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沈みゆく船を見切ったアリババ会長ジャック・マーが電撃退任

2018年09月22日 06時19分24秒 | 国際・社会



ネット通販市場の限界、政府規制と貿易戦争......中国IT の風雲児ジャック・マーが感じた「潮時」

 馬雲(ジャック・マー)といえば中国ビジネス界の超大物。英語教師を務めていたが、ネット通販最大手アリババ・ドットコムのカリスマ創業者となり、アマゾン・ドットコムの創業者ジェフ・ベゾスの中国版とも呼ぶべき存在に上り詰めた。

 そんな中国の起業家精神を象徴するマーが、来年9月にアリババの会長を退任すると表明した。このニュースは投資家を驚かせただけではない。中国に築いた輝かしい地位を投げ出す理由は何なのかと、さまざまな臆測を呼んでいる。

 マーが語った退任の理由を軽く考えるべきではないだろう。推定380億ドル以上の資産を持つ54歳の大富豪は、退任後は慈善活動、特に教育事業に時間と精力を注ぐという。中国の教育環境を向上させるのは結構だが、この言葉を額面どおりに受け取るわけにはいかない。優れたビジネスマンが想定外の行動を取るとき、凡人には分からない何かを見据えていることがある。

 例えば、香港の著名な実業家である李嘉誠(90)がそうだった。彼が13年に中国から資産を引き揚げたとき、表向きには売却が必要という説明だった。だが今にして思えば、中国経済が浮き沈みの激しい段階に入ると見越して早めに撤退を図ったのだ。その後の展開は、李の判断が正しかったことを示している。

 マーがアリババを離れる理由は自分の評判を守ることかもしれない。会社が順調なうちに側近も社員も残して去れば、サクセスストーリーに傷が付かない。

 実際、中国のIT業界が逆風にさらされていることは、マーのような天才でなくても分かる。

 もうIT業界では、バラ色の成長は望めない。ネット通販はほぼ飽和状態。アリババだけでなく騰訊控股(テンセント・ホールディングス)や百度(バイドゥ)も、成長を続けたければ他業種に進出するしかない。

 IT大手に政府が介入?
 だが、中国には厳しい規制の壁がある。金融や医療、通信などは国有企業による独占状態だ。製造業ならまだ参入は可能だろうが、アリババのような企業は全く新しい対応が必要になる。

 しかも中国政府は、テンセントやアリババといった大企業を警戒するようになった。国はこれらの企業にマイノリティー出資(過半数を超えない株式の取得)をすることで、国内の証券取引所に上場させて規制の網を掛けようとしているとも言われている(これまで中国のIT大手は外国で上場してきた)。

最も恐れるのは「自由」が失われること

 だが中国の起業家が最も恐れるのは、自分たちの成功に欠かせなかった「自由」が失われることだ。かつての李のように、マーも今が撤退の時だと感じたに違いない。

 国外に目を向けても、米中の間にIT冷戦の暗雲が漂っており、起業家は先行きに期待が持てない。米政府はほぼ確実に、中国系IT企業が米国内で研究を行ったり、アメリカの技術を利用することへの制限を強めるだろう。米中の貿易戦争と併せて、IT冷戦は中国IT企業の成長を大きく阻む恐れがある。

 中国政府はマーの退任を警鐘として受け止めるべきだ。政府の政策と方向性の欠如に対して、起業家が不信をあらわにした例がまた1つ増えたのだから。

 いま中国は2つの前線で戦っている。1つはアメリカとの貿易戦争と来るべき地政学上の冷戦。もう1つは、経済・外交政策に対する国内での信頼低下だ。

 最近の中国政府の姿勢からは、勝利につながる戦略は見えてこない。今のままでは、マーのようなビジネス界のリーダーがさらに去っていくだけだ。

自衛隊OBの提言であぶり出された中国の無体に目をつぶる「日本人」の正体

2018年09月18日 10時50分41秒 | 国際・社会
 「ディスる」とは「相手を否定・侮辱する」という意味だとか。12年近く毎週小欄を書いているとご賛同下さる読者も多いが、時にご批判も賜る。605回目の前回も「中国をディスる記事」との反発が書き込まれた。しかし、中国の軍事費は1988年比49倍、2007年比でも3倍に膨張している。科学・先端技術開発費といった「隠れ軍事費」を含めれば、安全保障上の“超常現象”と断じて差し支えない。

