KIRA. Library

台本置き場

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)

2017-02-05 00:07:49 | 台本

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)


【あらすじ】

健とほたるは、別々の旅館で過ごすことになる。
信にほたるを奪われそうになって、健は自分の本当の気持ちに気づく。
巴の協力を得て、ラジオでほたるにメッセージを伝えることに・・・。


【登場人物紹介】


伊波 健(いなみ けん)

主人公。父の転勤をきっかけに一人暮らしを始めた。引越し先のアパートは「朝凪荘」。
浜咲学園の3年生。受験のためにサッカー部を引退。
ほたるとは2年生の冬から交際しており、"健ちゃん"と呼ばれている。
巴には"イナ"、信には"イナケン"というあだ名を付けられた。
信に誘われて、ファミレスの「ルサック」でバイトをする。
11月4日生まれ。


白河 ほたる(しらかわ ほたる)

浜咲学園の3年生。健のクラスメイトで彼女。
2年生の冬に告白して以降、交際中。1stの今坂唯笑とは同じ中学である。
姉の静流を真似てピアノを始めたが、静流よりもその才能を発揮した。学園の天才ピアニストである。
自称「ほたる的ギャグ」を会話に入れるが、内容はおやじギャグ同様、ひたすら寒い。
9月25日生まれ。


飛世 巴(とびせ ともえ)

澄空学園の3年生。白河ほたるの親友で、劇団バスケット所属。通称「あだ名大魔神」
性格は明るいというよりうるさいと見られることもしばしば。
他人に変なあだ名を付けることが趣味で、"ほわちゃん"(白河ほたる)
および"イナ"(伊波健)は彼女が付けた物である。
健とほたるには"とと"と呼ばれている。
8月17日生まれ。


稲穂信(いなほ しん)

澄空学園の3年生。健の友達で一つ屋根の下に住む(同じアパートに住んでいる)。
ファミレスの「ルサック」でバイトをしていて、健を誘った。
また、愛犬「トモヤ」は前作の三上智也からのもの。
前作ではキャラ間の関係に多少なりと関わりを持ったが、
今作では傍観者かあるいは助言者的存在となっている。
健のことを"イナケン"、ほたるのことを"たるたる"と呼んでいる。
1月4日生まれ。


【メモリーズオフ 2nd ドラマCD 一覧】

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第一話『そのキスも、愛の言葉も』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第二話『それは夢の中の出来事』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)


【キャラクター一覧】


伊波 健♂:
白河 ほたる♀:
飛世 巴♀:
稲穂 信♂:
ラジオのおねえさん&携帯のアナウンス♀:


【本編】



ほたる「メモリーズオフ 2nd 第四話『もう一度、永遠の約束』」(タイトルコール)


《ほたると信の旅館。ほたるの部屋。外は雷雨》


ほたる「ぐすっ、ぐすっ・・・」

SE:ノック音

ほたる「へ?」

SE:ドアの開ける音

信  「なに泣いてんだよ」

ほたる「あ、信君! ごめん、なんでもないよ」

信  「泣いている理由は、あのバカの嘘のせいだろ?」

ほたる「うっ・・・。ほたるは邪魔者なのかな~って。もう、一緒には居られないのかな~って」

信  「昼間はあんなにはしゃいでたのに」

ほたる「押し潰されそうだったんだもん」

信  「あんなやつのどこがいいんだよ。いろんな女に甘い言葉かけてさ」

ほたる「みんなに優しいってことだよ」

信  「ふっ、ほんとに好きなんだな」

ほたる「好き。だけど、ほたるが邪魔になるなら、居なくなってあげなきゃ。
    それが、健ちゃんのためだから」

信  「出来るのか?」

ほたる「健ちゃんに会えないくらいなら、死んだほうがマシだっぺ。だから苦しんでるんだっぺよ~」

信  「なあ、たるたる」

ほたる「なに?」

信  「今だけでも、あいつのこと、忘れさせてやろうか」

ほたる「!? どうしたの? 信君? なにするつもり!?」


《健と巴の旅館。健の部屋》


携帯 「おかけになった電話は、現在、電源が切れているか」

健  「くそっ!」(電話を切る)

