Activated Sludge ブログ ~日々読学~

資料保存用書庫の状況やその他の情報を提供します。

●『松下竜一 その仕事20 記憶の闇』読了(1/4)

2008年03月18日 07時59分58秒 | Weblog

松下竜一著、『松下竜一 その仕事20 記憶の闇』読了。河出書房新社、20006月刊。「松下竜一 その仕事」全30巻の内、第二期「本物のノンフィクション」14巻の中の一冊。単行本で読み、本著作集刊行時に読んだので、今回で3回目。いままで、その凄さが理解できていなかった。松下センセはすごい!!

ある特定の日の「「・・・全部を順序良く思い出さなきゃだめなんだよ。・・・刻々に変わる情景を連続的に説明できて、初めてアリバイと言えるんだよ」・・・、いったいそんなことが可能だろうか。・・・それは・・・絶望を意味する・・・」(p.68)。「もうその言葉を幾十度も浴びせられた・・・、アリバイを証明せよ。アリバイを証明せよ。アリバイを・・・」(p.104)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●『松下竜一 その仕事20 記憶の闇』読了(2/4)

2008年03月18日 07時59分06秒 | Weblog
松下竜一著、『松下竜一 その仕事20 記憶の闇』
「密室での取り調べの恐さ」 (p.71)。「人の記憶はそれほどに主観的で不確かで曖昧」(p.72)。元々無かった空白の15分間が、有ったものとして既成事実化 (p.73)。恫喝、巧妙さ、ジレンマ (p.84)、・・・無意識下での殺人の調書。被疑者になり代わっての口述の恐さ (p.86)。誘導 (p.112125)。「ありとあらゆる心理的責苦に追い詰められていった」(p.120)

遺書の焼却などの隠蔽 (p.126)。証人潰しなどの妨害 (p.172)。「同じ事件での再逮捕は許されないとするのが刑事訴訟法の一つの原則である」(p.181) のに、原則破り、異例 (p.191) の事態の連続。異例ずくめの裁判。証人による宣誓なしの証言や、同僚2人の偽証罪のみでの逮捕、検察による証人との不当な接触 (p.226)。その結果として、証人が「誰が聞いても偽証なのだが、宣誓をしていないのだから免責される」(p.230)。それは、園児への「蔑視」(p.238) でもある。「殆ど唯一の物証」(p.249) も偽造に近い。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●『松下竜一 その仕事20 記憶の闇』読了(3/4)

2008年03月18日 07時58分04秒 | Weblog
松下竜一著、『松下竜一 その仕事20 記憶の闇』
家庭訪問の際に、話に涙を流して聴き入ってくれた、子供の小学校の担任の言葉、「人間が道理、真実を見つめる目を失ったら終わり(p.258)信じることだけが目的になってはいけないし、教育者や科学者が二セ科学疑似科学を信奉して、教育してはお終い。

「人の「記憶」について考え込まざるをえない。・・・一人一人の記憶が食い違い・・・食い違い・・・錯綜し・・・人の「記憶」の曖昧さ不確かさに嘆息させられる。・・・「分かりません」「忘れました」「そうかも知れません」といった言葉の向こうに拡がる記憶の闇の不気味さに圧倒される」(p.239)

「清水一行の推理小説『捜査一課長』」問題・・・ (p.180325)
一方、今宿在住だった伊藤ルイさんが松下センセをこの事件に結びつけたよう (p.243255)。裁判の判決に、松下センセはこのルポを出版し、無罪を主張。「どのような判決になろうと、私は彼女の側に立つ(p.261) と言い切る。ノンフィクション作家の生命を賭して。ここで、このルポは閉じられている・・・。

そして、「十三年後の「あとがき」」(p.264)・・・、さらに、1999年にようやくの決着 (p.333)、事件発生から実に25年。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

●『松下竜一 その仕事20 記憶の闇』読了(4/4)

2008年03月18日 07時56分44秒 | Weblog
松下竜一著、『松下竜一 その仕事20 記憶の闇』
センセが、初対面で無実と確信した一因は、仁保冤罪事件の岡部保さんの救援運動に係わった体験による。

出版までの道のりも驚きの連続。「作家は世に多いが、こういう仕事ができる人は、少ない (p.277) 、センセのような。第1章を脱稿した後の、編集者からの驚くべき返事 (p.329)。「四百枚を超える長編ノンフィクションを純文学雑誌が一挙に掲載するなど前代未聞の蛮勇」(p.279) を行い得る剛腕編集者との出会い。センセと剛腕編集者。センセのこの著作集の企画者でもある。

初対面の際には、センセのことなどおそらく知らなかった彼女から、「「記憶の闇」が一挙掲載された・・・その夜・・・「泣いて読んでいます」という涙声の電話が」(p.331)

「彼女がこの国には冤罪事件があとを絶たないのか・・・無責任体質に行き当たった・・・。・・・「無答責」・・・。・・・無責任体質の最たるものとして、侵略戦争の責任を負わなかった・・・見据えるのだ」(p.334)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする