Yesterday never knows

Civilizations and Impressions

文明と価値14(日本の漂流と第4次産業革命)

2023-01-29 08:32:15 | 論文

    現代日本は外部力の影響のため、文化的思想を江戸時代ほどには明確化できずにやってきたし※1、現代の新学問も、かって江戸時代に西洋の学問が当時そうであったようには明確化されていない状況なのであろう。したがって現代日本は江戸時代と比べても、文化的に、学問的に不明確、曖昧な状態の中で応戦してきた状況※2といっていいかもしれない。応戦するための道具が定まっていない、このため日本は漂流しているように見えるのではないかというわけである。

 

 ※1 現代日本は文化的思想を江戸時代ほどには明確化できずにやってきた。

    江戸時代は鎖国の影響もあり、比較的シンプルな形、あるいは土着的な形で文化的思想は変化してきたと思われる。それに対し、第二次世界大戦より前の時期はヨーロッパ、第二次世界大戦より後の時期はアメリカ、ソ連の影響もあり、複雑な形、理念的な形で文化的思想は変化してきた。このため文化的思想は江戸時代のようには明確化されることにはならなかったし、現在もまた舵が取れないで漂流しているような状況といえる。現代の日本が明治維新のようにはならないできた理由の一つである。このことは現代日本が明治維新とは異なる形で改革が行われることを予想させているのかもしれない。

 

※2 現代日本は江戸時代と比べても、文化的に、学問的に不明確な状態の中で応戦している状 況

    江戸時代の幕末には、西洋科学が文化的に、学問的に新しい明確な形で方法論としてあった。文化的には後に後退していくが、科学技術の有用性が比較的明確に判明しやすいのに対して、文化、社会科学の有用性は明確に判明するわけではない。それにもかかわらず、現代においても西洋のそれに依存しすぎているところが多いのではないかと思われる。

 

    日本の漂流は次にきている「第4次産業革命の本質が何であるか」という問題とも深く関係してくることであろう。AIや新エネルギーがもたらす新しい価値もあるが、「社会的構造力と技術的効率力とのギャップ(落差)を埋める」※という場面において、来るべき第4次産業革命の最も重要な意義があるのであり、新しい価値の創造が行われるのではないかと思われるからだ。

 

※ 社会的構造力と技術的効率力とのギャップ(落差)を埋める

 社会的構造力とはある価値に基づいて、社会組織の発展によって生活を改善していく力のことであり、技術的効率力とはある価値に基づいて、技術の発展によって生活を改善していく力のことである。そして価値には広がり、すなわち価値空間がある。技術的効率力の前提にあるものは、自然科学であり、この自然現象を把握する方法論は確実な発展をとげてきた。情報科学、物理学、生物学他さまざまに発展をとげ、それらがクロスオーバーしていく段階に達しつつあるように思われる。しかしこうした自然科学の発展の根底にあったものは何であったのだろう。それは力学(物理学)だったのではないだろうか。力を数字で表現し、利用することによって、生産や移動の能力が大きく高まった、あるいはまだ高まろうとしているといえる。このことは「物理学帝国主義」ともいわれていた。そうした技術的効率力の急激な発展に対して社会的構造力ははたしてついてきたといえるのだろうか。社会的構造力が対象とする分野は政治と行政それに企業組織を含めて考えることができるかもしれない。社会的構造力が技術的効率力より劣っている理由の一つには、それが力学的表現に適していない分野と考えられていたからであり、必ずしもそのような形で構築されてこなかったからのように思われる。

 

 マックス・ウェーバーは近代化の概念として経済については資本主義、政治・行政については民主主義や官僚制を挙げていた。しかしある意味で資本主義の方が数値化され、多分に力学化(金利、物価、経済成長率も数量で表される、これらがある種の力と、とらえれるとすれば)されてきたのに対して、民主主義や官僚制の数値化は難しかったこともあり、それほどの進化は遂げてこなかった。また民主主義と官僚制はしばしば衝突してきたし、いまだに衝突しているともいえる(縦割りの度合いなど特にそうかもしれない)。そうした状況下で、ここへきて民主主義と官僚制が技術的な観点においても数値化が行われ、力学化される可能性が見えてきた。情報化、AI化がそれを可能にしつつあるからだ。

 

 それに対して、外面的な価値については、挑戦の内容を理解することである程度、新しい価値の内容を推定することはできるのかもしれない。現在、日本の抱えている外面的な問題は大まかには以下のとおりだろう。

 

   挑戦の内容

 1 高齢少子化

 2 財政赤字化

 3 新産業革命

 4 自然災害の可能性(地震、コロナ、温暖化)

 5 外交・軍事 アメリカと中国の対立

 特に考えられるべきはこの五つであり、それらの外面的な意味についてそれぞれ検討していこう。

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