シンアスっぽいアスシンっぽいアスキラです。(なにそれ・・・)
シンアス真ん中バースディです。
「アンタっていつから隊長のこと好きなんですか?」
仕事でザフト本部に来て、シンを見つけた。
シンでも通せる話だったので頼もうと思ったら、
「いーけど代わりに昼飯奢ってください」
といつもながら拗ねているのか甘えているのかわからない口調で強請られた。
ちょうど昼時だったので「じゃあキラも誘って」と言いかけたら
「あの人抜きで」
と頑として譲らない。
これはなにかあるな と思って承諾して、この言葉だ。
意図がつかめず、アスランは困惑した。
「いつから・・・?」
「好きだって自覚したの。いつですか? 幼馴染なんですよね?」
彼がこういう色恋沙汰に触れようとするのは、珍しいことだ。
「昔から大事だとは思ってたけど・・・本当に自覚したのは戦後だな」
「ほんとうにって?」
「なんとなく・・・、好きだな、と思うときはあったんだが・・・」
それで? とシンの眼差しが促す。
「その、同性だろう? いろいろ足掻いて・・・」
「認めたくなかったんですか?」
「まぁ、そうなるかな」
ふぅん とシンはアスランの奢りのハンバーグを口に放り込む。
ナイフとフォークは苦手らしく、シンは割り箸を愛用している。
「認めたくなかったのに、なんで認めたんですか?」
「キラはもう、俺の一部になっていたから」
「一部?」
「心臓だよ」
意味がわからない と、シンが首を傾げる。
「俺を動かすものが、キラだったんだ。考えてみたら、いつだってそうだった。キラのために、キラが喜ぶようにって、そればかりだったんだ」
「末期ですね」
「そうだな」
アスランは自嘲的に笑って、目の前のスープにスプーンを差し入れた。
「キラは、ずっとそれを知ってて、俺が覚悟するのを待っていてくれたんだ」
「は?」
「言われたよ。「アスランは僕がいなきゃ生きていけない人だよね」って・・・」
「うっわ、自意識過剰」
「過剰じゃないよ。事実だ。キラは俺より俺のことをよくわかってるんだ」
「アンタ、鈍いしね」
「そうだな」
行儀悪く箸についたソースを舐めるシンを叱りもせず、アスランはスープを口に含む。
「アンタ、クリーム系って好きでしたっけ?」
「え?」
「いや、ミネルバに乗ってるとき、あんま飲んでるの見なかった気が・・・」
「ああ」
アスランは自分で注文したかぼちゃのスープに視線を落とす。
「キラが好きで、家でもよく作ってやるから・・・」
癖になったんだな。
そう言うと、シンはすこし不機嫌な顔をする。
気に障ることでも言っただろうか。
「隊長の、どこが好きなんですか?」
「どこっていうのはないな」
「え?」
「生きて、笑って、俺の傍にいて。そうして、幸せでいてくれたら」
それが一番いい。
「そう思ってるだけで、キラのここが、とか、こうだからっていうのはないんだ」
「あえて言うなら?」
「・・・自由なところかな」
俺にはないものだから。
彼を「自由」と表現するなら、彼の機体の名はおあつらえ向きすぎるだろう。
そして、アスランの機体の名も、彼を現している。
「JUSTICE」。
正義だけでなく、「正直」や「公正」を表す言葉だが、時に「罰」という意味でも使われる言葉だ。
そこについでに「鈍感」も加えてやりたいくらいだ。
「隊長って、アスランさんのどこが好きなんですか?」
昼食を終えて仕事に戻ったシンは、キラにも同じ質問を投げかけた。
「え?」
「アスランさんの、どこが好きなんですか」
「どこって・・・」
うーん と、キラは手を止めて考える。
質問に乗じてサボる気だな と感づいたけれど、シンは問いの答えを待つ。
「きれいなところ、かな?」
「顔ですか」
「顔じゃなくて」
顔も好きだけどさ とキラは真面目に答える。
「けっこう汚いこともしてきたみたいなんだけど、一番大事な部分が汚れないんだよね、アスランって」
「アンタは?」
「僕はほら、打算的でしょ?」
納得してしまう。
