴槿恵政権が残した“負の遺産”は皮肉にも、当の文在寅氏が手を貸して作ってしまったものも少なくない。

 文氏が今、まさに取り組もうとしている経済改革、経済活性化、雇用回復は、いずれも朴槿恵前大統領が実現に向けて任期内の関連法案の成立を目指していた。しかし、野党の反対で国会を通らず、そのまま放置された。経済関連法案を政争の具として利用し、“憎き朴槿恵政権”の足を引っ張ったのは、まさしく文氏ら野党勢力だった。

 また、当時の野党勢力はTHAADの配備に頑強に反発し、文氏は「配備是非は次期政権に委ねるべきだ」と主張。慰安婦問題をめぐる日韓合意についても文氏は「再協議」を主張し、釜山の日本総領事館前に違法設置された慰安婦像には今年1月にいち早く訪れ、「保存」を主張した。

 経済、外交、安保。現在、文在寅政権が発足当初から直面している難題のほとんどに野党時代の文氏が関わっており、「無能」(韓国紙)と呼ばれた朴槿恵前政権の足を引っ張るかたちで、一層ややこしいものにしてしまった。しかも、自分で越えるべきハードルを高くしてしまった。自業自得の面は否めない。


7カ月以上の多忙、今後も

 文在寅大統領の多忙さに話は戻る。この忙しさは、さかのぼれば少なくとも7カ月前からだと思う。文氏は昨年10月に、事実上の大統領選挙への出馬を表明。その直後に、当時の大統領、朴槿恵被告の親友で女性実業家の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件で、韓国の混乱が始まった。

 以降、今年3月の朴被告の罷免決定まで、文氏は自ら毎週土曜日の「朴槿恵退陣要求デモ」の大規模集会に参加するなど、朴槿恵政権の非難に明け暮れた。当然、文氏は、本来なら今年12月に実施されるはずの大統領選挙の前倒しを見越して動いていたはずだ。

 朴被告の罷免後、文氏は所属する左派政党「共に民主党」の大統領選公認候補選びにそのまま挑み、大方の予想通り、公認を勝ち取った。

 振り返れば、その内容の善しあしはともかく、文氏はすでに7カ月以上、朴槿恵政権の猛烈な否定と、自身の政権掌握のために全力を注いできた。しかも、前大統領の職務停止と罷免という権力の空白の後で、自身も複雑化に手を加えてしまった難題が山積だ。

 文氏は左右に分かれた世論の和合を目指し、「国民の統合と共生」を訴えてもいる。ただし、自ら大規模集会に積極参加したことで、保守派との亀裂は深まったままだ。“反文在寅”の世論は依然として根強い。


昨日の敵は今日も敵

 文在寅大統領は国内で今度は、守る側に立たされている。就任当日、文氏は国会で野党各党を回り、新政権への協力をお願いして回った。ただ、保守系の野党が文在寅政権に素直に協力することは想像しにくい。

 政権与党となった左派の「共に民主党」は国会議席数(300)のうち、120議席で、過半数にも満たない少数与党だ。重要法案の上程と可決には国会議員の6割(180人)の賛成が必要で、朴槿恵政権が経済関連法案の成立にしくじった原因はここにある。文在寅氏ら野党勢力の反対で、法案成立はつぶされ続けた。自分たちがやってきた妨害を、政権を取った文氏は受ける側に立つ。

 内政だけでなく、外交関係の修復に奔走している文在寅政権。まさしく、自分たちがあおった炎を消すという「マッチポンプ」を今、演じているかのようだ。

 このマッチポンプ現象。文氏に限らず、韓国がよくやらかすことだ。最近の例では朴槿恵前大統領。慰安婦問題をめぐり、各国で日本を非難し、日本の世論を悪化させた揚げ句の果てに、訪韓日本人が激減。「これではまずい」と感じたのか、2014年秋ごろから対日関係改善に急にシフトし、日韓国交正常化50周年の節目に合わせるかのように、慰安婦問題での日韓合意に持ち込んだ。

 それまで日本を振り回してきたのは何だったのかと、今でも振り返って思う。韓国はとかく、自分で騒ぎ出し、収拾がつかなくなりマズイと思えば、強引でも自分で火消しに走る。今回が初めてではない。


期待を裏切れば…

 朴槿恵政権から負の遺産を引き継いだ文在寅政権ではあるが、引き継ぎがきちんと行われたわけではない。

 事実、大統領府関係者によれば、朴政権から引き継ぐべき資料はほとんど残されておらず、引き継ぎ資料は10ページ足らずの報告書などだったという。資料の多くはシュレッダーにかけられていた。全くひどい話だ。

 ただ、文氏が大統領秘書室長を務めた盧武鉉政権も、2008年に李明博大統領に政権を引き継ぐ際、似たようなことをしたという。やられたことをやり返されたわけだ。韓国にはありがちのことである。日本の隣国の現実であり、日本はこのような国と、政権が代わるたびに仕切り直しを強いられているのだ。

 一方、文在寅政権が発足したばかりの韓国の首都ソウルが本当に静かだ。大規模集会もなくなり、選挙も終わり、韓国としては実に落ち着いている。

 産経新聞ソウル支局が入っている建物には、左派の全国労組「民主労総」が入っており、顔見知りも少なくない。大規模集会を主導し、選挙中の血気盛んで忙しそうだった民主労組の人々がいやに静かだ。まるでカラオケで歌い狂った後のような、ディスコで踊り回った後のような疲労感がうかがえる。どこか皆上気したような表情に見える。

 文氏は彼ら左派勢力のバックアップもあり、大統領に上り詰めた。今後、彼らの要求に応じられない場合、理想の韓国社会を公約通りに作れず国民を失望させた場合、何が待っているのか。韓国の“民衆の力”の壮絶さは、大規模集会の中で一緒になって叫んでいた文氏が最も分かっているはずだ、

 まっとうすれば5年後の5月に大統領の任期は終わる。それまでの任期中に文在寅政権を根本から脅かす事態が、韓国国内で起こらないという保証はどこにもない。

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