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Civilizations and Impressions

文明と価値18(新しい学問と新しい憲法)

2023-02-19 08:12:56 | 論文

 一方で新しい学問とは、新しい民主主義とも関係があるが、「技術的効率力と社会構造力の落差を埋めるような学問」がその中心になってくるのではないかと思われる。

 それは別の角度から見ればAIの発展に対抗できるように、人間の知が結集できるような仕組みを作ることかもしれない。そうしたものの一つとして政治、行政の首都とは別の意味において「学問の首都をリアルとヴァーチャルを結合させて創出する」というようなことも考えられるだろう。

 あるいは国際機関としては地味な方ではあるが、日本には国連大学の本部がある。国連大学をさらに充実させて、政策の基礎となる学問を形成していく場となれば、日本の国際的な価値を高めるであろうし、国際的にも意味のあることかもしれない。世界から日本に優れた人材を集める契機にもなることだろう。

 

 新しい学問というとニューエネルギーやバイオテクノロジーあるいはそうした新しい科学の融合の方が注目されている。しかし今回の第2次大産業革命の中心にくるものは「頭脳の機械化」である。そしてその背後には、科学技術の発展に対して相当遅れをとっているであろう社会科学の進化の問題があるのではないだろうか。社会科学に総合性や特に力学の要素を採り入れることが重要であろう。社会科学と自然科学の発展の速さに大きな差が生じてきた大きな原因の一つが力学の考え方をとりいれたかどうかにあったように思われるからだ※。力学は古典力学から量子力学に発展し、その他の学問にも多大な影響を与えてきた(物理学帝国主義ともいわれてきたが)。

 

※社会科学と自然科学の発展の速さに大きな差が生じた大きな原因の一つが力学の考え方をとりいれたかどうかにあったように思われる

 社会科学においても力学的な考え方をとってきたように思われるジャンルも実は存在する。経済学がそうであろう。経済学でいうところの経済成長率、金利、物価、投資、貯蓄といった概念は数値、量としてとらえられてきたが、こうした概念は一つの力としてとらえることもできたのかもしれない。確かに経済学、特に古典派経済学は社会科学のジャンルの中で物理学帝国主義と同じような役割を果たしてきた。これには劣るかもしれないがマルクス経済学にも古典派経済学とは異なった力学が背景にあった。物理学の世界においても、統計学がその一角を占めるようになってきたが、統計学にその基礎を依存しなければならない社会科学においてもこのことは何らかの示唆を与えるものかもしれない。ある意味、物理学も偏った一つの世界観であるように、経済学も偏った一つの世界観にすぎない。しかしその世界観を現実の世界に実現しようとしたことこそグローバリズムだったのではないだろうか。そういう意味で我々の住む21世紀は共産主義が強い力をもっていた20世紀に引き続いて、今までのところ経済学帝国主義の時代であったといっていいだろう。それを克服するものとして「文明学」の時代が起こるのではないだろうか。

 

 このように、新しい民主主義、新しい学問が台頭してくるとしたら、今までの憲法改正論議だけではあまり意味がなくなる※1のかもしれない。ここらへんは他の国の動き※2も注視しておく必要があるだろう。

 

 ※1今までの憲法改正論議があまり意味をなさなくなる

 今までの憲法改正論議は日本の独立性、主体性を高める形で検討されてきたが、統治主体と国民の関係が間接的、意識的な民主主義から直接的、無意識的な民主主義に変わることが憲法改正の中心的な論点になってくると思われるからだ。そうした民主主義の理念のどちらをとるかによって平和主義の考え方にも影響があることだろう。大きくは平和という理念をとるのか、すでに大量に蓄積された海外資産(これは国内の財政状況と深い関わりがあるが)の防衛をとるのか、こうした戦前にも通じる問題も民主主義のフィルターの種類によって答えは変わってくることだろう。

 

※2 他の国の動き

 このような直接的、無意識的なアプローチを強権体制下で、構築していこうと意識的にやっているのが中国である。ただ中国は共産党支配という前提で進めているので、この新しい民主主義が技術的に可能になっても、強権支配の道具として利用される危険性が当然あるわけである。こうした理由のため、分権化という意味においてAIと対抗関係になる学問の府のようなものの新たな設置が考えられるわけである。価値が偏った一つの党にあるのか、価値が学問の府にあるのかということであるが、学問の府といっても現在の状況では不完全さが残る。あるいは現在の間接的な民主制も、部分として残っていくことも予想されるだろう。三権が分裂し、四権、五権分立になっていくわけである。

 

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