「アスランはそういう、損得じゃなくて、なにが一番大事かってことで動くでしょ?」
時々自己完結しすぎてから回るけど と、キラは笑って
「そういうところがね、好き」
きっぱりと、まっすぐな瞳で。
「だって、普通皆自分の利益になることしかしないじゃない」
みんな自分が一番かわいいんだもん。
「でもアスランは、そういうところがないんだ」
裏を返せば、自分を大事にしていないってことだけど。
「やさしいんだ」
一緒の艦に乗っているときは、いつも怒られていた。
先走りすぎだの、殺しすぎだの、態度が悪いだの。
先走りを怒るのは、死なないようにするためで。
殺しすぎを怒るのは、人の恨みを買わないようにするためで。
態度が悪いことを怒るのは、人当たりを悪くしないためで。
いつだって。
シンが傷つかなくていいように。
叱ってくれた人。
やさしすぎて、いつも自分ばかり傷ついて。
それでも、「これでいいんだ。おまえが無事でよかった」と言ってくれて。
そのやさしさが。
いつだって。
「俺、アスランさんのこと、好きだったんですよ」
深夜に電話をかけてそう言ったら、アスランは黙って聴いてくれた。
「好きだから、甘えてたんです」
夜の夜中に電話して、「明日に響くぞ」なんて叱ってくれない。
ただ、黙って聴いてくれる。
そのやさしさが。
「ほんとうは俺、キラさんの立場になりたかった」
あなたの一部になりたかった。
あなたの中心になりたかった。
「ほんとうは、キラさんがうらやましかったんです」
自覚がなくても、あなたの中心にいるのが、誰だか自分は知っていた。
その瞳が、誰を見ているのか知っていた。
「好きだったんです。すごく」
「・・・過去形なのか?」
そこで初めて、アスランが言葉を発した。
低くて、すこし掠れていて、抑え目の声。
「昔好きで、今は?」
今は?
「今って。ルナいるし・・・」
「彼女は彼女だろう。そうじゃなくて、今俺はおまえの中でどうなってるんだ?」
どうって?
だってアンタ、キラさんのもので。
自分にはいま、立派な彼女がいて。
それで、「過去の話です」でいいんじゃないの?
「べつに・・・」
「どうでもいい存在になったか?」
「どうでもよくなんて・・・!」
「俺は、少しでもおまえの中にいるか?」
すこしどころか。
「・・・いつでも、アンタが目標です」
「ならよかった」
ふっと、笑った気配がした。
「嫌われたり、どうでもいい存在になるのが、一番怖いからな」
「怖い?」
「ああ、怖いよ」
「俺、キラさんじゃないよ?」
「おまえでも。嫌われるのは、怖いよ」
「どうして」
「・・・大事な人だと、俺は思ってるから」
じゃあな と、一方的に電話を切られた。
規則的な音が鳴るだけの携帯電話を耳に当てたまま、言葉を反芻する。
大事な、人?
元部下じゃなくて?
生意気な後輩じゃなくて?
一人の人として、見てくれてる?
「・・・・卑怯だろ、それ・・・」
折りたたみ式の電話をそのままベッドに投げつけて
膝を抱えて、シンは泣いた。
初恋は、相手が死んだ。
二度目の恋は、
今、失恋した。
「・・・・シンから?」
「起こしたか?」
寝ていたはずのキラが、隣から押さえ気味の声を発した。
シーツの下に隠れた身体は、何も纏っていない状態だ。
「ひどいよね。散々僕のこと愛してるなんて言っておいて、シンには「大事」だなんて」
「嫉妬か?」
「ちょっとね」
機嫌取りに髪を撫でてやると、キラは気持ちよさそうに目を細める。
「で? シンはなんて?」
「ああ・・・」
電話をサイドテーブルに置いて、ベッドにもぐりこんで
「俺のこと、好きだったって」
「過去形なんだ」
「どうだろうな」
「やだなぁ、シンがライバルなんて」
ぎゅう と、キラが甘えて抱きついてくる。
「ライバルには、ならないよ」
「そうなの?」
「・・・愛してるよ、キラ」
ゴメン なんて言わないよ。
だってきみはそれを望んでいないから。
そう言ったらまた、拗ねるだろうか?
