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海南航空集団・王健会長の突然死を巡る黒い噂

2018年07月25日 13時58分31秒 | 国際・社会



背後にチラつく大物政治家たちの利権

 中国最大の民間航空コングロマリット・海南航空集団(HNA)の会長、王健が旅先の南フランス・プロバンス地方の教会で、記念写真を撮ろうと高さ15メートルの壁に上って、転落死した。7月3日のことである。このニュースは、かなり衝撃を持って報じられた。

 その理由の一つは、HNA自体がいろいろといわくつきで、習近平自身やその右腕たる現国家副主席の王岐山がらみの黒い噂の絶えない企業であったこと。しかも、ブルームバーグによれば、昨年末時点で負債総額が推計6000億元にのぼり、事実上破綻しているということ。2月には、中国当局が主だった国有銀行にHNA救済を窓口指導し、政府主導のもとでの再建話が進んでいるということ。

 一方で、HNAはドイツ銀行やヒルトン・ワールドワイドなど名だたる海外企業の筆頭株主で、その海外資産は120億元以上、国内外合わせた子会社は450社以上で、その再建の成否は国内外企業、経済にかなり大きな影響を与えるという意味でも注目されていた。これは単純な事故死なのだろうか。一体HNAで何が起きているのだろう。いや、中国経済界で何が起きているのだろう。一人の民営企業幹部の死から見えてくるものを整理してみたい。

 王健について改めて説明すると1961年天津生まれ。元は民航総局計画局の公務員で、1988年に海南省の出資1000万元をうけて民間航空総局の公務員であった陳峰とともにHNAの前身である海南省航空公司を創立した。その後、海南省航空公司が株式化、中国市場に上場し海南航空集団として事業を拡大していく中でも実務派としてかじ取りしてきたHNAのナンバー2である。

 中国民航大学や中国発展改革研究院で客員教授も務めていた。彼は7月3日昼前、プロバンス地方に視察旅行中、観光名所のボニュー村の教会で記念写真をとろうと、壁によじ登ったのだという。一度登ろうとして失敗し、二度目に登ったときに転落したらしい。地元警察は事故と発表しているが、当然、それを信じない人も大勢いた。というのも、HNAは事実上破綻の危機にさらされ、しかもその組織や株式構成には非常に複雑な大物政治家の利権と黒い噂が絡んでいたからだ。


利権に絡む? 王岐山の親族

 HNAは、すでにこのコラムでも触れてきた(「大物・王岐山の進退、決めるのは習近平か米国か」)ように、王岐山の親族が利権に絡んでいる、と言われてきた。王岐山の甥がHNAの匿名役員であるとか、HNAの過半数株を占める二つの慈善団体・海南省慈航公益基金会と在米海南慈航公益基金会の最終受益者がそれぞれ王岐山と習近平の私生児であるとか、といった話である。

 このネタ元は、北京五輪プロジェクトの黒幕でもあった政商・郭文貴で、今は習近平政権から汚職などの国際指名手配を受けて米国に逃亡中だ。その逃亡先のニューヨークからインターネットを通じて、王岐山の“スキャンダル”をいくつも投じているが、郭文貴情報にはフェイクも相当混じっているといわれ、うのみにするのは要注意だ。

 だが、わずか1000万元の資金でスタートした海南航空が、ジョージ・ソロスを口説き落として出資させ、中国A、B、H市場に同時上場し、新華、長安、山西といった地方航空会社を次々と買収する資金を得て、中国主要銀行がほとんど無審査で6000億元以上の融資を行って、外国企業を買いまくってきたプロセスをみれば、そこに大きな政治権力が介在していたことは間違いない。その大きな政治権力を代表する一人が王岐山であるというのは、HNA創始者の一人、陳峰が、王岐山が農村信託投資公司社長時代の部下であったことを思い出せば、腑に落ちるところでもある。

 だが、このHNAは2017年ごろから、ホワイトハウス広報部長・スカラムッチの所有するヘッジファンドにも買収の手を伸ばすなど、トランプ政権の警戒心を呼んだ。米国メディアは、その株主構成や資金の流れに対してすでにかなり深く取材しているし、米国当局もおそらくHNAに対する調査をおこなっているはずだ。こうした流れを受け、習近平政権は主要銀行にHNAを含む五大民営企業に融資を一時停止するよう指示。この結果、HNAが受けていた6000億元に及ぶ融資は瞬く間に焦げ付き、今年に入ってからは香港やシンガポールの資産の投げ売りが始まっている。

 一方で、習近平政権は今年2月には改めてHNAの“救済”を決定した。これはウォールストリート・ジャーナルが報じている。どうやら安邦保険集団を接収したやり方よりはマイルドなようだが、それでも国有資産管理当局の下での強制的な再編成であり、フィナンシャルタイムズ(7月5日)などは、安邦の事例と並べて習近平政権の民営企業に対する強硬姿勢と論評している。もっと率直に言えば、民営企業の乗っ取りともいえるかもしれない。

 なので、王健の死に疑問を持つ人たちは、ひょっとすると、このHNA再建のプロセスで、隠蔽せねばならないこと、消し去られねばならない証拠があって、王健を邪魔だと考える者たちによって、「自殺」させられたのではないか。あるいはHNA内部の権力闘争、利権争奪戦の過程で王健が負けて排除されたのではないか、などといった謀略小説のようなストーリーを想像するのである。実際、HNA内部の合併がすすめられると、利権争いがおきて、陳峰VS王健の対立が先鋭化していたという話もある。