SE:ノック音

健  「!? ほたるか!?」

SE:ドアを開ける音

健  「なんだ、"とと"か」

巴  「なんだとは、なによ」

健  「どうかしたの?」

巴  「今夜、私、この部屋に居ていい?」

健  「え?」

巴  「子供じゃないんだから。どういう意味か、わかるでしょ」

健  「あの・・・」

巴  「ふふっ、冗談よ。やっぱり、ほわちゃんが気になるんだ」

健  「そういうわけじゃ」

巴  「あのさ、バカにするのもいい加減にしてくれない?」

健  「バカになんて」

巴  「ほわちゃん騙して旅行に来て、私のこと抱きしめてその気にさせて。
    それで、信君に取られそうになったら大慌て?」

健  「それは」

巴  「取られそうにならないと、大切さに気づかないなんて。イナ子供なんじゃない!?
    小学校からやり直したら!?」

健  「そうだな。最低だ。恋をする資格なんて、ない」

巴  「ほんとにずるくてバカで最低よ! 死んでも治らない病気! つける薬なんてないわ!
    ・・・でも、ほわちゃんのこと、好きなんでしょ?」

健  「・・・・・・」

巴  「うふふっ。怒ったフリは、このくらいにしてあげるわ」

健  「とと」

巴  「抱きしめてくれたのは、正直嬉しかった。
    だけどあれは、異次元の出来事ってことで忘れてあげる」

健  「ごめん」

巴  「あと一回でも謝ったら、グーで殴るよ。
    あの子、イナのことが誰よりも好きよ。そして、誰よりも仲のいい私の親友」

健  「そうだね」

巴  「きちんと元の鞘に戻って、また一緒に遊ぼう!
    笑って笑って、笑いあっていこうよ! ね?」

健  「本当にごめんな」

SE:健を叩く音

健  「くっ」

巴  「謝ったら叩くって言ったよね?」

健  「一発叩かれたかったんだ」

巴  「そ、そういう趣味?」(怪訝そうな顔で)

健  「違う! もう迷ったりしないようにさ」

巴  「よろしい! じゃ、ほわちゃんに伝えに行きなよ、好きだ~って!」

健  「今、どこにいるかわからないんだ」

巴  「っと、ここで、巴ちゃんマル秘手帳登場!」

健  「マル秘手帳?」

巴  「前にさ、ほわちゃんと一緒にラジオに出てもらったことあったでしょ? 浜咲FMの」

健  「ああ、海でインタビュー受けたやつだよね? 確か、地元でしか流れない放送だって」

巴  「さあ~て、お立会い!」


《ほたると信の旅館。ほたるの部屋》


ほたる「ね、ねぇ、信君? なにするつもり!?」

信  「ちょっと、ラジオでも聞いて気分転換をね」

ラジオ「・・・いきなりなんですが、公共の電波を使って、
    告白したいな~つう不届き者が居やがります。その名も、伊波健君!」

ほたる「え? これ?・・・信君? 信君!?」(信がほたるの部屋から去る)

ラジオ「はりきってどうぞ~」

健  「ほたる?」

ほたる「!? 健ちゃん」

健  「聞いてくれていることを祈って、話します。まずは謝らせて欲しい。
    嘘ついて、ごめん。傷つけて、ごめん。そして、もう一つ。
    ずいぶん遠回りをして気づいたけど、ほたる。
    僕は君が好きだ。心の底から好きなんだ!」

ほたる「健ちゃん。ほたるも、ほたるも大好きだよ~!」

健  「きっと、何を言っても言い訳になる。きっと、ほたるを傷つける。
    自分が酷い男だってことはわかってる。
    でも、もしも償うチャンスをくれるなら、来てくれないか?
    二人が付き合い始めた、あの場所に」