なぁ、シン。
シンアス真ん中バースディです。
「アンタっていつから隊長のこと好きなんですか?」
仕事でザフト本部に来て、シンを見つけた。
シンでも通せる話だったので頼もうと思ったら、
「いーけど代わりに昼飯奢ってください」
といつもながら拗ねているのか甘えているのかわからない口調で強請られた。
ちょうど昼時だったので「じゃあキラも誘って」と言いかけたら
「あの人抜きで」
と頑として譲らない。
これはなにかあるな と思って承諾して、この言葉だ。
意図がつかめず、アスランは困惑した。
「いつから・・・?」
「好きだって自覚したの。いつですか? 幼馴染なんですよね?」
彼がこういう色恋沙汰に触れようとするのは、珍しいことだ。
「昔から大事だとは思ってたけど・・・本当に自覚したのは戦後だな」
「ほんとうにって?」
「なんとなく・・・、好きだな、と思うときはあったんだが・・・」
それで? とシンの眼差しが促す。
「その、同性だろう? いろいろ足掻いて・・・」
「認めたくなかったんですか?」
「まぁ、そうなるかな」
ふぅん とシンはアスランの奢りのハンバーグを口に放り込む。
ナイフとフォークは苦手らしく、シンは割り箸を愛用している。
「認めたくなかったのに、なんで認めたんですか?」
「キラはもう、俺の一部になっていたから」
「一部?」
「心臓だよ」
意味がわからない と、シンが首を傾げる。
「俺を動かすものが、キラだったんだ。考えてみたら、いつだってそうだった。キラのために、キラが喜ぶようにって、そればかりだったんだ」
「末期ですね」
「そうだな」
アスランは自嘲的に笑って、目の前のスープにスプーンを差し入れた。
「キラは、ずっとそれを知ってて、俺が覚悟するのを待っていてくれたんだ」
「は?」
「言われたよ。「アスランは僕がいなきゃ生きていけない人だよね」って・・・」
「うっわ、自意識過剰」
「過剰じゃないよ。事実だ。キラは俺より俺のことをよくわかってるんだ」
「アンタ、鈍いしね」
「そうだな」
行儀悪く箸についたソースを舐めるシンを叱りもせず、アスランはスープを口に含む。
「アンタ、クリーム系って好きでしたっけ?」
「え?」
「いや、ミネルバに乗ってるとき、あんま飲んでるの見なかった気が・・・」
「ああ」
アスランは自分で注文したかぼちゃのスープに視線を落とす。
「キラが好きで、家でもよく作ってやるから・・・」
癖になったんだな。
そう言うと、シンはすこし不機嫌な顔をする。
気に障ることでも言っただろうか。
「隊長の、どこが好きなんですか?」
「どこっていうのはないな」
「え?」
「生きて、笑って、俺の傍にいて。そうして、幸せでいてくれたら」
それが一番いい。
「そう思ってるだけで、キラのここが、とか、こうだからっていうのはないんだ」
「あえて言うなら?」
「・・・自由なところかな」
俺にはないものだから。
彼を「自由」と表現するなら、彼の機体の名はおあつらえ向きすぎるだろう。
そして、アスランの機体の名も、彼を現している。
「JUSTICE」。
正義だけでなく、「正直」や「公正」を表す言葉だが、時に「罰」という意味でも使われる言葉だ。
そこについでに「鈍感」も加えてやりたいくらいだ。
「隊長って、アスランさんのどこが好きなんですか?」
昼食を終えて仕事に戻ったシンは、キラにも同じ質問を投げかけた。
「え?」
「アスランさんの、どこが好きなんですか」
「どこって・・・」
うーん と、キラは手を止めて考える。
質問に乗じてサボる気だな と感づいたけれど、シンは問いの答えを待つ。
「きれいなところ、かな?」
「顔ですか」
「顔じゃなくて」
顔も好きだけどさ とキラは真面目に答える。
「けっこう汚いこともしてきたみたいなんだけど、一番大事な部分が汚れないんだよね、アスランって」
「アンタは?」
「僕はほら、打算的でしょ?」
納得してしまう。