 国際社会を利己・独善的にカクハンし→軍事・経済・政治の各正面で中華秩序を構築→強制し始めた中国を「否定」するのは必然。「侮辱」はいけないが、国民・言論弾圧など数多の無体を働く中国を「否定」しない、できない無様は記者生命の終わりを意味する。

 けれども、我が国の政界・メディア・教育界・法曹界・経済界には、中国の無体に目をつぶる「日本人」が跋扈する。邦家の安保戦略の進化を阻み、国際スタンダードのはるか後ろをヨチヨチと歩く「国防途上国」を完成させんと謀る。

 公益財団法人《笹川平和財団》が10日に発表した《積極的平和主義実現のための提言I》に、我が国安全保障の無残な姿を改めて確認した。提言執筆者のほとんどは、現場と理論を深く学んだ旧知の防衛省・自衛隊OBで、筆者は提言内容のほぼ全てに賛同する。とはいえ、多くは「国防先進国」では「取組中か解決された問題」、あるいは「他国では考えられぬ問題」であった。提言執筆者の苦心惨たんに敬意を表すべく、一部を紹介し付言する。紙幅の都合で、主旨はそのままに編集を試みた。

 【提言1=現実を反映し、柔軟で実効ある「集団的自衛権行使事態認定」判断基準の策定】

 平和安全法制で限定的集団的自衛権が認められたが《新武力行使認定三要件》は《個別的自衛権行使のみを認めた従来の武力行使三要件と変わらない》。新要件は《我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険》などと定めたが、提言は《政府が認定に躊躇し時間を要する》と懸念を明記した。

 《その様な事態に陥れば自衛隊の対応が柔軟性を欠き、集団的自衛権行使が実効あるものとならない/行使容認手続きには依然高い敷居が存在し、自衛隊は従前と変わらない活動を余儀なくされる/今次法制でも、我が国に関わる事態で作戦行動中の米軍に、適時の支援作戦や協同行動ができない》

 東日本大震災で“指揮・統率能力”を露呈した菅直人政権に当てはめれば、決断が遅れるどころか、意図的に決断しない恐れは十分ある。違法操業中の中国漁船が逃走時、海上保安庁巡視船に体当たり、船長を公務執行妨害で逮捕しながら釈放した危ない前例もある。日米同盟に置き換えれば、同盟崩壊への序曲となろう。

 【提言2=継戦能力+抗堪性+防衛生産・技術基盤の強化】

 《能力を常続的に発揮すべく燃料・弾薬の備蓄・補給&修理・整備&輸送の後方支援能力=継戦能力を充実・強化する》

 《重要性が増す南西地域はじめ日本全体の防衛態勢を充実するため、弾薬庫等兵站基地を強化・新設する。船舶・航空機の輸送力確保を含めた官民あげての後方支援態勢を推進。縦深性確保に向け人的・物的予備能力も充実させる》

 《航空機・ミサイルによる経空攻撃やテロ+ゲリラ+特殊部隊+サイバーの攻撃より国土・国民・部隊・施設を守る。情報収集・警戒監視を担う衛星やセンサーの防護や、自衛隊&米軍基地・施設に加え港湾・空港などの官民重要施設も被害を局限し、発生後は迅速復旧し再開できる能力が肝要だ。重要施設・機能の地下化+航空機の掩体やシェルターの整備など抗堪性強化を推進する》