 HNA内では王岐山と近しい陳峰が立場は上だが、実際の実務は王健がやっている。王健は陳峰を陳総(陳総裁の略)と敬称で呼び、陳峰は王健を王同志と呼ぶ、微妙な関係だ。HNAの負債問題が表面化したのち、対応に奔走していたのは王健だが、陳峰の息子の陳暁峰が半月前に王健の特別助理になった。人によっては、これは王健の動向を陳峰が監視するための人事ではないか、という。この直後に王健が亡くなったということに、なんらかの陰謀を感じる人もいるわけだ。

 郭文貴はこんな謀略説をひろめている。「王健はホワイト・グローブとして王岐山、習近平はじめ多くの党幹部の資金洗浄に関与しており、その証拠である海外口座のデータや担保人、保障人などの記録を保有しているのは、実務担当の王健。HNAは今や中興とともに、米国調査当局のターゲットとなっており、王健が米国調査当局に口を割る前に、亡き者にされたのではないか」。

 殺されたのではなくとも、家族の安全と財産の保障をする代わりに秘密を抱えたままの自殺や、事故死を装った自殺を迫られたのではないか、という説もある。あるいは、巨額の負債に精神を病んでいたので事故死を装って自殺した、とか。

 王健の死によって、彼の持ち株は慈航公益基金会に贈与され、王健の職務は取締役会主席である陳峰が引き継いだ。そう考えてみれば習近平、王岐山の損にはなっておらず、謀略説もありそうな気がする。だが、実務を一手に引き受けていた王健の突然死で、今後難しいHNAの再建がさらに難航しそうだという観測が広がった。


波紋を呼んだ29歳女性の政権批判

こうした憶測が流れる中で、29歳の不動産仲介業者勤務の女性が4日、早朝に上海の海航大廈(HNAビル)前で、「習近平独裁専制の暴政を暴く!」と言いながら、近くにある習近平の宣伝ポスターに墨汁をかけるパフォーマンスを行った。そして、海航大廈を指さして、あれは習近平の資産だ!と批判したのだ。この様子はスマートフォンで録画されて彼女のツイッターアカウントにアップされた。当然、これがなぜ王健死亡翌日に海航大廈前で行われたのか、ということが中国人ネットユーザーの間で噂になった。

 こんな形で習近平批判をすれば、彼女はタダではすまない。インターネットで習近平のことを「肉まん」と揶揄しただけで、ネットユーザーが拘束された例もあるのだ。この女性は同日午後3時半ごろに「玄関の前に制服の一群が来た。私は着替えて外に出る準備をしよう。私に罪はない。罪があるのは私を傷つけた人と組織よ」と意味深な言葉と、玄関前に来ている複数の警官をドア越しから写した写真をツイッターにアップしたあと、このアカウントは閉鎖された。

 彼女が王健と何等かの接点があったのか、なかったのかはわからない。単なる、政権に対する不満の表明に過ぎないのかもしれない。が、多くの普通の市民たちは、HNAの破綻と王健の死と習近平や王岐山の利権に、なんらかの関連があるかもしれないと注目した。

 ところでいったい、習近平政権は中国の民営企業をどうしたいのだろう。鄧小平時代の国退民進(民営化を進め国有企業を整理していく)からの国進民退の逆行は、間違いなく中国経済の活気を失わせている。HNAに限らず、中国の民営企業は、習近平政権になってから受難続きだ。飛ぶ鳥を落とす勢いであった安邦保険集団のCEO呉小暉は汚職で逮捕、起訴され安邦集団は政府に接収された。ハリウッドを買い占めると豪語していた大連万達グループのCEO王健林は政治的にはまだ首の皮一枚つながっているが、グループ資産約2兆円の売却をよぎなくされ、そのあおりで子会社の女性社長と従業員が今年6月に自殺(他殺の線も消えていない)した。


民営経済秩序を徹底破壊か

 習近平の狙いは、紅二代、太子党といった共産党長老の子弟の利権の温床となっている民営企業の再建を建前として、政治的ライバルの利権の接収、および身内への再分配だという人もいるが、放漫財政を取り締まるという名目で打ち出した金融引き締め政策を受けて貸し渋りや貸しはがしにあって、倒産している民営企業には、個人企業家が頑張って立ち上げ軌道に乗せてきた普通の企業も多くある。

 今年、民営企業の社債デフォルト総額は上半期だけで165億元、過去最悪になると予測されている。ちなみに倒産や巨額の負債に追い込まれて自殺した民営企業家はこの2年の間で100人は下らないともいわれている。一方で、企業利益の見込めない一帯一路プロジェクトなどの国家事業や、自らの利権がかかわるHNA再建には、莫大な融資を国有銀行に窓口指導で命じているわけだ。習近平政権がやろうとしているのは中国で育ち始めた民営経済秩序の徹底破壊ということだろうか。

 トランプ政権から習近平政権に仕掛けられた米中貿易戦争によって中国経済は相当追いつめられるという指摘が多いが、私は中国経済を本当に追い詰め、崩壊させようとしているのは、習近平政権自身ではないか、という気がしてきた。