「アスランはそういう、損得じゃなくて、なにが一番大事かってことで動くでしょ?」
時々自己完結しすぎてから回るけど と、キラは笑って
「そういうところがね、好き」
きっぱりと、まっすぐな瞳で。
「だって、普通皆自分の利益になることしかしないじゃない」
みんな自分が一番かわいいんだもん。
「でもアスランは、そういうところがないんだ」
裏を返せば、自分を大事にしていないってことだけど。
「やさしいんだ」
一緒の艦に乗っているときは、いつも怒られていた。
先走りすぎだの、殺しすぎだの、態度が悪いだの。
先走りを怒るのは、死なないようにするためで。
殺しすぎを怒るのは、人の恨みを買わないようにするためで。
態度が悪いことを怒るのは、人当たりを悪くしないためで。
いつだって。
シンが傷つかなくていいように。
叱ってくれた人。
やさしすぎて、いつも自分ばかり傷ついて。
それでも、「これでいいんだ。おまえが無事でよかった」と言ってくれて。
そのやさしさが。
いつだって。
「俺、アスランさんのこと、好きだったんですよ」
深夜に電話をかけてそう言ったら、アスランは黙って聴いてくれた。
「好きだから、甘えてたんです」
夜の夜中に電話して、「明日に響くぞ」なんて叱ってくれない。
ただ、黙って聴いてくれる。
そのやさしさが。
「ほんとうは俺、キラさんの立場になりたかった」
あなたの一部になりたかった。
あなたの中心になりたかった。
「ほんとうは、キラさんがうらやましかったんです」
自覚がなくても、あなたの中心にいるのが、誰だか自分は知っていた。
その瞳が、誰を見ているのか知っていた。
「好きだったんです。すごく」
「・・・過去形なのか?」
そこで初めて、アスランが言葉を発した。
低くて、すこし掠れていて、抑え目の声。
「昔好きで、今は?」
今は?
「今って。ルナいるし・・・」
「彼女は彼女だろう。そうじゃなくて、今俺はおまえの中でどうなってるんだ?」
どうって?
だってアンタ、キラさんのもので。
自分にはいま、立派な彼女がいて。
それで、「過去の話です」でいいんじゃないの?
「べつに・・・」
「どうでもいい存在になったか?」
「どうでもよくなんて・・・!」
「俺は、少しでもおまえの中にいるか?」
すこしどころか。
「・・・いつでも、アンタが目標です」
「ならよかった」
ふっと、笑った気配がした。
「嫌われたり、どうでもいい存在になるのが、一番怖いからな」
「怖い?」
「ああ、怖いよ」
「俺、キラさんじゃないよ?」
「おまえでも。嫌われるのは、怖いよ」
「どうして」
「・・・大事な人だと、俺は思ってるから」
じゃあな と、一方的に電話を切られた。
規則的な音が鳴るだけの携帯電話を耳に当てたまま、言葉を反芻する。
大事な、人?
元部下じゃなくて?
生意気な後輩じゃなくて?
一人の人として、見てくれてる?
「・・・・卑怯だろ、それ・・・」
折りたたみ式の電話をそのままベッドに投げつけて
膝を抱えて、シンは泣いた。
初恋は、相手が死んだ。
二度目の恋は、
今、失恋した。
「・・・・シンから?」
「起こしたか?」
寝ていたはずのキラが、隣から押さえ気味の声を発した。
シーツの下に隠れた身体は、何も纏っていない状態だ。
「ひどいよね。散々僕のこと愛してるなんて言っておいて、シンには「大事」だなんて」
「嫉妬か?」
「ちょっとね」
機嫌取りに髪を撫でてやると、キラは気持ちよさそうに目を細める。
「で? シンはなんて?」
「ああ・・・」
電話をサイドテーブルに置いて、ベッドにもぐりこんで
「俺のこと、好きだったって」
「過去形なんだ」
「どうだろうな」
「やだなぁ、シンがライバルなんて」
ぎゅう と、キラが甘えて抱きついてくる。
「ライバルには、ならないよ」
「そうなの?」
「・・・愛してるよ、キラ」
ゴメン なんて言わないよ。
だってきみはそれを望んでいないから。
そう言ったらまた、拗ねるだろうか?
なぁ、シン。