《出店の射的で信が遊んでいる。隣に巴がいる》


信  「うまくいったな~っと。んがっ、外した~」

巴  「信君、射的下手すぎ」

信  「うっせ~。しかし、よくOKしてくれたな~」

巴  「色恋沙汰って人気あるし」

信  「だけど、ディレクターさん? 何回も拝み倒して頼んだんだろ? ご苦労さん」

巴  「うん」

信  「どうしたの? 元気ないじゃん」

巴  「私もまだまだだな~って思って。ただよろめいているだけだってわかってても、
    イナが私を見つめてくれて、嬉しくなっちゃってさ」

信  「・・・」

巴  「抱きしてめられて、幸せ感じちゃったよ。うふふっ、バッカみたい。
    演技も忘れちゃって、女優失格ね」

信  「次の舞台って、喜劇? 悲劇?」

巴  「悲劇」

信  「練習していいよ」

巴  「・・・あきらめるの、本当は辛いの。
    どうして、ほわちゃんの、親友の彼氏なんだろ? 
    どうして好きになっちゃったんだろう」

信  「それは言っちゃダメだ」

巴  「え?」

信  「好きになられければよかったって思うのは、よくない。俺も経験あるけど」

巴  「だけど、出会わなければ、好きにならなければ、こんなに苦しむこと」

信  「誰かを好きになる力は、それだけでスゲェんだぜ?」

巴  「好きになったことは、無駄じゃないってこと?」

信  「無駄な恋なんて、この世に一つもない。つまり、『恋せよ乙女』ということだな。よっと!」

SE:景品が落ちる音

信  「よっしゃ! ゲット!」

巴  「この変な人形、なに?」

信  「わからん。しいて言うなら、てるてる坊主だな? いる?」

巴  「もらっとく」


《登波離橋 健が立っている》


ほたる「はぁ、はぁ、はぁ・・・健ちゃん」

健  「ほたる。来てくれたのか」

ほたる「健ちゃん!」(健に抱きつく)

健  「ほたる。ほたる、ごめんな。本当にごめん」

ほたる「いいよ。健ちゃんの気持ち、わかったから。それで、それでいいよ」

健  「僕には、愛がなんだかわからなかったけど。今、わかった気がするよ。愛してる」

ほたる「ほたるも、健ちゃんを愛してるよ・・・ううっ、ねぇ、もう離さないで」

健  「どうして泣くんだよ?」

ほたる「だって、嬉しいんだもん!」


《場面変わって 信と巴が空を見上げている》


信  「雨、あがったな。効き目あるじゃん、それ」

巴  「晴れたら金の鈴あげよう、か」

信  「やつらに全部嘘でしたって言って、謝らなきゃ」

巴  「う~ん、そんなことよりもラジオのこと教えた方がよくない?」

信  「ラジオがどうかしたのか?」

巴  「あの番組、全国ネットだよ」

信  「(口笛を吹く)」




第四話(Aパート) 終わり



メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)

2017-02-05 00:00:01 | 台本

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)


【あらすじ】

なんとかその場を切り抜けた健。
その後、四人は温泉を満喫する。
日も落ちてきて、ほたると信は合流組のため別々の旅館に移動することに。
その夜、信から健に電話がかかってきて・・・。


【登場人物紹介】


伊波 健(いなみ けん)

主人公。父の転勤をきっかけに一人暮らしを始めた。引越し先のアパートは「朝凪荘」。
浜咲学園の3年生。受験のためにサッカー部を引退。
ほたるとは2年生の冬から交際しており、"健ちゃん"と呼ばれている。
巴には"イナ"、信には"イナケン"というあだ名を付けられた。
信に誘われて、ファミレスの「ルサック」でバイトをする。
11月4日生まれ。