一帯一路を旅するようにアジア~欧州へと伝播する中国への警戒&軽蔑

2018年07月23日 12時35分04秒 | 国際・社会
 ストレスがたまったときは、中国外務省報道官のコメントにじっと耳を傾けるようにしている。すると、あら不思議。怒りが次第次第に収まり、日曜日の夕方5時半の気分へと変化していく。「笑点の大喜利」と同じくらい笑わせてくれるのだ。米国が追加関税を課す22兆円相当の中国製品リストを公表後の11日、中国外務省の女性報道官は定例記者会見でニコリともせず、言い切った。

 「典型的な貿易覇権主義だ。中国は正当で合法的な権益を断固守る。一国主義と多国間主義、保護主義と自由貿易、強権とルールの戦いだ。中国は国際社会とともに歴史の正しい側に立ち、多角的貿易体制とルールを守る」

 「国際社会はともに努力し、一国主義を断固阻止。保護主義に反対し、多角的貿易体制と自由貿易ルールを守るべき。責任ある国の義務だ」

 「各国経済が相互依存し、盛衰をともにしている。時代遅れの『ゼロサムゲーム思考』を固守し、貿易戦争を仕掛けるのなら勝者はいない」

 ここまでしれっと言われると、腹が立つどころか、ヘソが茶を沸かす。報道官の対米批判が全て的外れとは言わないが、中国に批判する資格はゼロ。中国はあるときは経済大国として反り返り、あるときは途上国に成りすまして貿易・投資・金融上の恩恵を強引に引き寄せてきた。

 中国・習近平政権が進める現代版シルクロード=広域経済圏構想《一帯一路》は途上国や債務国のインフラ整備を高利で引き受け、返済不能に陥ると「待ってました」とばかりに国土の一部=特区や港湾を巻き上げる。産業戦略《中国製造2025》計画も、他国の技術を強制的に移転し、知的財産権も飲茶を楽しむがごとく侵害する。 

 4月の小欄は一帯一路を「悪徳サラ金戦略」と表現したが、中国の貿易・投資・金融戦略は自己利益しか眼中にない『ゼロサムゲーム思考』そのものだ。


借金のカタに港湾を巻き上げる「悪徳サラ金」

 例えば、世界規模の金融危機《リーマン・ショック=2008年9月》を各国に先駆けて脱したカラクリ。

 当時の胡錦濤政権は08年11月、総額67兆円もの緊急経済対策を打ち出す。財政出動の柱は高速鉄道の建設加速であった。効果は絶大で、国内総生産(GDP)は底上げされ、V字型回復を達成した。ところが、幹線以外、高速鉄道は赤字路線だらけ。精緻な融資審査などハナから頭にない商業銀行は、大量の不良債権を抱えた。

 でも、中国はやっぱり中国だった。胡政権の後継・習政権は不良債権を、標的にした国々に肩代わりさせるハラだ。具体的には、一帯一路を利用して高速鉄道システムを輸出し、輸出収益で不良債権を減らしていく。

 一見、まともな金融・貿易活動にも見える。しかし、実体は「悪徳サラ金」。すなわち、途上国や債務国に、返済しきれぬ巨額の資金提供と身の丈を超える巨大インフラ計画をセットで持ち掛ける。返済が滞ると特区や港湾をかすめ取る。労働者も中国人が圧倒的多数で、被投資国の雇用に資する案件はわずか。被投資国で中国への反発が高まるや、要人に賄賂を贈り、華僑系の経済人や政治家、果ては留学生まで動員して反中のうねりを封じる。

 麻生太郎副総理兼財務相が昨年11月の参院予算委員会で「(悪徳)サラ金にやられたようなもの」と答弁したほど手口は荒っぽい。現代版シルクロード=一帯一路の美しい響きに吸い寄せられた国々は、次のごとき末路を迎えた。

 スリランカが中国資本を借りて建設した港は経営に行き詰まり中国は昨年、借入金とバーターで99年間の運営権を取得。港は、今後1世紀の長きにわたり「中国の飛び地」と化す。英国は香港を99年租借した後、条約通りに返還したが、中国が契約を守るかどうかは「?」だ。

 インド洋の島国モルディブも1600~2200億円もの大金を借りたが返済が滞り、19年中に中国への領土割譲が待ち受ける。モルディブを構成する島々の多くが地球温暖化→海面上昇で海面下に沈む危機にひんしている苦境も、中国の食指を動かすに十分な条件だった。南シナ海の岩礁を違法に埋め立て人工海上軍事基地を造成し続ける「経験と実績」を、モルディブでも役立てるはず。

 一帯一路とは現代版「植民地主義」に他ならない。従って、ネパールに加え親中のミャンマーやパキスタンなどでも中国主導のインフラ建設計画の延期や中止が相次いでいる。その総額は8兆円に達する。支援の見返りを要求する中国に、不信を募らせた結果だ。

 華人系が25%を占めるマレーシアも然り。中国主導で着工済みだった長距離鉄道事業の中止を5日に発表した。総経費が2兆2100億円を超える見込みとなり、巨額借り入れで財政悪化する事態を避けるべく計画を見直す。

 中止したのは総延長690キロの東海岸鉄道で、首都クアラルンプール郊外~マレー半島を横断しタイ国境とを結ぶ。中国輸出入銀行などが資金調達し、中国交通建設が昨年8月に着工していた。さらに、東部のボルネオ島とマレー半島で、中国企業が着手するガスのパイプライン建設も中止した。


