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『わたしを離さないで』のずっしり感がヤバい件【追記】

2017-02-14 18:16:58 | テレビ
『わたしを離さないで』のネタバレ感想まとめ。



誰だ、「ヒューマンドラマ」っつったの。おいこら。

『Mother』『Woman』超えて、『永遠の仔』くらいのズッシリ感どうしてくれる。




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■この重さ、騙された









冒頭のシーン、うろ覚えなんですが、

・手術室に横たわる男性・友彦(三浦春馬)
・臓器摘出
・恭子(綾瀬はるか)が、手術室を見つめている。
・男性の容体が急変、「4度目だ」の言葉。
・恭子がその身体に薬を打ち、焼却。


という流れなんですね。

そのあと回想シーン入りまして。
恭子(鈴木梨央)と美和(瑞城さくら)、友彦(中川翼)らの陽光学園の場面にかわります。

描かれるのは、朗らかな子どもたち。
でも謎めいた閉鎖された空間であることはわかります。


何より気になるのは、子どもたちの服が灰色でボロボロなこと。
図画に力を入れ過ぎていること。
魂や何やら、下世話な言葉でいうと「胡散臭い」こと。

その陽光学園へやってきた新任の教師・龍子先生。
彼女がいじめられっ子である友彦へ声をかけたときでした。
外の世界があることを教える龍子先生。
喜ぶ友彦ですが、その様子に違和感を覚えた龍子先生は徐々に学園の深層に近づいていきます。

一方、恭子と美和は大親友。
目立ちたがりの美和と、聡明な恭子、といった印象です。
もうひとり、真実(エマ・バーンズ)という大人びたルームメイト。
彼女は一体何を知っているのか。

恭子と友彦、美和と恭子らがそれぞれ思い出を作っていた10代の終わり。
衝撃の事実が明かされます。

「あなた達はある使命を負っています」
「それは自らの体の一部を提供する…言ってみれば…天使なのです」


麻生さんや甲本さん、大人の笑顔より何より不気味だったのは子どもたちの拍手でした。
「何が何やらわからない。でもこれはとてもいいことなんだ。わからないけど、いいことなんだ」と、拍手。

これはゾッとしました。
教育と洗脳って紙一重なのだなと。




どうでもいいんですが、私最初にこの恵美子先生のシーンを見てしまったんです。
で、そのあと追っかけ再生しまして。

この真実を知ってからの、回想シーンは恐怖倍増でした。
あの笑顔やこの笑顔、全てが精神的に気持ち悪く感じました。





■こっち見んなあああああ



1話ラスト。



あれ?三浦春馬生きてる……?

と、ここで冒頭のシーンで勘違いしてたことに気づきました。

え?どこか見落とした?いやいや(見直して)
……うわあ騙された。

これわざと勘違い起こす作りなんじゃないか。
主語や目的語を明確にしないことで、逆に何が起きているのかわからなくする。


やられました(こういうトリック大好物)



ラスト、成人の恭子のモノローグが入ります。

私達はそのために生まれてきたのだから。
だから使命を全うさせるのは当たり前の仕事だ。
たとえそれが私の全てだった男だろうと。
たとえそれが私から全てを奪った女だろうと、同じことだ。

最後は始末するだけだ。



ここ数年、綾瀬はるかさんの優しい声の感じに慣れていたせいでしょうか。
この冷たい声に「白夜行」を思い出しました。




■鈴木梨央の演じ分けが大女優レベル







『あさが来た』1週でヒロイン・白岡あさの子供時代を名演、その後17週でもあさの長女・千代を演じています。
蛇を振り回し相撲をとり木登りしては父に叱られるあさの子ども時代。
お上品なお嬢様だけど負けず嫌い、父親大好きの千代。
今作では、聡明で思いやりがあるも、笑顔の裏側にどこか寂しさ漂う恭子の子ども時代。

演じ分けがハンパない。
今後に期待大の女優さんです。






■なにがどうしてそうなっているのか





「前の提供がレバーでさ、それから貧血がすごくって。」

冒頭から生々しい会話。
1話で恵美子先生から説明された「提供という使命」を、変えられずにこの子たちは育ったんだな、と妙に悲しくなります。

笑顔を向ける美和ですが恭子は無表情。
一瞬口角が歪んだのは、冷蔵庫の上に無造作に置かれたCDを見つけたときでした。
それは幼いとき、恭子が友彦からもらった宝物のCD。