 《兵器工廠を持たぬ我が国では国内防衛産業が防衛力の一部。生産・技術基盤弱体化は兵器可動率に影響し継戦能力低下に直結する。科学の進歩は軍民の垣根を無くしたが、軍事研究を忌避する傾向があり、防衛基盤や科学技術の進展を阻害している。かかる状況を改善する》

 「日本学術会議」の安全保障への拒絶姿勢は国民の生命を危険に陥れており、知的集団の知的怠慢である。他方、自衛官が自嘲気味に詠む川柳に「タマに撃つタマが無いのがタマに傷」という秀作がある。大東亜戦争の戦訓は学習してはいるが、経済的理由も手伝い実行されていない。実は冷戦期では《ソ連の本格的侵攻を想定しつつ、平素は限定的小規模侵攻に独力で対処しうる基盤的防衛力水準に留め、本格的侵攻の蓋然性が高まれば防衛力を緊急増勢する有事エクスパンドが前提だった。平時の脆弱な兵站はリスクとして許容すべきとされていた》。

 【提言3=(1)次期大綱で検討中の(最高)統合司令部において南西地域での不測事態対処計画を策定し、第一線で離島防衛する常設統合任務部隊(=陸上自衛隊第8師団/JTF-SW)司令部や隷下・支援部隊を日常的に指定(2)JTF-SWは平素の警戒監視~犯罪以上武力攻撃未満のグレーゾーン事態対処~武力攻撃対処まで継ぎ目のない各種事態対応を計画し、定期的に(最高)統合司令部が割り当てた陸海空部隊の能力を有機的に運用すべく計画・指揮統制能力を保持。運用統制下部隊の訓練を重ねて統合運用能力を高める。特に、離島へ戦力を緊急展開する水陸両用作戦に備え、第一線部隊の統合能力充実を最優先する】

 《南西諸島は東シナ海と太平洋とを隔てる安全保障戦略上の要衝で、本州全体とほぼ同等の地理的な広がりを有する事実を勘案すれば常駐規模は極めて限定的。海上・航空優勢を獲得し、部隊を緊急展開して防衛態勢を急速に整える能力が鍵となる。自衛隊の海上・航空輸送力はもちろん、国内輸送インフラを全て活用する大規模作戦となり、中央の高レベルでの計画や統制が不可欠だ》

 《港湾や飛行場の安全確保も重要。飛行場や港湾に部隊展開初期、陸空自衛隊の対空ミサイル部隊を、作戦地域に陸自の地対艦ミサイル部隊を配置できれば、局地的対空・対海上防衛の傘を提供→離島への輸送機&輸送艦の行動や戦闘機&哨戒機部隊展開も可能に。海上・航空優勢は一層確実となり、地上部隊展開や住民保護も容易になる。自衛隊として米海空軍戦力に全般的支援を受け、米軍の緊急展開に防護の傘を提供できれば日米による相乗効果を上げる》

 《1980年代に米軍の統合強化を巡る議論が深まった当時の統合参謀本部議長は、こう指摘した。統合とは「上陸用舟艇の艇長にとっては海兵隊員や陸軍兵士を定時・定点に上陸させること、空軍パイロットにとっては歩兵中隊長の要求する地点を正確に爆撃すること、駆逐艦のクルーにとっては海岸堡での陸上戦闘を適切な艦砲射撃で支援すること…つまり各軍種が持つ独特の能力を複合して発揮すること」》

 【提言4=領空侵犯対処における武器使用権限の明確化】

 《自衛隊法6章に自衛隊の行動類型を、7章に6章で規定された各行動時の権限を定める。6章では、防衛相は「外国航空機が国際法や航空法などに違反し我が国の領域上空に侵入した時は、自衛隊部隊にこれを着陸させ、又は我が国の領域の上空から退去させるため『必要な措置』を講じさせられる」と規定する》

 《領空侵犯対処には自衛隊法で唯一、7章にあるべき権限規定がない。従って(前述の)『必要な措置』という6章の文言で、全て読み込む形になっている/曖昧規定が自衛隊の措置に躊躇や過度の抑制を強い、他国の挑発を誘引し、領空侵犯対処任務を適切に実施できない恐れがある》

 《政府は、国際社会は領空侵犯機に撃墜を含めた武器使用を認めているとの見解を示す。一方、警職法や一部自衛隊法でも、正当防衛・緊急避難に該当しなくても危害射撃できる場合を明文規定する。ところが、警察権と位置付ける我が国の領空侵犯対処での武器使用は「必要な措置」として正当防衛・緊急避難に限られる。しかも、正当防衛・緊急避難時の武器使用は緊急行為で、警察官や他の公務員に命令や許可は求めない。反面、領空侵犯対処は上級指揮官の許可を原則としている》

 【提言5=(1)グレーゾーン事態における海上保安庁の現場対処能力向上(2)拡大・多様化する任務に備え規模を拡充する】

 中国海警局は、世界最大の超大型巡視船に敵撃破目的の軍艦並みの大砲を搭載し、国内法的にも《いつでも軍事行動に移行できる組織》。対する海保では訓練内容・武器・船体構造の各面で戦闘に対処できない。海保の後詰めに陣取る海自が駆けつけるとしても時間を要する。

 《「中国海軍投入の口実を与える」と、日本が先行的に現場に自衛隊を派出しない政治方針下にあって、エスカレートした状況へのシームレスな対応の確保には自衛隊の現場到着まで海保が対応できる態勢が不可欠》。だが《1000トン以上の巡視船は海保の62隻に対し135隻。差は広がる傾向に》。

 海保の定員は発足以来67年間でわずか3400人強の増員。警視庁の定員4万3千人とはケタ違いで、首都圏県警と同程度。予算でも神奈川県警に及ばない。世界6位のEEZ=排他的経済水域を有する我が国の海上組織として余りに貧弱だ。

 【提言6=(1)日米同盟戦略を、兵器研究・開発/作戦構想/指揮・統制組織を柱に、包括的かつ中長期的視点に立って策定し、対中長期戦略競争に必要な防衛力を整備する。日本としては文科・経産・防衛省が国内開発技術情報のデータベース化を進め、違法技術移転取締体制を強化する。米軍の先端技術活用実態を把握し、相互運用性に影響しそうな変革的取り組みを特定し、自衛隊への導入のあり方を検討。もって、日米共同研究・開発の機会を最大化する】

 《米国はAIやロボット技術、ビッグデータ処理の新技術を兵器化し、陸海空域+水中+宇宙+サイバー空間など戦場拡大を念頭にする新作戦構想の検討や導入、新指揮・統制モデルを模索する》

 《中国は精密誘導兵器による米軍の高価値アセットを標的とした戦争の「デジタル化」「ネットワーク化」に次ぐ「知能化」を視野に、AI&量子コンピューター&無人兵器などの研究・開発を進める。民間技術を軍事転用する取り組みを進め、米国はじめ外国企業とも共同開発事業を展開中だ》

 《日米同盟が中国に後れをとるか否かは、中国の日米同盟に対する認識=対中抑止力の質に大きくかかわる》


 冒頭で登場した「日本人」は平和安全法制制定過程で「戦争が起きる」と大騒ぎした。かくなる貧困な思考回路では、本当に戦争に巻き込まれる。我が国は「戦争ができる国」に脱皮しなければならない。「戦争がしたい国」でも「戦争をする国」でもない。「戦争ができる国」に進化しなければ、抑止力が働かず侵略される危険が高まるのだ。戦争は愚かな行為で「良い戦争」などあるはずもない。ただし、国家主権や国民の生命を断固守り抜く「正しい戦争」はある。

 国民の覚悟と精強な戦闘集団、法制を含む国防体制が揃って初めて、戦争を回避できるのである。