北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

「現時点では」規制委追随 第30回口頭弁論

2020-07-14 | 志賀原発廃炉訴訟


8カ月ぶり、かつ裁判長交代の中で迎えた志賀原発差止め訴訟(金沢訴訟)第30回口頭弁論は、最後に裁判長が「現時点では平成30年3月26日に(前裁判長が)示した方針に沿って進める」という、ある意味驚き、ある意味落胆の審理方針を示す中で閉会した。
「現時点では」という枕詞を付けてはいるが、当面、「規制委員会の審査会合の判断を待つ」という規制委追随、司法の思考停止・責任放棄を継続するということだ。
以下、昨日(7月13日)の口頭弁論を振り返り、紹介する。

第30回口頭弁論は、元々は3月5日に予定されていたが、コロナで延期となり、7月13日の開催となった。
昨年11月21日以来となる。
県内感染は21日連続確認ゼロとなっているが、当然ながらコロナ対策下での開催である。
金沢訴訟はこの間、基本的には裁判員裁判も開かれる金沢地裁で最も広い205号法廷を使用しており、今回も205号法廷での開催だが、コロナ対策のため一般傍聴席は約3分の1の23席に削減されての開催である。
「せっかく行っても傍聴できないかも」と「自粛」された方もいる中ではあったが、整理券配布前には定員の約2倍の人が傍聴券を求めて列を作った。並ぶ場所は、屋根はあるが建物の外である。
法廷入り口にはもちろん消毒液が置かれ、口頭弁論の予定時間は約1時間半といつもより長いため、間に5分間の休憩を2回入れ、法廷内の換気をおこなう慎重さである。



この春に加島裁判長はじめ3人の裁判官が移動し、今回は山門優裁判長ら新しい裁判体の下での初めての開催である。
山門優裁判長の移動履歴はこちら。ちょっと気になる)
まず弁護団から、裁判長交代を受けて更新弁論が行われた。
最大の争点である活断層問題について記述した第56準備書面について、宮本弁護士が要約陳述をおこなう。
柱は2本で、まずはS-1断層,S-2・S-6断層について「活動性は否定できない」とした有識者会合の評価書の内容についてである。
「地震の素人」の裁判長でも理解できるよう地図や図面、イラストなどもふんだんに盛り込んだパワーポイントを使ってわかりやすく解説していく。
2本目の柱はこの評価書が提出された後の原子力規制委員会の4年間にわたる審査会合の経過と内容についてである。前裁判長が審査を見守るとした審査会合の実態を以下の5つの観点から暴いていく。
・新規制基準の内容、運用について → 施設直下の断層は、12~13万年以降に動いていないという明確な証拠が必要
・審査における有識者報告書の位置付けについて → 「重要な知見」として扱う
・追加調査の有用性について → 特にS-1については旧A・Bトレンチの原子炉側で活動性を否定する明確な証拠が必要
・評価対象断層の限定について → 断層数を絞り込みを狙った北電と広げたい規制委との攻防
・北電の説明・根拠不足、資料不足などについて → 専門的審査に入る以前の問題。審査遅延の最大の原因。
先週金曜日には評価書提出後12回目の審査会合が開催されているが、いまだ最終的な評価対象断層すら確定していない。
「線路は続くよ、どこまでも」ではないが、まさに「審査は続くよ、いつまでも」の状態で、当事者である北電すら審査終了時期は皆目見当がつかず、このような「審査会合を見守る」とするこの間の裁判所の方針を批判し、適切・迅速な訴訟進行を求めた。

ここで5分間の換気休憩が入る。
再開後、弁護団事務局長の中田弁護士からこの間の訴訟の流れ、特に結審に関わる動きについて説明し、民事訴訟である本件は規制委の審査を見守り続けることなく、原告の身体、生命に危険が及んでいるか否かを判断にすべきと訴えた。



続いて原告の意見陳述。
今回は県教組執行委員長の谷内直さん。3月の口頭弁論での陳述をお願いしたときは県教組「書記長」。スライドして今回の陳述となったが、4月から県教組「執行委員長」である。
16歳のグレタ・トゥーンベリさん国連演説、そして1992年のリオの国連会議でのセヴァン・スズキさん(当時12歳)のスピーチを引用し、子どもたちに対する私たち大人の責任を熱く語った。
ここでいう「大人」には言うまでもなく裁判長も含まれる。
陳述の間、まっすぐ谷内委員長を見つめ、耳を傾けていた山門新裁判長の胸に響いたと期待したい。

ここで2回目の換気休憩。
再開後、北電代理人からは7月6日付けで提出されている「訴訟進行に関する意見書」について説明が行われる。
ポイントは、
・規制委員会の判断が重要な基礎事実とされている 
  → 福井地裁・樋口判決を覆したH30.7.4名古屋高裁金沢支部判決を根拠にするが、そもそも本件訴訟は民事訴訟である
・適合性審査は着実に進展している
  → 遅々として進まない実態は宮本弁護士の陳述でも明らか。そもそも適合性審査を待つ必要もなし
・評価書に依拠した審理判断は相当ではない
  → 「重要な知見」との規制委の認識をいまだ被告は認めていない
・他の原発の民事運転差止め訴訟も、適合性審査の状況を踏まえ、審理が継続されている
  → 差止め判決や、規制委の審査の不十分さを指摘した差止め仮処分の決定も出ている
・志賀原発は停止中で運転が差し迫っていないので、運転による原告らの具体的危険の切迫性の要件は満たしていない
  → 運転が決まるまで裁判は差止め訴訟は起こせないというのか
以上から、仮に早期の判断を求めるのなら請求棄却の判決をすべきだが、まずは規制委の適合性審査を踏まえた審理が尽くされるべきであるとした(赤字は北野コメント)。
さらに先週金曜日の規制委員会の審査会合にも触れ、これから本格的な審査がスタートするとの認識を強調した。

以上の予定されていた陳述が終わったところで、山門優新裁判長が「今後の審理方針ですが」と切りだし、冒頭にも記載したように、この間の審理方針を維持する方針を明らかにした。
岩淵弁護団長が「このまま待ち続けるのか。『現時点』とのことだが、どう言う条件がある変わるのか」と認識を問いただしたが、山門裁判長はあくまで「現時点」での方針と繰り返すにとどまった。

最後に次回期日を11月5日(木)14時からと決め閉廷。



閉廷後、北陸会館で蜜を避けての報告集会。
新裁判長は今日の時点では審理方針を明示せず、次回に述べるのではとの予測もあっただけに、やや戸惑いの声もあったが、いずれにしても早期の結審・判決を求めていく方針に変わりはない。
新裁判長に対して結審をどのように迫っていくか、原告・弁護団は今後、協議していくことになる。



今回原告が提出した第56準備書面、被告の「弁論更新にあたっての意見書」は近く原告団HP裁判資料(金沢)にアップ予定。

今後の裁判日程。
金沢訴訟 11月5日(木)14:00~ ※傍聴人数などは未定
富山訴訟 9月14日(月)11:00~ ※傍聴人数などは未定

当面の原告団街宣日程
7月16日(木)10:00~ 羽咋郡市地区
8月 5日(水)10:00~ 七尾・鹿島地区

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