忘れられない思い出が、ある。
コペルニクスは、桜の咲き始めの季節だった。
父の命令で、母と移住した。
しばらくして、母が「友達が近所に住んでいた」と大喜びで帰ってきた。
母の友人といえば研究者仲間かと思ったが、そうではなく今は専業主婦だという。
そこに自分と同い年の息子がいるらしいから会いに行こう という話には、正直戸惑った。
同年代の子供とは、話をしたことがない。
父の仕事の関係でのパーティではいつも大人の相手ばかりしてきたから、同年代の子供にどう接していいかわからなかった。
無理やり連れて行かれたのは、本当に徒歩数分の一軒屋。
『Yamato』という表札からして、日系。
日系人にはあまり会ったことがない。
チャイムを鳴らすと出てきたのは、ふんわりとした雰囲気の女性。
玄関先できゃあきゃあと盛り上がり、母は思い出したように
「うちの息子。アスランよ」
と紹介してくれた。
すると女性は「ちょっと待って」と奥に声をかける。
「はーい」と元気のいい返事が聞えてきて(少々舌ったらず)、出てきたのは
「うちの息子。キラ、ご挨拶は?」
母親のの足に隠れるようにして出てきたのは
「キラ・ヤマト・・・です」
すみれ色の瞳の・・・・・オンナノコ?
コーディネイターは、脳の発達が早い。
ゆえに言語の発達も早いはずで、キラはコーディネイターで、しかも自分より半年近く早く生まれているというから、もっと言語が発達していてもおかしくないはずなのに
「えーと、あしゅらん?」
「違う。アスラン」
「んー?」
リビングで隣同士お菓子を摘んで、何度レクチャーしても、キラはうまく名前を発音してくれなかった。
「おともだち?」
「・・・まぁ、そうなる、かな?」
「おともだち、いや?」
「嫌じゃないよ。ただ、慣れてないだけ」
「?」
「あー・・・わかんないならいいよ」
投げやりになっていなかったかと言われれば、否定はできない。
なし崩しに、俺たちは友達になった。
数年経てば「友達」兼「幼馴染」。
そうしていつからか、括りは「親友」になった。
キラは人見知りをする子で、俺もあまり徒党を組むのがキライで、自然と会話は二人でするものになった。
とはいえあたりさわりのない程度にクラスメイトとは会話をするし、ときには女の子から手紙をもらったりした。
そのたびにキラは不機嫌になり、その機嫌取りが大変だったのは忘れたくても忘れられない記憶の一つだ。
やさしくしてやれば喜び、甘やかせば甘えてくる。
いつしかキラは俺に依存ともいえるような頼り方をするようになっていったが、それは嫌ではなかった。
むしろ嬉しい。
なにかしてやるとはにかんだ笑顔で「ありがとう」と照れたように言う。
その顔が、大好きだった。
別れの時。
最後に見たのは、涙ではなく、なにかもの言いたげな目。
でもキラの口からは、なんの言葉も出なかった。
あのときキラは、何を語ろうとしたのだろう。
「キーラぁ」
「んー?」
つらつらそんなことを思い出していたら、ベッドサイドの時計が日付の変更を知らせた。
「日付変わったよ」
「あ、じゃあ乾杯しよう!」
人の膝を枕にしてテレビを観ていたキラが、がばりと身体を起こす。
俺たちは大人になった。
まだ子供の年で人を殺し、キラとも殺しあった。
何度も何度もすれ違った。
すれ違って、喧嘩して、それでも一度もキラのことを嫌いだと思うことはなかった。
むしろそのたび愛しくなっていって。
「シャンパンとワイン、どっちがいい?」
「赤? 白?」
「赤」
「じゃ、それ」
はーい と、今ではしっかりとした活舌で返事をして、キラは乾杯の支度をする。
「僕開けるの苦手」
「貸して」
キラからワインの瓶を受け取れば、俺の好きな銘柄。
「キラ、これ苦手なんじゃないのか?」
「いいの。アスランのお祝いなんだから」
子供の頃はほとんど同じものを食べていたけれど、成長すれば味覚も差が出る。
特にキラは、好き嫌いが激しい。
「明日どっか行く?」
「デートしたいのか?」
「プレゼントは明日の朝渡すけど。アスランなにかしたいことある?」
グラスの端を合わせて、一口飲んで
「キラと一日いちゃいちゃしたい」
正直に言うと、キラは真っ赤になって「ばか!」とそっぽを向いた。
昔なら「一日いちゃいちゃ」というとべったりくっついて行動するだけだった。
それが別の意味になったのは、俺たちが大人になったから?