白河 ほたる(しらかわ ほたる)

浜咲学園の3年生。健のクラスメイトで彼女。
2年生の冬に告白して以降、交際中。1stの今坂唯笑とは同じ中学である。
姉の静流を真似てピアノを始めたが、静流よりもその才能を発揮した。学園の天才ピアニストである。
自称「ほたる的ギャグ」を会話に入れるが、内容はおやじギャグ同様、ひたすら寒い。
9月25日生まれ。


飛世 巴(とびせ ともえ)

澄空学園の3年生。白河ほたるの親友で、劇団バスケット所属。通称「あだ名大魔神」
性格は明るいというよりうるさいと見られることもしばしば。
他人に変なあだ名を付けることが趣味で、"ほわちゃん"(白河ほたる)
および"イナ"(伊波健)は彼女が付けた物である。
健とほたるには"とと"と呼ばれている。
8月17日生まれ。


稲穂信(いなほ しん)

澄空学園の3年生。健の友達で一つ屋根の下に住む(同じアパートに住んでいる)。
ファミレスの「ルサック」でバイトをしていて、健を誘った。
また、愛犬「トモヤ」は前作の三上智也からのもの。
前作ではキャラ間の関係に多少なりと関わりを持ったが、
今作では傍観者かあるいは助言者的存在となっている。
健のことを"イナケン"、ほたるのことを"たるたる"と呼んでいる。
1月4日生まれ。


【メモリーズオフ 2nd ドラマCD 一覧】

メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第一話『そのキスも、愛の言葉も』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第二話『それは夢の中の出来事』
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第三話『思いがけない恋の危機』(Aパート)
メモリーズオフ 2nd ドラマCD 第四話『もう一度、永遠の約束』(Aパート)


【キャラクター一覧】


伊波 健♂:
白河 ほたる♀:
飛世 巴♀:
稲穂 信♂:




【本編】



ほたる「メモリーズオフ2nd 第三話『思いがけない恋の危機』」(タイトルコール)




ほたる「二人とも、どうして抱き合って・・・」

巴  「どう? 虫、取れた?」

健  「ああっ、取れたよ!」

巴  「ありがとう、イナ。襟元から虫入るなんて最悪」

ほたる「なあんだ・・・」

巴  「そんなことより、ほわちゃんこそ今日は来れないんじゃ」

健  「あ、それは」

ほたる「え? ああ~、ごみんごみん。用事がなくなったから、来れるようになったの」

健  「ほたる?」

ほたる「せっかく健ちゃんが誘ってくれたんだもん、ね?」

健  「ああ、来てくれて、嬉しいよ」

信  「ま、そんなわけだ」(近づきながら)

健  「信君?」

信  「温泉旅行、楽しもうぜ!」

ほたる「ほたる、温泉入りた~い! ほら、ととちゃんもレッツらご~!」」

巴  「うわっ! うふふっ、もう、引っ張らないで~」


《ほたると巴は先に温泉へ向かう。残された健と信》


信  「なあ、イナケン。お前
    『嘘をつかないことは良いことだけど、嘘をつけないのは悪いことだ』
    って言ってたよな?」

健  「ああ」

信  「今の会話。いくつ嘘があった?」

健  「・・・・・・」

信  「その一つでもバレたら、あいつらのあの笑顔はなくなるって、わかってんだろうな?」

健  「・・・わかってるよ」


《健と信が温泉に入っている》


信  「ああ~~! いい湯だ~~!」

健  「おっさんですか」

信  「うめき声をあげるのが、温泉の作法なのだよ」


《隣の女湯から、ほたると巴の声が聞こえてくる》


巴  「ほわちゃんとお風呂一緒に入るなんて、久しぶりだね」

ほたる「ね~♪」

健  「ごほん」

信  「うおっほん」

健  「・・・」

信  「・・・」

健  「なんで黙ってるんですか?」

信  「イナケンこそ」

巴  「う~ん! いいお湯!」

ほたる「きゃっほう!」(温泉に飛び込む)

