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ZONE-ZERO

ガン種中心二次創作サイト簡易版。アスキラ中心です。

LIFE

2007-06-09 18:01:32 | 学園アスキラ番外
 キラとアスランが手を取り合って、二度目の春。
 キラはめでたく、高校の卒業式を迎えた。
 卒業生代表になったキラは緊張した面持ちで送辞を読み上げた。

「アスラン!」
 式を終えて、最後のホームルームを終えて。
 もう通うことのない学校を、名残惜しむことなくキラは飛び出す。
 校門には、アスランが待っていた。
「おつかれさま」
「緊張したよー」
 がくり と肩の力を抜いて、キラは笑って
「アスラン、スーツ似合う」
 恋人の見慣れないスーツ姿に、ちょっと照れてみたりする。
 式の保護者席には、キラの両親と、アスランが並んで座った。
 両親は先に帰ってパーティの準備をしている。
「キラの晴れ舞台だからな。ちょっと格好つけてみた」
 仕立てのいいスーツ姿のアスランは格好いい。
 制服以外のブレザーを着れば七五三状態のキラとは大違いだ。
「友達はいいのか?」
「うん。明日の夕方から、打ち上げみたいなカラオケ大会するけど」
「そっか」
 話しながら、二人、学校を後にする。
 キラはちらりと、学校をかえりみた。
 アスランとの出会いの場。
 ありがと と心の中で感謝して。
 いつもの家路につく。
「着替えなくていいの?」
「うん。ちょっと、大事な用があるから」
「え? じゃあうちのパーティ来れない?」
「それが大事な用」
 アスランは昨年高校を卒業し、今は志望した大学の工学部で機械と格闘、夜は塾講師のバイトをしている苦学生だ。
 母親から大金を譲り渡されたとはいえ、甘えるのは嫌だとアスランは時給のいい講師のバイトを知人に紹介してもらったのだという。
 キラはアスランが一人暮らしを始めてから、毎日のように放課後アスランの部屋に通い、掃除、洗濯、炊事に大忙し。
 その報酬として、疲れて帰ってきたアスランに勉強を教えてもらって。
 時々泊まったりして。
 二人の仲は、もう公然のものとなっていた。
「今日うち泊まる?」
「いいのかな。いきなりで」
「母さん張り切ってベッドのシーツ交換してた」
「・・・・・・・」
 キラの両親の、アスランへの心の開き方は、どこか世間とずれている。
 もう二年以上お世話になっているのだから、キラの家がアスランの実家と言えなくもない生活だけれど。
 普通一人息子の恋人が男だと知れば、反対するものだろうに。
 なぜかあっさりと受け入れられ、それどころか行くたびに大歓迎を受ける。
 その親切を、仇で返したくはないのだけれど。
「いざとなると、心苦しいな」
「なにが?」
「ちょっとね」
 今日を境に。
 アスランにはひとつの決心があった。

 キラの家は、もうパーティの準備が出来上がっていた。
 まだ昼間だというのに、アスランはキラの父に酒を薦められた。
 いつもなら付き合うところだけれど、今日だけは とアスランはそれを断る。
 昼食とは思えない豪勢な料理を前に、アスランは意を決した。
「あの、大切なお話があります」
「なんだい?」
 すでに酒の入った父は上機嫌。
「キラと一緒に暮らしたいんです」
 ぶっ と何かを吹いたのは、キラだった。
「・・・アスラン?」
「大学は合格したも同然です。ここから通うには少し遠いですし」
 キラはアスランと同じ大学を志望した。
 合否はまだでていないが、受かっていれば確かにここからは通うのは辛い。
「法的には認められませんけど」
 ちらり と赤く染まったキラの顔を見て
「キラと結婚させてください」
 アスランはハッキリした声で、言い放った。

 たしかに。
 アスランの引越しの日、新婚話をしたりした。それはキラも覚えている。
 泊まったときは一緒のベッドで寝るし、アスランの3LDKの部屋の一室はまだ空き部屋のままだ。
 だけどそれは。
 叶わないことだと。
 夢物語のように思っていたのに。
「キラは、どうしたい?」
 父の言葉に、キラははっと我に返った。
 どうしたい と訊かれても。
「え、と」
「嫌なら嫌って言っていいよ。俺が勝手に言い出したんだし」
「そじゃなくて」
 嫌なわけではない。
 だけど、叶わないものだと、一時の夢だと思い込んでいたのも事実で。
 こんな展開が待っているとは思わなかった。
「すぐに返事をしなくてもいい。ただ、ご両親の許可をもらってからだと思ったんだ」
 アスランの言葉に、戸惑う。
 アスランは、自分を切望してくれている。
 それはうれしい。
 だけど、本当にそれに答えていいのか?
「俺に人生をくれたのはキラだから、ずっと一緒にいたいって思ったんだ」
 縛り付けられ、レールの上を走るだけだったアスランに、今の道に進むきっかけを与えたのはキラだ。
 それがよい事だったと、キラも思っている。
 だけど。
「僕、そこまで、アスランの人生に関わっていいの?」
 夢を掴んだ先に。
 貴方は、それでも、僕を望んでくれる?
 