「キーラ。俺、誕生日」
にじり寄って耳元に囁くと、ますますキラが赤くなる。ああ、耳まで赤い。
「・・・いちゃいちゃ、だけ・・・ね?」
「それはどうかな」
「なんで!」
「それは俺が大人になったから」
しれっと返すと、キラはこちらを伺うように振り向いて
「・・・大人っていうか、やりたい盛りの学生みたい・・・」
言うようになったな、こいつ。
「大人になったっていうなら、もうちょっと自重しようよ」
「まだ枯れてないもので」
「アスラーン」
ワインを継ぎ足して、つまみのチーズを口に放り込んで
「で? 覚悟は?」
意地悪く訊けば
「・・・イヤじゃない」
わかりきった返答。
「キラも若いな」
「人を年寄り呼ばわりしないでよ! 同い年じゃん!」
「普段半年の差を強調してるの誰だ?」
「うー」
いつまでも子供っぽいキラも、かわいいのだけど。
「せっかくバースディ休暇取ったんだ。めいっぱい有効に使おう」
自分のグラスをテーブルに置いて、キラのグラスも奪い取って
「大人の楽しみ方でさ」
まだ赤い顔をしたキラの唇を、そっと塞いだ。
おまけ
「ブルーチーズ不味いー!!」
「なんで嫌いなものを用意するんだよ!」
「うぇ、キモチワル・・・」
「酒弱いんだから無理して飲むな!」
「ちょ、無理・・・」
「キラ! 吐くなら洗面所かトイレ!」
「うー・・・・」
というわけで、アスランBDでーす!
最近放置気味ですいません・・・。
なんか不幸な主人公役の子とお馬鹿な主人公の子、そして赤の人と黒の人に萌えが爆発してまして(人、それを浮気という)
でもアスランのことは忘れてないよ! 愛は不滅だよ! たぶん!(ぇ
おまけでキラさまがゲロってるのは別にわんこそば180杯を見た後書いたからってわけじゃない。決して! ええ、決して!!
コペルニクスは、桜の咲き始めの季節だった。
父の命令で、母と移住した。
しばらくして、母が「友達が近所に住んでいた」と大喜びで帰ってきた。
母の友人といえば研究者仲間かと思ったが、そうではなく今は専業主婦だという。
そこに自分と同い年の息子がいるらしいから会いに行こう という話には、正直戸惑った。
同年代の子供とは、話をしたことがない。
父の仕事の関係でのパーティではいつも大人の相手ばかりしてきたから、同年代の子供にどう接していいかわからなかった。
無理やり連れて行かれたのは、本当に徒歩数分の一軒屋。
『Yamato』という表札からして、日系。
日系人にはあまり会ったことがない。
チャイムを鳴らすと出てきたのは、ふんわりとした雰囲気の女性。
玄関先できゃあきゃあと盛り上がり、母は思い出したように
「うちの息子。アスランよ」
と紹介してくれた。
すると女性は「ちょっと待って」と奥に声をかける。
「はーい」と元気のいい返事が聞えてきて(少々舌ったらず)、出てきたのは
「うちの息子。キラ、ご挨拶は?」
母親のの足に隠れるようにして出てきたのは
「キラ・ヤマト・・・です」
すみれ色の瞳の・・・・・オンナノコ?
コーディネイターは、脳の発達が早い。
ゆえに言語の発達も早いはずで、キラはコーディネイターで、しかも自分より半年近く早く生まれているというから、もっと言語が発達していてもおかしくないはずなのに
「えーと、あしゅらん?」
「違う。アスラン」
「んー?」
リビングで隣同士お菓子を摘んで、何度レクチャーしても、キラはうまく名前を発音してくれなかった。
「おともだち?」
「・・・まぁ、そうなる、かな?」
「おともだち、いや?」
「嫌じゃないよ。ただ、慣れてないだけ」
「?」
「あー・・・わかんないならいいよ」
投げやりになっていなかったかと言われれば、否定はできない。
なし崩しに、俺たちは友達になった。
数年経てば「友達」兼「幼馴染」。
そうしていつからか、括りは「親友」になった。
キラは人見知りをする子で、俺もあまり徒党を組むのがキライで、自然と会話は二人でするものになった。
とはいえあたりさわりのない程度にクラスメイトとは会話をするし、ときには女の子から手紙をもらったりした。
そのたびにキラは不機嫌になり、その機嫌取りが大変だったのは忘れたくても忘れられない記憶の一つだ。
やさしくしてやれば喜び、甘やかせば甘えてくる。
いつしかキラは俺に依存ともいえるような頼り方をするようになっていったが、それは嫌ではなかった。
むしろ嬉しい。
なにかしてやるとはにかんだ笑顔で「ありがとう」と照れたように言う。
その顔が、大好きだった。
別れの時。
最後に見たのは、涙ではなく、なにかもの言いたげな目。
でもキラの口からは、なんの言葉も出なかった。
あのときキラは、何を語ろうとしたのだろう。
「キーラぁ」
「んー?」
つらつらそんなことを思い出していたら、ベッドサイドの時計が日付の変更を知らせた。
「日付変わったよ」
「あ、じゃあ乾杯しよう!」
人の膝を枕にしてテレビを観ていたキラが、がばりと身体を起こす。
俺たちは大人になった。
まだ子供の年で人を殺し、キラとも殺しあった。
何度も何度もすれ違った。
すれ違って、喧嘩して、それでも一度もキラのことを嫌いだと思うことはなかった。
むしろそのたび愛しくなっていって。
「シャンパンとワイン、どっちがいい?」
「赤? 白?」
「赤」
「じゃ、それ」
はーい と、今ではしっかりとした活舌で返事をして、キラは乾杯の支度をする。
「僕開けるの苦手」
「貸して」
キラからワインの瓶を受け取れば、俺の好きな銘柄。
「キラ、これ苦手なんじゃないのか?」
「いいの。アスランのお祝いなんだから」
子供の頃はほとんど同じものを食べていたけれど、成長すれば味覚も差が出る。
特にキラは、好き嫌いが激しい。
「明日どっか行く?」
「デートしたいのか?」
「プレゼントは明日の朝渡すけど。アスランなにかしたいことある?」
グラスの端を合わせて、一口飲んで
「キラと一日いちゃいちゃしたい」
正直に言うと、キラは真っ赤になって「ばか!」とそっぽを向いた。
昔なら「一日いちゃいちゃ」というとべったりくっついて行動するだけだった。
それが別の意味になったのは、俺たちが大人になったから?
「キーラ。俺、誕生日」
にじり寄って耳元に囁くと、ますますキラが赤くなる。ああ、耳まで赤い。
「・・・いちゃいちゃ、だけ・・・ね?」
「それはどうかな」
「なんで!」
「それは俺が大人になったから」
しれっと返すと、キラはこちらを伺うように振り向いて
「・・・大人っていうか、やりたい盛りの学生みたい・・・」
言うようになったな、こいつ。
「大人になったっていうなら、もうちょっと自重しようよ」
「まだ枯れてないもので」
「アスラーン」
ワインを継ぎ足して、つまみのチーズを口に放り込んで
「で? 覚悟は?」
意地悪く訊けば
「・・・イヤじゃない」
わかりきった返答。
「キラも若いな」
「人を年寄り呼ばわりしないでよ! 同い年じゃん!」
「普段半年の差を強調してるの誰だ?」
「うー」
いつまでも子供っぽいキラも、かわいいのだけど。
「せっかくバースディ休暇取ったんだ。めいっぱい有効に使おう」
自分のグラスをテーブルに置いて、キラのグラスも奪い取って
「大人の楽しみ方でさ」
まだ赤い顔をしたキラの唇を、そっと塞いだ。
おまけ
「ブルーチーズ不味いー!!」
「なんで嫌いなものを用意するんだよ!」
「うぇ、キモチワル・・・」
「酒弱いんだから無理して飲むな!」
「ちょ、無理・・・」
「キラ! 吐くなら洗面所かトイレ!」
「うー・・・・」
というわけで、アスランBDでーす!
最近放置気味ですいません・・・。
なんか不幸な主人公役の子とお馬鹿な主人公の子、そして赤の人と黒の人に萌えが爆発してまして(人、それを浮気という)
でもアスランのことは忘れてないよ! 愛は不滅だよ! たぶん!(ぇ
おまけでキラさまがゲロってるのは別にわんこそば180杯を見た後書いたからってわけじゃない。決して! ええ、決して!!