属国化を債務国に強い→経済・政治・軍事を支配

ここで麻生氏の発言を解説しよう。麻生氏は、一帯一路の資金源で中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の運営や融資審査について「カネを借りた方も、ちゃんと計画を立てて返済しないと、サラ金に『取り囲まれちゃう』みたいな話になった場合、元も子もない」と述べた。「『カネを貸した経験のない人が急に貸す』という話。お手並み拝見だ」とも語った。

 AIIBは途上国などに融資する国際金融機関。融資を受け途上国はインフラを整備するが当然、返済が必要になる。通常は返済能力を審査するが、AIIBは国際金融機関経験が無きに等しい。麻生氏は「カネを貸した経験のない人が急に貸す」と指摘したが、いい加減な事前審査に向けたツッコミだった。

 いい加減な事前審査にもかかわらず、「中国系国際金融機関」は払えないとみるや(見越していた?)中国を先頭に取り立てに走り、担保不動産も差し押さえる。これが西側国際金融機関であれば、途上国の潜在力や将来的発展を考慮し債務の減免を行うなど“執行猶予”を施す。麻生氏の「取り囲まれちゃう」は、「借金のカタ」として「領土割譲→属国化」を債務国に強い→経済・政治・軍事を支配する中国の“経済モラル”への不快感を示唆した発言だろう。


欧州の意思決定機関に手を突っ込んできた中国

 皮肉にも、一帯一路を旅するように対中国警戒はアジア~欧州へと伝播した。昨年5月の《一帯一路国際協力サミット・フォーラム》でドイツ/英国/フランスなどEU(欧州連合)一部加盟国が、一帯一路に沿った貿易協力文書署名を拒否した。英国のテリーザ・メイ首相は1月の訪中で、経済関係をアピールしたものの、一帯一路を支持する覚書の署名をしなかった。

 また、EU28カ国の駐中国大使の内27人が連名で、一帯一路を強烈に批判する異例な報告書を作成した。いわく-

 《自由貿易に打撃を与え、中国企業の利益を優先している》

 ドイツ大手経済紙ハンデルスブラット(4月17日付)が入手した報告書によれば、《2013年に明らかになった中国の計画書には『EUが図る貿易自由化に抵抗し、中国企業に有利になるよう誘導せよ』と明記されていた》。 

 同紙は《一帯一路は中国政治・経済の構想と目標の輸出が目的。中国はEUを分裂させ、利益を得ようとしている》と強く非難した。実際、報告書作成に参加しなかった唯一のEU加盟国は、中国投資に依存するハンガリーだった。ハンガリーは昨年3月、北京で拘束された人権派弁護士虐待に抗議するEUの書簡にも署名しなかった。

 EU加盟国の中でも近代以降、今に至るまで中国に兵器や兵器部品を供給し続けていたドイツの対中国警戒が際立つ。

 ジグマール・ガブリエル前外相は2月、ミュンヘンでの安全保障会議で「一帯一路は(シルクロードを旅した)マルコ・ポーロの感傷的回想ではない。中国の国益に貢献する包括的開発を手助けするだけのもの。一帯一路で、自由・民主主義や人権に基づかぬ欧米の価値観に対抗する世界秩序を創ろうとしている。西側主要経済国への挑戦だ」と痛烈にこき下ろした。

 特筆すべきは、ドイツのシンクタンク・メルカトール中国問題研究所とグローバル・パブリック研究所の分析リポートの表現力だ。

 《欧州でロシアの影響はフェイク・ニュース止まりだが、中国は欧州政治の意思決定機関に直接手を突っ込んできた》

 トドメはドイツ貿易・投資振興機関の2月のリポート。

 《一帯一路は不透明な法的枠組みで、政治的不安定国に狙いを付けている。中国国営銀行が後押しするプロジェクトの8割で、中国企業が恩恵を受けた》

 米国も一帯一路国際協力サミット・フォーラムで、米国代表団を率いる国家安全保障会議アジア上級部長のマット・ポッティンガー氏が「一帯一路の受注業者の9割が中国企業」と証言。「中国は透明性の高い競争入札制度を構築し、外国や民間企業を参入させることが急務」だと注文した。

 この代表人事はイケてる。ポッティンガー氏はウォールストリート・ジャーナルの元敏腕中国特派員。特派員時代は、中国公安当局に拘束・暴行されながら「中国の闇」に迫った。記者を辞し米海軍に入り、アフガニスタンなどで従軍経験を持つ愛国者だが、中国には天敵だ。

 かくして、中華人民共和国の「中華」とは「世界の中心」ではなく「自己中心」を意味するのだと、正体にようやく気付いた国々が中国に抱き始めた警戒と軽蔑は高まっていく。

台湾の旗でiPhoneがクラッシュ--中国政府に譲歩したアップルが生んだバグ

2018年07月21日 20時03分28秒 | 国際・社会
 アップルが7月9日に公開したiOSのパッチで、一部のiPhoneで台湾の旗を表示するとアプリや携帯がクラッシュする不具合が改善された。この不可解な現象はアップルが中国の検閲に譲歩した結果だと、セキュリティ研究者は非難している。

TEXT BY ANDY GREENBERG
TRANSLATION BY ASUKA KAWANABE
WIRED (US)

 アップルが7月9日に公開したiOSのパッチで、一部のiPhoneで台湾の旗を表示するとアプリや携帯がクラッシュする不具合が改善された。この不可解な現象はアップルが中国の検閲に譲歩した結果だと、セキュリティ研究者は非難している。

