各国首脳がロシアへの金融制裁を決めた背後には、ウクライナ大統領の心を打つスピーチがあった
「生きている姿、これが最後かも」
「ワシントン・ポスト」によると、先週、欧州連合(EU)首脳が緊急首脳会議を開いた際、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、セルゲイ・ラブロフ外相らに対する制裁などはすぐに承認したものの、SWIFTからの排除についてははドイツなどが消極姿勢を示していた。 ところがビデオ通話で出席した途端、「ゼレンスキー大統領の個人的な魅力があっという間に押し切ってしまった」という。 同紙によると、ゼレンスキー大統領は「キエフの戦場からわずか5分間で」EU加盟を目指す姿勢や、ロシアとの戦いにおける支援を訴え、通話を終える前には、生きている自分を見るのはこれが最後かもしれないと、「当然のことのように」語った。 欧州政府関係者は、ゼレンスキー大統領のこの通話に対し「非常に心が動かされた」と述べたという。
過去の指導者も脱出したのに
ゼレンスキー大統領は、ロシアから処刑される可能性をめぐり「自分は敵の1番の標的で、家族が2番目だ」と語ったと、各種報道は伝えている。 そこでアメリカはキエフから脱出させ、亡命政権を樹立させることを提案。しかし、ゼレンスキー大統領は「戦いはここで起きている。必要なのは弾薬であって、脱出手段ではない」と、拒否したと米誌「アトランティック」は伝えている。 同誌は、この姿勢について「死を覚悟した姿は、今、国民が一丸となって守っている新しいウクライナの証し」と記し、亡命したシャルル・ド・ゴール元仏大統領やアフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領、ウクライナのヴィクトル・ヤヌコヴィッチ元大統領などの事例と対比。 「一人の人間が、大方の予想に反して、人々に奉仕し、その模範によって紛争の条件を明確にするような感動的な瞬間は、最近他には思いつかない」と評している。