筑紫文化財研究所

筑紫における歴史的文化の探求と漫遊

中ノ子型の内裏雛2

2012-02-06 23:04:37 | 人形

この中ノ子型の雛人形は背面まで行き届いた彩色が施されています。
弓野の諸岡龍八(故人)の戦前作の雛には背面の彩色がありません。
(2011-03-13 本ブログ記事参照)
この雛の作者である中ノ子勝美氏は、土人形の背面について
製作者の立場からコメントとしたことがあります。

「私は土人形の裏を白地に残した人間の知恵に教えられるものがあるように感じています。昔の人が虎を作るために足跡を粘土にとって参考としたり人形の裏面を線刻によって表現するなど、見えないところにも心がとどいています。人形を彩色するのに、裏まで彩色することは簡単なことです。
 各地の土人形が、すべていろいろの由来をのべているのに、どの人形も期せずして裏を白地に残していること、この白地の裏面は大切なものではないかと思います。
 茶碗に釉薬のかからない高台脇が残されています。土人形の土味を、胡粉の白で化粧し裏面に残したと考えたいものです。
 古博多の小型の中には、裏の彩色を必要とするものもありますが、この彩色を好まれない人が多く(裏は白地ときめて)現在では白地に残して製作しています。私はもっと自然の姿で人形をうけとめてほしいと思います。」(『竹とんぼ』第89号1968年「人形の裏面」より)

さすれば、この内裏雛の背面は中ノ子氏にとっては深い想いのある彩色なのであろう。
弓野の諸岡氏作の内裏雛と比較した場合、彫りが異なっていることに気づく。
弓野は衣文の重なりは線で表現され男雛の後ろの垂れはない。
これは中ノ子氏のいう「人形の裏面を線刻によって表現」されたもので、
中ノ子氏の男雛は「裏の彩色を必要とするもの」と表現された原型であろう。


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