 セキュリティ研究者のパトリック・ワードルは2017年4月、サンフランシスコで開催されたRSAセキュリティカンファレンスに参加していた。
その会期中、彼はサンフランシスコ在住の台湾人の友人にお茶に誘われ、とある深刻な問題に関してワードルの力を借りたいと言われた。彼女のiPhoneが中国にハッキングされているというのだ。


携帯がクラッシュする「死の絵文字」

 元米国安全保障局(NSA)の職員で、アップル専門のハッカーかつ「Digita Security」の創業者であるワードルは、それまでに被害妄想に取り憑かれた友人知人からこうした話を何度も聞いており、本人もだんだんそれを疑うようになっていた。

 しかしその友人に直接会ってみると、彼は奇妙な現象を目にした。何かしらの理由で台湾の旗がiPhoneに現れると、それを表示したアプリが直後に落ちるのだ。

 つまり、彼女に台湾の旗の絵文字を送りつけることで、誰でも簡単に携帯を意図的にクラッシュさせることできる。「わたしが彼女にこの『死の絵文字』入りのメッセージを送れば、彼女の携帯はすぐにクラッシュするのです」と、ワードルは言う。

 それから数カ月、ワードルは絵文字の謎の解明に断続的に取り組んだ。その結果、彼が発見した(そしてアップルの修正の助けになった)のは、あのクラッシュが彼の友人のiPhoneを狙って行われたハッキングではなく、世界中すべてのiPhoneに含まれる検閲機能で起きた意図せぬバグだったということだ。それはまるで中国政府をなだめる試みのようである。

 「つまるところ、アップルは中国の携帯に台湾の旗を表示させないためのコードをiOSに書き加えたのです」と、ワードルは言う。「そのコードにバグがあったわけです」


中国政府に譲歩し続けるアップル

 iOSに中国の検閲機能が加えられたのは2017年初期以降だ。iPhoneの位置情報が中国になると、台湾の旗の絵文字は実質的にiPhoneから消えることになる。絵文字のライブラリーからも消え、画面でその絵文字があるべき場所は「該当絵文字なし」として扱われる。

 件のコードは、中国政府に対するアップルの“好意”を示している可能性が高い。中国政府は過去約70年間にわたって、台湾は中国の一部であり、独立した政府は存在しないとの立場を維持してきた。

 中国国内で台湾の旗を消すのは、アップルが中国政府の独裁に対して行ってきた数々の譲歩のほんのひとつである。たとえば、過去にアップルは中国国内のアップルユーザーのデータを中国のサーヴァーに移動させたり、検閲を避けるためのVPNアプリを中国のApp Storeから消したり[日本語版記事]といったこともしている。

 ワードルは極端なケースにおいて、「台湾検閲」のコードが台湾の絵文字をライブラリ上から消すだけでなく、それを無効入力と判断することがあることを発見した。携帯がクラッシュしてしまうのはそのせいだ。

 どのくらいのデヴァイスがこの影響を受けていたのか。そしてなぜ、クラッシュが一部の携帯でのみ現れたのか。その確実な理由をワードルはまだみつけられていない。しかし、彼はそれがiPhoneの位置と言語設定と関係あるのではないかと考えている。「なぜか携帯が自分がいるべき地域や場所を混乱していたみたいなのです」とワードルは言う。

「一言で言うと偽善」

ワードルは今年6月、この件についてアップルに伝えた。アップルは7月9日にパッチを公開したが、書いてあるのは「メモリ処理を強化し、サービス運用妨害の脆弱性に対処しました」という内容のみだ。
台湾の旗を検閲する機能は、もちろん残っている。またアップルは、検閲の性質やワードルが指摘したバグについての『WIRED』US版の質問には応えなかった。「もしアップルが中国政府に譲歩しようとしなければ、このようなバグはそもそも起こらなかったはずなのです」とワードルは言う。

 台湾の旗によるクラッシュは、セキュリティに対する大きな脅威ではない。さらに、その影響が多数のiOS機器にあったのかも定かではない。しかし、それはすべてのiOS製品に隠れた検閲機能があること、そしてアップルが弾圧的な政府と交渉するなかで利害の不一致を抱えていることを示しているのだと、ワードルは指摘する。

 ワードルはこの検閲への譲歩と、暗号化をめぐる2016年のアップルとFBIの対立を対照的に見ている。当時アップルは政府の要請に反対し、市民の自由を守ろうとする明確なスタンスをもっていた。

 「彼らは『自分たちのユーザーをスパイする気はない』と言います。それなのに、中国が頼めばデヴァイスに検閲機能をつけ、それについて口を開こうとしないのです」とワードルは言う。「一言で言えば、偽善ですね」

姑息な言論テロ『竹田恒泰チャンネル』停止祭りの内幕

2018年07月18日 10時13分37秒 | 社会・政治
 「5ちゃんねる」というウェブ掲示板で5月15日に立ち上がった「YouTubeのネトウヨ動画を報告しまくって潰そうぜ」というスレッドがある。そこには、彼らが攻撃対象とするユーチューブのチャンネルのリストが掲載されていて、ユーチューブへの通報のやり方を懇切丁寧に説明している。

