あの日朝早く、外に出てみるとキミはもう小屋から出て、太陽がまぶしい東の空を見ていたね。ジーと見ていたら目をいためるよっていっても動かなかった。
これが最後のお日様ということを知っていたのかな。
前の晩、めったにほえないキミが続けざまにほえたので、みんなで見に行った。鹿か動物がやってきたのかと思ったけど、あの時おなかが痛かったんだね。気が付いてやれずにごめんよ。
キミがいったその日、キミのことをすごく愛していた若いご夫婦が、偶然か必然かキミに会いに来られていたみたい。山門にあったキミの看板はもうはずされていて、いぶかしそうにそのまま石段をおりて行かれた。
僕の心もキミのことを説明する準備ができていなかった。もし話を聞かれたら、どんなに驚いて悲しまれるか……。お二人ごめんなさい。
これからお盆にかけて、多くの人たちがまたキミのことを尋ねたり、驚いたりされるだろう。そのつど僕もキミのことを想い出す。それでいい。悲しみはおさえつけると長引くって言うじゃないか。だから思いっきり悲しませてもらうよ、もも。
これまでいっぱいの楽しい時間をありがとう。生まれ変わってもまたここにおいでね。