そして届く赤いハガキ。



『提供開始通知』。
まるで赤紙を象徴しているようで。





■天使の子どもたち







将来は体の臓器を提供しなければならない運命
「あなたたちは天使なのです」という言葉。

その言葉を受け入れようとする子どもたち。
しかしどこかおかしい龍子先生の様子からも「自由はないんじゃないか」という疑念が生まれます。





■羽をもがれた天使たち



サッカーの魅力を伝える龍子先生。
龍子先生は「提供の前に、(サッカー選手に)なればいいじゃない」と、涙ながらに伝えます。

そして「逃げてしまおう」と広樹と聖人が塀の外へ脱走。
このとき友彦も脱走する予定でしたが、梯子が壊れてしまい外には出られませんでした。



外の世界を知った2人の少年。
しかしすぐに追手がやってきます。

それからしばらくして、校門にが滴り落ちました。

子どもたちは「森の殺人鬼」に怯えます。
龍子先生が恵美子先生に問い詰めると……

「難病を抱えた子供に対する提供はかなり強く望まれる分野です。ある意味……大人に対するそれよりも強く」

つまり、外の世界を知ろうとした、サッカー選手を夢見た少年たちは、提供者となった。
それを招いたのは他ならぬ龍子先生でした。






怯える恭子に、語る真実。
恭子は龍子先生のところへ駆け寄り、「本当のこと」を尋ねます。
しかし龍子先生は口をつぐみ……







龍子先生の老けっぷり、というか疲れっぷりが狂気。
連れ出されるときに「逃げなさい」じゃなくて「騙されないで」ってのが印象的でした。






■大人役へのリンク





友彦の癇癪がすごかった。
子役の中川さんが大人役の三浦さんに寄せたのか、三浦さんが中川さんに寄せたのかどちらかはわからんが、思わずゾッとした。
こうやってキャラクターがリンクしてくんだなあと。



三浦春馬のあんまり出演作見たことなかったんですね。
というより初めて見た三浦さんが出た某ドラマが「おいこら何がどうしてこうなったゴラ」だったから敬遠気味だっただけなのですが。

この地団駄シーンといい、指から手つなぎのときのシーンのときのトモの表情にゾッとしてしまった。




■家畜のような子どもたち



原作であるカズオ・イシグロ氏の『わたしを離さないで~Never let me go~』

恭子や美和たちはクローン人間のような試験管ベビーなのでしょう。
父親や母親なんていない。
物理的に作られた『臓器』。
その箱としての『天使』。


だとすればなぜこんなことを?


恵美子先生の真意がわかりかねます。
臓器移植という医療には様々な問題が孕んでいるものの、「クローン人間の臓器を移植させる」というのもまた人工臓器、という観方ができます。
ただ問題はその人工臓器が、人間の形をしているということ。
笑い、走り、泣き、育っていく人間であること。



それに、クローン人間育成なのだとすればなぜ、なぜ教育を受けさせるのか。
なぜ「図画」や「魂」がそれほど重視されるのか。
ドラマ中に出てきた「介護人」の育成という理由だけではどうも解せません。

まだ隠されている何かがある。
そう思ってしまうのは私だけでしょうか。





■なまえのない怪物



最終話までざっくりと。



──教育によって与えられた感情、教育によってつくられた笑顔。

──宝箱はつまり棺桶。宝物は自分の体。だから「わたしの宝物は箱には入らない」。

──「死」って単語を「終わる」とか「終了」とか、別の単語に置き換えるから余計に恐怖を感じる。

──それは本当に間違っているのか。それは本当に理想なのか。

──「生まれてきてくれてありがとう」は「提供してくれてありがとう」つまり「死んでくれてありがとう」。

──提供が『終われ』ば解放される。魂は自由になれる。もっと広い世界に逝ける。




なんかもう救いがなさ過ぎて、あまりの虚しさで涙も出てこない結末を見せつけられました。




■10年後も多分覚えてる



制作側もまさか金曜22時にこの内容で視聴率とれるとか思ってないんでしょう、それくらいはわかります。
同じ『重さ』でも「ダブルフェイス」や「MOZU」のそれとは真逆(いやMOZUは……)

それでもいい、それでも作る。
10年後に覚えている作品を作る。

そんな「重み」をひしひしと感じます。


















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