 これは、多くのユーザーが一斉に特定の投稿動画を「差別的」などと通報することで、その動画を削除し、攻撃対象とするチャンネル自体を停止させるという、極めて攻撃的な「政治キャンペーン」である。

 彼らは、3カ月以内に3本の投稿動画が削除されたアカウントを停止するユーチューブのルールを恣意(しい)的に利用し、ほぼ同時期に3本の動画を削除して短期間の内にアカウント停止に追い込む戦法である。アカウントが停止されると、そのアカウントで過去に投稿した全ての動画が一斉に削除される。

 この政治キャンペーンの結果、7月上旬の時点で、既に203チャンネルが永久凍結され、22万本以上の動画が削除されたという。また、彼らの攻撃を恐れて自主的に全部あるいは大半の動画を削除したチャンネルも97あり、合わせると28万本以上の動画が削除されたという。

 それでも飽き足らないのか、攻撃すべきチャンネルを何百も列挙し、どの動画のどの点を攻撃するように具体的な「攻撃指示」を並べている。また、ユーチューブの運営母体が米国のグーグル社であることからか、丁寧にも英語で通報するための例文まで掲載している。

 確かに、表現の自由には限界があり、個人の名誉を毀損(きそん)し、あるいは特定の民族を差別するような不適切な表現は削除されて然(しか)るべきである。

 しかし、どうやらユーチューブは厳密な審査をしていないように見受けられる。その理由は後に述べるが、そのようなユーチューブ側の体制の虚(きょ)を突くような形で、気に入らない何十万本もの動画を削除に追い込んだ。

 そもそも、ネットに個人が投稿した動画で気に入らないものがあれば、見なければよい。もし虚偽や不当な表現があれば、反論すればよい。言論に対しては言論で挑むのが正道ではなかろうか。気に入らない主張をするチャンネルを、チャンネルごと潰すというのは「言論人の暗殺」にほかならず、邪道の極みといわねばならない。

 私がユーチューブで配信していた『竹田恒泰チャンネル』も、彼らの攻撃目標とされ、5月24日未明にアカウントごと停止された。一本目の動画が削除されてからアカウントが停止されるまでの経緯は次の通りである。

 『竹田恒泰チャンネル』の動画一本が削除されたのは5月23日夜のことだった。対象になった動画のタイトルは「韓国外交、八方塞がり・・・。中国の禁韓令に日本の大使召還、アメリカもダメだコリャ。。。」である。

 ユーチューブから届いたメールによると、この動画が利用者から通報されたようで、「審査した結果、この動画はガイドラインに違反していると判断し、ユーチューブから削除しました」という。しかし、「差別的な発言は許可されません」というのみで、この動画のどの表現が「差別的な発言」であるかは不明である。

 同メールによると、これは「1回目の違反警告」だそうで、「ユーチューブでは、ユーザーの皆さまがそうと知らずにポリシーに違反してしまう場合があることを理解しており、警告に期限を設けています。この違反警告は三カ月経過すると無効になりますが、重ねて違反警告を受けるとユーチューブにコンテンツを投稿できなくなり、場合によってはアカウントの停止につながることもありますのでご注意ください」と書かれていた。

 なるほど、1回の違反ではアカウントは停止せず、反省させ、あるいは改善させる猶予を与えるということなのであろう。運転免許の切符制度に似ている。

 ところが、5月24日未明までの間に、別の2本の動画が同じように削除され、「2回目の違反警告」と「3回目の違反警告」を伝えるメールが立て続けに届いた。それぞれ、次のような内容である。

【2回目の違反警告】
 「今回の違反警告は、過去3カ月以内で2回目です。そのため、今後2週間はYouTubeに新しいコンテンツを投稿できません。〔中略〕今後3カ月の間に3回目の違反警告を受けた場合は、お使いのアカウントは停止され、恒久的にアクセスできなくなりますのでご注意ください」

【3回目の違反警告】
 「あなたのアカウントが受けたコミュニティーガイドライン違反警告は、この3カ月で3回になりました。このため、アカウントを停止いたしました。今後アカウントにアクセスすることはできません。また、新しいYouTubeアカウントを作成することもできません」

 1本目の動画が削除されて1回目の違反警告を受けてから、3本目の動画が削除されてアカウントが停止されるまで、わずか6時間程度のことであり、しかも日本時間で深夜から未明にかけての出来事である。朝目覚めて、この2通の通知を目にしたが、なす術もない。

 たとえ1回目の違反警告を受けて、改善を試みようとしても、深夜から未明にかけてほとんど同時に3回分の違反警告を受けたのでは、改善のしようもないではないか。寝ている間にアカウント停止まで進行するのなら、何のための三段階の警告なのか意味が分からない。

 これはユーチューブのシステム上の欠陥である。ほとんど同時になされた動画削除は「1回」と数えなければ、そもそも三段階に分けて警告を発する制度の趣旨は歪められる。

 先述の通り、ユーチューブ自身が「ユーチューブでは、ユーザーの皆さまがそうと知らずにポリシーに違反してしまう場合があることを理解しており、警告に期限を設けています」と述べておきながら、舌の根も乾かぬ内に、深夜の数時間の内に三段階目の停止まで進行するのであるから、ユーチューブのシステム上の欠陥が悪意をもって利用されたことは明らかである。

 一連の削除に至る流れの中で私が感じたのは、ユーチューブは人間が確認して削除作業をしていないということである。

 まず、短時間の内に三本の動画が削除されると自動的にアカウントが停止されるという仕組みであるから、アカウント停止自体は、人間が判断せず、自動的に停止されるものと見られる。