 アスランの気持ちを裏切る言葉だとは、わかっていた。
 だけど、キラにとってアスランはとても大切で。
 付き合い出した頃、望んだものに手を伸ばすのを怖がっていたアスランを、支えなければと思っていたけれど。
 今のアスランはとてもしっかりしていて。
 地に足が着いた、頼れる一人の大人の男で。
 その横に自分が立っていいのか。
 ふと、不安になったのだ。

「キラは嫌なのか?」
「嫌なんじゃなくて・・・」
「うん?」
 父はゆっくりと、キラの言葉を待つ。
「だって、結婚できるわけじゃないし・・・」
「うん」
「アスラン、もう大人だし」
「うん」
「すごくモテるし」
「うん」
「僕、男だし・・・」
「それだけかい?」
 え? と、父の言葉を聞き返す。
「キラが困っていることは、それだけかい?」
「・・・うん」
「じゃあ決まりだ」
 父は持っていたグラスをテーブルに置いて。
「出て行きなさい」
 あっさりと、しかしはっきりと言い放った。
「出て・・・?」
「アスランくんのところの行きなさい」
「だって」
「一生の人なんだろう?」
 父に報告したあの日。
 「アスランは一生の人だ」と言ったのは自分だ。
「アスランくん。遠慮なく持っていきなさい。今すぐ」
「え?」
「今すぐ。荷物はまとめて後日送るよ」
 さぁ と父が立ち上がって、アスランの荷物と、キラの財布と携帯を投げる。
 それをアスランは受け取って。
「キラはもうキミのものだ。好きにしていいよ」
 後は頼んだよ。
 そう言って、父はアスランとキラを家から追い出した。

 追い出されて。
 制服のままのキラと、スーツのアスランは。
 とりあえずアスランの家に向かった。
 終始無言。
 アスランは何も言わず。
 キラは何も言えなかった。

 傷つけた。
 きっと。
 自分の言葉は、アスランを傷つけた。
 あれだけ自分を求めてくれた人に。
 「同性だから」「結婚できないから」という理由で、素直にその手を取れなかった。
 昔のアスランの弱さを、責める権利はない。
 自分だってこんなに弱いじゃないか。
 泣き出しそうな気持ちで、キラはアスランの家の玄関で立ち止まった。
「・・・キラ?」
 開け放たれたアスランの部屋のドア。
 それを潜る権利はないように思えた。
「やっぱり、嫌か?」
 アスランの言葉に、首を横に振る。
「じゃあなんで入ってこないの?」
「だって・・・」
「ここはもうキラの家なんだから。入って」
 また、首を横に振る。
 踏み込んでしまったら。
 貴方の人生を、今度こそ狂わせる。
 せっかく明るい未来に向かって走り出した貴方の枷になる。
 そう思ったら、足が動かない。
「キラ」
「ごめんなさい」
「それは、何への謝罪?」
「全部。ごめんなさい」
「謝られるようなことされてないよ」
「した。ごめん」
 頑なに首を横に振るキラに、アスランは
「いいから入る!」
 とその手を引いた。
 あ と思ったときには遅かった。
 足が。
 その部屋の中に入っていた。
「はい、おかえり」
「あすら・・・」
「ドア閉めるよ」
 キラを抱き留めたまま、アスランはドアの鍵を閉めた。
「なにそんなに怖がってるの」
「だって」
「キラらしくないよ」
「僕どんなイメージ?」
「猪突猛進」
「怒るよ」
 アスランに抱きしめられたまま、ぶう とふくれる。
「嫌か?」
「嫌なんじゃない」
「怖いか?」
「怖くない」
「じゃあなんで」
「だってアスラン、かっこいいんだもん」
 キラの言葉に、アスランは首を傾げる。
「かっこよくて頭よくて。大学でもモテるって知ってる」
「それが?」
「否定しようよ。謙遜しようよ」
「それで?」
「だからさ」
 ぎゅう と、上質なスーツの背中を抱き返して。
「僕でいいのかなって」
「キラじゃなきゃ駄目」
「なんで」
「俺の人生変えた責任、取れよ」
 それを言われると。
「キラが俺の人生変えたんだ。キラじゃなきゃ駄目になったんだ。責任取って」
「ずるい・・・」
「俺は本来卑怯者だよ。いい顔してるのはただの仮面」
 ぎゅっとキラの身体を抱きしめて。
「ねぇ、俺のものになってよ」
 甘く、囁く。
「俺はキラがほしい。ちょうだい?」
「ぼくの、なにを・・・?」
「全部。キラの心も身体も人生も。全部」
 責任持って面倒みるからさ。
 そんな甘い言葉で、キラの心を上手に駄目にしていく。
 いつからアスランは、こんな男になったのだろう。
 あんなに怖がりで弱虫だったのに。
「独占欲強いんだ、俺」
 来る者拒まず、去る者追わなかったくせに。
「欲しいものは手に入れる。そういう風にしたのはキラだよ」
 ああ、そうか。
 だったら
「じゃあ、しかたないね」
「うん。諦めて」
「うん」
 一生の人だと思った。
 だからここまで心を許しあった。
 だから。
「アスラン」
「なに?」
「僕も独占欲強いんだ」
「知ってる」
「だからさ」
 僕のものになってよ。
 そう言えば、アスランはくすくす笑って。
「俺はとっくにキラのものだよ」
 そう言って、甘いキスをくれた。

連載が暗いので、こっちまで暗くなってしまった・・・。
というわけで、また学園アスキラの続きを時々書きます。
この後は今度こそ同棲編。今度こそ・・・!!