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『牧野内大臣、関屋宮内次官、東久世内匠頭等の大逆不敬事件』 (1926.5)

2012年08月26日 | 二・二六事件 3 回顧、北一輝他

 牧野内大臣、関屋宮内次官、東久世内匠頭等の大逆不敬事件 (以印刷代謄写)

 牧野内大臣、関屋宮内次官、東久世内匠頭等の大逆不敬事件。
 宮中巨頭が赤化共産党と結托せる大逆不敬事件。-莫大なる賄賂の為めに皇室財産を盗窃せる、故松方正義、牧野伸顕等の犯罪事件等ー全国の同志死を決せよ。

 全国の同志に告ぐ。同志各其の率ゆる所の系統、各其の属する所の団体結社に告げよ。
  田中山梨等帝国陸軍の中枢に蟠居して数百万円の窃盗を働いた『陸軍機密費事件』にも驚いた。三大政党といふ暴力団詐欺横領団体が各五十万円八十万円三十万円といふ大泥棒を仕組んだ『松島遊郭事件』にも愕いた。まさかと思つた者でも晴天白日に晒された正体を眼前に見せつけられては今更の如く呆然としたのである。暗夜を幸ひとして横行跳躍せる百鬼千魔が今一整に旭日の光明に照らされて其の化けの皮を剥がれ正体を現はしたのである。
 同士に告ぐ。 吾々三十八名の者が責任を明かにし官憲の迫害を覚悟して今茲に摘発糾明せんとする大逆不敬事件に至ては殆ど信ずるにも信じかぬる程『恐れ多い』事実である。
 難波大助が出た時に、朴烈が出た時に其他幾多の皇室の御一身御一家に係はる不敬事件大逆事件が現はれたる時に吾々も全国民も否、彼等自身天子皇族に奉仕する者が常に言ふのである。-日本人として斯る心事皇道は信ずることも想像することも出来ないと。吾々が幾人かを往来せしめ事実の確かなる證據書類等をシカと吾々共の手に握るまでは假りにも天子皇族の御身命御財産に人一倍の重責ある身分を以てして、あらうことか皇室の御財産を持出して赤化共産党のシタタカ者に生活費遊蕩費を貢いだり、賄賂を取るに事を欠いて其の御財産を二束三文に処分させるなど、実は半信半疑であったのである。共産党が宮中の大巨頭と結んで其の運動費を皇室財産其者からセシメたり、大官巨頭亦悪家老か悪番頭の如く八十万両の賄賂の為めに主家の田野山林を噛ぢって平然として居る。聳雲摩天の楼閣長城ロマノフ王朝も其実外部からでなく皇室内部の白蟻に依りて腐朽し尽されて居たからの滅亡であった。難波大助を憎むならば牧野伸顕を、朴烈夫妻を怒るならば則ち関屋東久世を怒り憎むべきである。
 全国の同志よ。 吾々は陸軍機密費事件に於て其の犯罪者が大臣大将なるが故に吉例によりて不起訴に終りつゝあるのを見た。又松島遊郭事件に於ても大官巨頭や総裁閣下の階級に向っては法網を免れる申合せ證據煙滅の余裕を與へるために、一面笛太鼓で世間の耳目を聾しつゝ其裏では一切を揉み消しさんとする奇術師の芸当が行はれつゝあるのを見て居る。これも吉例によりて不起訴、免謝、證據不十分で終結しやう。然り。詐欺泥棒をしやうと人殺しをしやうと犯人が大官巨頭であらば悉く治外法権で不可侵権の範囲であるとする現行法律と現在の司法官の下に於て、-吾々が牧野関屋東久世等を監獄に繋がうと企図するなどは明かに空想である。特に現内閣に取りて或は恐らくは今後の内閣争奪者の凡てに取りて、内大臣牧野伸顕の恐しさ有難さは十人の田中機密費君三十人の床次遊廓閣下にも値する治外法権の者不可侵権の者であるからである。
 一例が牧野内大臣の汽車旅行の風を見ても分る。停車場毎に七八名の警官が直立不動挙手の最敬礼を以て停車から発車までを立ち尽して居る。乗客目を見張り耳に咡 ささや きて何の宮様の御乗りかを相問ふのである。皇族のみの受けらるゝ警戒と最敬礼とを如何に感謝を表はし媚を献ぜんが為めにしても、これを敢てする現内閣も卑しむべきであるが、平然として此の不敬を嘉納する牧野の僣上沙汰に至ては言語道断ではないか。是れ維新以来の元老なる者今や一人残れる西園寺公爵だけとなったが故に、而して内閣授受の時公爵一人が責任の矢面に立つを憚かるに至たが故に、肥大豚の如き牧野伸顕を礼するに皇族の儀礼を以てするのである。咄!出入往来皇家に擬するに至て蘇我の入鹿は其の居宅を皇居に擬し其の子女を皇子王孫に擬した!内閣争奪者の上に権力富貴を與へ権力富を奪ひ得る者として将に第二大御所たらんとする彼牧野に対して、牧野あるが故に内閣を惠まれた今の若槻内閣の下に於て、彼を拘禁問罪する如きは(仮令政府党の長老箕浦は犠牲にし得ても)若槻総理江木法相に取りて夢想だになし得ざる大不敬罪である。彼の道途が皇族の礼遇である如く彼の失態も彼の犯罪も皇族と同一なる不可侵権の範囲内に置かるゝのである。申ずも畏こし。 皇室の御中から紫宸殿上奸臣を斬るの宝剣閃めかざる限り、吾々は法律を以て彼等逆徒の上に刑罰を課ずることに絶望して居るのである。正義の絶望、国家生命の望絶である。
 否、吾々には絶望が無い。豚児二三頭、男児の大決心の前に何等の妨げをなし得るものぞ。
 先づ、吾々に報告せられ吾々が更に調査挙證せる事件から説述しやう。

 第一。-無政府共産主義者に皇室御料地を払下げたる事情。-関屋宮内次官、東久世内匠頭と元労働総同盟幹部杉本彌助との結托。

  〔省略〕

 第ニ。-賄賂八十万円の為に皇室御料地を払下げたる事情。-故松方正義、牧野前宮内大臣、市来前大蔵大臣等の大逆犯。

  〔省略〕

 大正十五年 〔一九二六年〕 五月 血盟同志代表 東京市芝区南佐久町1丁目三番地 馬場園義馬

 この小冊子の発禁処分は、大正十五年 〔一九二六年〕 六月十二日。活版、21.8センチ、25頁。

 なお、斉藤昌三編の『現代筆禍文献大年表』によれば、この怪文書とともに、宣伝印刷物一枚も添付頒布された。

 〔大正十五年〕八月 宣伝印刷物 一枚 (安)

「盟友西田税君の拘禁せられたるに奮起し(牧野、関屋、東久世の大逆不敬事件)なる此の文書を小生責任に於て配布します」云々と記載せるもの 大正十五年八月十三日 馬場園義馬(右は去る六月十二日禁止せる「牧野内大臣関屋宮内大臣久世内匠頭等の大逆事件」と題する冊子に特に添付頒布したるものなり)



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