 次に、番組を削除する判断も、果たして必ず人間が確認作業を行っているか疑わしい。この政治キャンペーンでは、何千人ものユーザーが、数百のアカウントの無数の動画に対して、夥(おびただ)しい数の通報を行っていると見られる。この動画一本一本を、日本語を理解する者が動画を見て判定しているとは考えにくい。

 例えば、1カ月に1000人が100件ずつ通報したら、10万件の通報があったことになる。仮に1件当たり判定に3分間を要した場合、その作業に30万分、つまり5000時間を要する。これは、フルタイムの従業員31人が1カ月の間付き切りで作業をしないと捌(さば)けない仕事量に該当する。

 ユーチューブはこの通報ラッシュに対応するために、米国で日本人スタッフを急きょ31人振り分けたのだろうか。恐らく、簡単な日常会話ができる程度の非日本人、あるいは人工知能(AI)に判定させたか、あるいは通報が多い動画については内容を検討せずに自動的に削除したかのいずれかに違いない。

 また、私のチャンネルの場合、3本の動画が削除されたのは日本の深夜帯に当たるため、日本の事務所で日本人が確認作業をしているとは考えにくい。つまり、米国で米国のビジネスアワーに、米国人が作業していると考えるのが自然である。

 具体的にどの箇所がどのような違反に該当するか問い合わせても、ユーチューブから返答はなかった。おそらくアカウントを停止された人が何百人もユーチューブに問い合わせをしているはずだが、それに対応するにはさらに何人もの専用スタッフが必要になる。私の番組のチームがいくら連絡しても、一切反応しないところから、ユーチューブの削除を担当する部署には十分なスタッフが配置されていないと考えられる。

 そもそも、私は特定の民族を差別する発言はしていない。中国や韓国の政府や特定の民族に対して政治批判をすることはあるが、出身民族の差別は絶対していないと断言できる。

 ユーチューブのガイドラインには「悪意のある表現と見なされるかどうかは紙一重で決まります。例えば、一般的に民族国家を批判することは許容されますが、出身民族だけの理由で差別を扇動することが主な目的のコンテンツはユーチューブのポリシーに違反すると見なされます」と明記している。

 私が投稿したコンテンツが、出身民族だけの理由による差別が主目的でないことは、日本語を解する日本人が見れば必ず分かるはずである。もし、AIに判定させていたのなら、そのAIはまだまだ語学能力が低いといえよう。

 結局、私がユーチューブで配信していた『竹田恒泰チャンネル』は、この政治キャンペーンによりアカウントごと停止されたままである。しかし、以前から別に運用していたアカウントがあったため、直ちに『竹田恒泰チャンネル2』を立ち上げて、毎週の放送を継続することができ、事なきを得た。

 また、『竹田恒泰チャンネル』は平成24年11月1日にニコニコ動画で第一回の放送をして以来、毎週放送を続けてきた。後に平成26年4月にFreshとユーチューブでも同時配信するようになり、現在に至る。

 そのため、ユーチューブのアカウントが停止されても、それはいくつもある放送チャンネルの一つが止まるにすぎないため、大勢に影響はなかった。

 それどころか、ユーチューブのアカウントが停止された日の夜の放送では、私のチャンネルと攻撃していた何千人もの反竹田勢力が一斉にチャンネルを妨害しようと、生放送に乱入してきた。

 放送前から2000人以上の人が「Bad」ボタンを押していたが、まだ番組が始まっていないのに、どうやって「Bad」と評価したのか疑問である。普段「Bad」ボタン自体、ほとんど押されたことがないため、この政治キャンペーンに参加した反竹田勢力は少なくとも数千人はいることが明確になった。

 ところが、この日の放送は、反竹田勢力が一斉に流入した結果、平成24年から300回以上放送したなかで、歴代で最も多い視聴者数になり、大いに盛り上がった。

 しかも、番組を見ているうちに、面白くなって番組のファンになってしまった人も多かったようである。「こいつ意外と面白いなぁ」「なんだ、まともなこと言ってるじゃないか」「番組粉砕するつもりでしたがチャンネル会員になります」といった書き込みも相次ぎ、その日は有料のチャンネル会員登録数もかつてない数に及んだ。「ミイラ取りがミイラに」なるとはまさにこのことであろう。

 これだけ会員制交流サイト(SNS)が発達した世の中にあっては、たとえそれが匿名の投稿であっても、正しい言論は必ず評価されるものである。言論の世界で通用しない者たちが、匿名で「言論テロ」を実行したというのが、今回の「ユーチューブアカウント停止祭り」だったのではあるまいか。

 その意味において、この政治キャンペーンの参加者たちは、戦わずして負けていることを、自ら曝(さら)け出したに等しい。「ペンは剣よりも強し」とは言論の力を語った言葉である。日本において、暴力で世の中が動かす時代は幕末の戊辰(ぼしん)戦争で終わった。今の日本は、正しい言論が世の中を動かす、理性ある社会を目指していかなければならない。私たちはこのような姑息(こそく)なテロリズムには屈しない。

事実誤認・ちゃぶ台返し・遅い質問通告…「まっとうな政治」掲げる立憲民主党初の通常国会は旧態依然?

