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トランプ氏の「マッドマン・セオリー=狂人理論」は金正恩氏に通じるか

2017年04月03日 11時19分59秒 | 国際・社会
「マッドvsマッド」なら戦争は不可避だ

 休戦中の朝鮮戦争が再び戦端を開く危機がヒタヒタと迫っている。

 米国のリチャード・ニクソン元大統領(1913~94年)はベトナム戦争を終わらせるにあたり、副大統領として仕え、朝鮮戦争を休戦に持ち込んだドワイト・アイゼンハワー(1890~1969年)大統領の情報戦に学んだ。そして今、ドナルド・トランプ大統領は、現下の朝鮮半島危機を、ベトナム戦争を終結させたニクソン氏の情報戦に学び、血路を見いだそうとしている。一連の情報戦は、「核戦争も辞さぬ狂人」を装い、敵国の譲歩を引き出す瀬戸際戦略で《マッドマン・セオリー=狂人理論》と呼ばれる。

 しかし、《狂人理論》の実践には絶対的前提条件がある。

 まず、「あらゆる選択肢が検討対象」だと、核攻撃を含む武力行使の可能性を公言し、警告を発する米政権のトップや側近=戦略立案者が「狂人」ではなく「狂人を装っている」ことと、情勢次第で核攻撃をも敢行するハラをくくること。

 一方で、敵対国・北朝鮮の指導者が冷静な最終決断を引き出す分別や指揮・統制能力を備え、かつ、政治・軍事・経済上の合理性を指導者に進言できる人材を含有する国家体制が不可欠だ。国家指導者と彼の側近=戦略進言者が「狂人」ではなく「狂人を装っている」ことが眼目となる。

 ひるがえって北朝鮮と朝鮮労働党の金正恩委員長はどうか。金委員長は後見人でナンバー2であった叔父・張成沢氏(1946~2013年)ら、側近の政治家や将軍、官僚の大量粛清を続けている。もはや、周囲はイエスマンばかりで、合理性に基づき進言する腹心は存在しない。

 30代前半で軍歴も政治歴もない金委員長がまともな判断や指揮・統率をできる道理もない。だのに、核実験やミサイル発射訓練を止めようとしない。米国に核保有国と認めさせ、政権の維持を確約させるために「狂人を装っている」つもりが、特殊作戦部隊やピンポイント(精密誘導)爆撃などで「金王朝」排除を目指す米軍の《斬首作戦》に脅え、錯乱。朝鮮人民軍が謀反を起こしかねぬ疑心暗鬼も加わり、半狂乱となった…との分析をする安全保障関係者は少なくない。

 米トランプ政権の《狂人理論》に屈服しなければ、朝鮮半島有事は現実となる。かかる危機を前に、民進党など野党は国会で、森友学園問題以外に眼中にない。政治姿勢が完全に狂っている。

 以下、ニクソン氏の首席補佐官ハリー・ハルデマン氏(1926~93年)の回想録《The Ends of Power》や、米紙のワシントン・ポスト&ニューヨーク・タイムズに力を借りながら、日米外交筋などへの取材でフォローし、小欄を進める。


核ボタンに触れながら怒りまくる大統領

 ハルデマン氏は、こんなふうに回顧した。

 《ニクソンはベトナム戦争をただ終わらせたかったのではなく、大統領就任1年以内に終わらせられると頭から信じていた》

 《彼はアイゼンハワー大統領が戦争終結に向け採った行動に伍する案を描いていた。アイゼンハワーが大統領になったとき、朝鮮戦争は膠着状態に陥っていた。アイゼンハワーは核兵器を投下する用意があると密かに中国に伝えた》

 《2~3週間の内に中国は休戦を呼びかけ、朝鮮戦争は終わった》

 ニクソン氏は、朝鮮戦争を終わらせたアイゼンハワー大統領にならい、北ベトナムを「核脅迫」した。が、北ベトナムは屈しなかった。すると、《ニクソン政権が前政権に比べ「タフ」だと、北ベトナム政府に見せつけるべく》戦線をカンボジアへと拡大した。

 同時に、側近を使って北ベトナム側に《狂人理論》をリークする。

 《北ベトナムに、私が戦争を終わらせるためなら、どんなことでもやりかねぬ男だと信じ込ませてほしい。我々は彼らにほんの一言、口を滑らせればいい。『皆さんもニクソンが反共に取り憑かれていることは知っているだろう。怒ると手がつけられなくなる。しかも、核のボタンに手をかけた状態でだ』と、ちょっと漏らせばいい。そうすれば2日後にはホー・チ・ミン(北ベトナム初代国家主席)自身がパリに飛んできて、和平を懇願するさ》

 《大統領就任1年以内》ではなかったが、ニクソン氏は任期中にベトナム和平(パリ)協定を結び、米軍の完全撤退を実現させた。

 北ベトナムに対するニクソン氏の《狂人理論》と、トランプ氏の《狂人理論》には、共通性を認める。

 実業家時代のトランプ氏は、ニクソン氏に手紙をもらっている。ニクソン氏は手紙の中で、テレビ出演中のトランプ氏をニクソン夫人が《素晴らしい》と評し、《選挙に出馬すれば勝つ》と称賛した…と伝えた。トランプ氏は手紙を大切に保管し、ホワイトハウスの執務室に飾る。尊敬するニクソン氏が用いた《狂人理論》もまた、信奉しているというが、確かに学習しているフシがある。

 ニクソン氏は大統領就任までの政権移行期間中は無論、共和党の大統領候補時代においても、既に《狂人理論》をリークしていた。

 例えば、1968年の共和党大会。オフレコのブリーフィングの席上、党幹部に「ベトナム戦争の終結方法」を尋ねられ、アイゼンハワー大統領が朝鮮戦争で採用した情報戦を持ち出して答えた。

 「『米国は果てしない地上消耗戦にもう我慢できない』などとする発言(核兵器投入方針)を、アイゼンハワー大統領は中国と北朝鮮に流させた。結果、数カ月で交渉にのってきた」

 戦況のシミュレーションや軍高官の見立てが「軍事的勝利」を導き出さぬ以上、《核脅迫=狂人理論》でフォローする他は無かった部分はあろう。

 トランプ氏も選挙中の大統領候補段階~政権移行期間中に、経済・金融問題だけでなく、外交・安全保障問題でも、過激な発言や実現のハードルが高い政策を乱発してきた。日本など同盟国の駐留経費を「不公平」と主張。台湾の蔡英文総統と超異例の電話会談を行い、「台湾は中国の一部」だとする中国共産党が堅持する「一つの中国」政策の否定すらにおわせた。


北朝鮮の「狂人進展度」

 北朝鮮に対しては現在、警告を連発している。レックス・ティラーソン国務長官も言い切った。

 「ハッキリとさせよう。過去の戦略的忍耐(北が非核化の意思を示さぬ限り対話に応じない)戦略は終わった。軍事行動を含め、全ての選択肢がテーブル上にある」

 「北朝鮮が(大量破壊)兵器開発計画の脅威を、我々が行動を必要と考えるレベルまで高めるのなら(軍事)オプションを検討する」 

 対する北朝鮮側の「狂人理論の進み具合」を論じてみる。

 3月6日、北朝鮮はわが国のEEZ(排他的経済水域)内を含む日本海に弾道ミサイル4発を発射したが、発射2日前に「狂人理論の進み具合」が加速している証拠が突き付けられた。証拠の概要はこうだ。

 《北朝鮮は3月4日、朝鮮半島東部海域に、午前と午後の2度にわたりロケット弾を計7発撃ち込んだ。航空機などに向け航行禁止警報を発出しておらず、成田発瀋陽行きの中国南方航空機が午後、ロケット弾の飛翔軌道を通過してしまった。乗客・乗員は220人。中国南方航空機が数分早く軌道にさしかかっていれば、ロケット弾に撃ち落とされていた》

 中国はなぜか沈黙したが、ロケット弾発射は、最高権力機関・全国人民代表会議(全人代)開催の前日で、習近平指導部に揺さぶりをかけ、「経済・安全保障上の支援を求め催促した」との見方も浮上する。

 核・ミサイル開発や武力による威嚇を止める兆候もない北朝鮮だが、北の国営メディアは「好戦狂」という表現を好んで使う。北朝鮮が自らを表現したのではない。「北南間の軍事衝突を防止し、緊張状態を緩和しようとする我々の真摯な努力に、傀儡好戦狂は無分別な軽挙妄動で逆行している」といった具合に、米韓合同軍事演習を実施する「米国傀儡」の韓国政府を批判する。

 どう考えても「南北間の軍事衝突をあおり、緊張状態を激化しようとする無分別な軽挙妄動に走っている好戦狂」は北朝鮮の方だ。中国南方航空機にロケット弾を故意に「ニアミス」させたとすれば、「狂人理論の進み具合」ではなく「狂人の進み具合」と言い換えるべきだ。

 実際、米国のニッキー・ヘイリー国連大使も「我々が相手にしているのは理性的な人間ではない」と公言している。

 米国が求める「非核化」と「大量破壊兵器の放棄」という米朝対話の条件を、「理性的な人間ではない」金正恩氏が受諾するとは思えない。 

 結局、朝鮮半島の命運は米トランプ政権の「正しい戦略」にかかっている。トランプ氏は、ニクソン政権における国家安全保障問題担当大統領補佐官や国務長官を歴任した超現実主義者のヘンリー・キッシンジャー氏と選挙前より会い、度々教えを請うてきた。キッシンジャー氏のごとき名演出家の存在も「正しい戦略」を左右する。果たして、トランプ氏を操るスティーブン・バノン首席戦略官は名演出家たりえるのか?

 最終的には、トランプ氏が、名将の誉が高く「マッド・ドッグ=狂犬」と畏敬される退役海兵隊大将ジェームズ・マティス国防長官ら合理的判定を下せる専門家の知見に、どこまで耳を傾けるかにかかる。

 和戦いずれにせよ、トランプ氏は「マッドの演技者」として「正しい戦略」を選ばなくてはならない。そうではなく「真のマッド」ならば、北朝鮮の暴走を許し、世界史に永遠の汚名を刻む。

 金正恩氏のみマッドでも、マッド(正恩氏)VSマッド(トランプ氏)でも、わが国にミサイルが飛んでくる。まさか、ミサイル襲来危機時に、国会で森友学園問題の追及を続けているとは思わぬが、国防戦略への思考を停止してきた日本の政治はマッドそのもの。

 特に、左傾した野党は憲政史に名を刻む。「日本国憲法の守護神」としてではない。国民を巻き込み、日本国憲法との無理心中願望を抱き続ける「マッドの中のマッド」として、である。

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