2018年07月18日 07時17分46秒 | 社会・政治
 昨年秋に発足した立憲民主党は「まっとうな政治」を掲げ、衆院選で躍進した。今国会は初めて臨む通常国会だが、蓮舫副代表(50)の事実誤認、辻元清美国対委員長(58)の「ちゃぶ台返し」、そして質問通告の遅れと、前身の旧民主党、民進党と変わらない体質を露呈し、一時は2桁台だった政党支持率も低迷している。

 「自民党に強く申し上げたいが、総理、防衛相、法相、官房副長官が6日夜に不適切な会合をしていた」

 蓮舫氏は15日のNHK番組で、こう声を張り上げ、西日本で大雨が降っていた中で安倍晋三首相(63)らが東京・赤坂の議員宿舎で開いた飲み会「赤坂自民亭」をなじった。

 ここで蓮舫氏はミスを犯した。正しい開催日は「5日夜」。気象庁は5日夜に記録的な大雨になる恐れがあると発表し、6日に数十年に1度の異常な大雨に最大の警戒を呼びかける「大雨特別警報」を発した。5日と6日では状況が全く異なっていた。とはいえ、首相や閣僚は飲み会への出席を回避すべきだった、と結果的には言えるだろう。

 ちなみに5日夜は立憲民主党の手塚仁雄国対副委員長(51)も国会近くで「政治活動25周年感謝の集い」を催していた。枝野幸男代表(54)や手塚氏の盟友の蓮舫氏ら党幹部がそろい踏みし、祝杯をあげていた。

 政府・与党の飲み会と、野党議員の政治資金パーティーを同列に扱うことはできない。しかし、政府・与党を厳しく追及する際に事実誤認や二重基準があれば、せっかくの「まっとうな主張」が色あせる。

 蓮舫氏の残念な言動は、これだけではなかった。15日のNHK番組では「災害救助法では、みなし仮設(住宅)として、マンションや旅館・ホテルの借り上げが可能となっているので、一日も早く施設を借り上げ、希望する方に移ってほしい」と求めた。

 一見まっとうな主張のように聞こえるが、的外れだった。政府は12日の段階で公営住宅など1万7千戸、民間賃貸住宅5万4千戸、800人分の旅館・ホテルを確保し、首相官邸のホームページで公表した。蓮舫氏によれば政府が「施設を借り上げていない」と聞こえるが、そんなことはなかった。民進党代表時代、台湾とのいわゆる「二重国籍」問題を当初は否定し、その後説明を二転三転させて求心力を失った蓮舫氏は何ら変わっていない。

 辻元氏による「ちゃぶ台返し」は、憲法改正手続きを定めた国民投票法改正案をめぐる対応だ。改正案は、平成27年の改正公職選挙法で定めた洋上投票の拡大などの規定を反映する内容だ。この公選法改正は全会一致で可決し、国民投票法の改正案も野党は賛同すると思われた。

 衆院憲法審査会の幹事懇談会は5月31日、与野党筆頭幹事間で6月6日の改正案の国会提出で合意した。ところが同月1日、立憲民主党など野党6党派の国対委員長が会談し、提出を認めないことで一致した。

 辻元氏は会談後、記者団に「何だか急に浮上し、あたかも自民党と立憲民主党などが合意したような報道が流れたが、誤報だ。出すことは認められない」と述べた。しかし5月31日の段階で改正案提出に立憲民主党も含め合意していたことは間違いない。辻元氏らは「現場」の約束をひっくり返したのだ。

 与党は今月22日までの今国会中の成立を目指していたが、残された日数を考えるとかなり難しい。野党の国会戦術としては成功なのだろうが、ちゃぶ台返しは与党に付け入る隙を与え、議論が尽くされずに一方的に法案が成立する事態を招くことにもなりかねない。

 「パワハラ体質」も改まる気配がない。6月25日(月)の参院予算委員会の集中審議をめぐり、立憲民主党は参院で野党第一党の国民民主党の仕切りに不満を爆発させ、22日(金)の午後8時過ぎまで質問者を決めなかった。最終的に福山哲郎幹事長(56)が質問に立つことになったが、福山氏はすでに永田町を離れていて、質問通告は漠然とした内容だったという。

 ある官邸関係者は「夜中から全省庁が作業をスタートさせ、当然徹夜となった」と語る。「野党同士のケンカに霞が関やその家族を巻き込むのはやめてほしい。野党は『働かせ放題になる』などとして働き方改革関連法に反対したが、自分たちはどうなのか」とも訴える。

 官僚の負担軽減や深夜のタクシー代削減などのため、質問の通告は委員会開催の2日前まで(土日はのぞく)に行うのが原則だが、ギリギリまで引き延ばすケースは今も後を絶たない。ちなみに福山氏は5月28日の参院予算委で、首相にメモを入れただけの佐伯耕三首相秘書官を罵倒したこともあった。

 世論も厳しい目を向けている。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が6月に実施した合同世論調査で、立憲民主党の支持率は12・8%となり、今年最低を記録した。NHKが7月6~8日に行った世論調査での支持率は7・5%で、3月の10・2%を最後に1桁台に沈む。この間、産経・FNNもNHKも自民党は常に35%以上の高支持率を維持している。

 立憲民主党は今後も旧態依然の野党路線を踏襲するのか、それとも「永田町の論理」に縛られない新しい野党像をなお模索するのか。重大な岐路に立っている。