巴  「うわっ! 飛び込んじゃダメだって!」

ほたる「プールみたいで楽しいんだもん! そ~れ、クロール! 平泳ぎ! いぬかき~♪」

健  「あははっ。ったく、ほたるのやつ」

信  「やっぱ、たるたるってかわいいよな~」

健  「え?」

信  「イナケン。お前もう たるたるのこと好きじゃないんだろ? 俺にくれよ」

健  「そんな物みたいに」

信  「物みたいに捨てようとしたのは、お前だろ」

健  「僕は、そんなことは」

信  「じゃあ、なんで嘘ついて、"とと"と二人きりで旅行に来たんだ!?」

健  「それは・・・」

信  「じゃ、そういうわけなんで。たるたるは俺がいただくから」

健  「そんな」

ほたる「ところで、ととちゃ~ん? ちょっと大きくなったんじゃ、ありませんこと~?」

巴  「いやっ! やめてよ! くすぐったい!
    そーゆーほわちゃんこそ、成長したんじゃな~い?」(イチャつきながら)

健&信「ごほんごほん!」

信  「大きくなったというのは、身長のことではないよな?」

健  「おそらく」

巴  「それにしても、肌きれいだね~。真っ白でスベスベ。うりゃ~~!!」

ほたる「きゃははははっ! やめてよ! ほたるくすぐったがりなの! あははははは!」

健&信「ごほんごほん! ごほんごほん!」

信  「日本全国の健全かつハラペコな青少年の皆さん! 長らくお待たせいたしました~!」

健  「は?」

信  「題して!『稲穂探検隊スペシャル ~知られざる神秘に挑む~』」

健  「なんスか、それ!? どっから流れてるんスか、このファンファーレは!?」

信  「細かいことは気にするな! さ、行くぞ伊波隊員! 隊長の後に続くのだ!
    は~~」(息を吸って潜る)

健  「こら、待て!」



信  「うはっ! なにするんだ!?」(健に体を掴まれて、止められる)

健  「それは僕のセリフですよ」

信  「決まってるだろ? ノ・ゾ・キだよ! 温泉旅行の醍醐味は、
    『ノゾキ・卓球・夜這い』とジュラ紀の頃から決まってるんだ!」

健  「その認識、たぶん間違っていますよ。大幅に! それに、どうして覗くのに潜るんです?」

信  「はっは~。まだまだ素人だな~」

健  「信君はプロなんですか?」

信  「男湯と女湯の湯船はな、お湯を対流させるために穴で繋がっているのだよ! 
    それが我ら探検隊のアタックルートだ!」

健  「我らって、一緒にしないでください!」

信  「え? では、我輩一人で行って参る! は~~」(息を吸って潜る)


《旅館の休憩ルーム 寝ている信をほたるが団扇で扇いでいる》


ほたる「大丈夫? 信君?」

信  「へーき、へーき。あ、だけど、もうちょっと扇いでて~」

巴  「自業自得でしょ~。覗こうとなんてするから」

信  「まさか、頭がハマるとは思わなかった~。稲穂信、一生の不覚」

ほたる「そ、それで、その~、ほたる達がお風呂入ってるとこ、見えちゃった?」

信  「うんにゃ。だけど、裸のおねえさんが見えたぞ。羽生えてたけど」

巴  「っておい! それ違うでしょ~!」

健  「僕が助けなかったら、今頃」

ほたる「でもよかった。見られちゃったら、恥ずかしいし。
    健ちゃんにだったらいいけど・・・とか言ってとか言って~!」

信  「こ、こら、叩くな! い、痛いって!」

ほたる「あ、ごめんなさい」

信  「おい、イナケン。卓球で勝負しようぜ」

巴  「平気なの?」

信  「ハンデにゃなんないね。澄空(スミソラ)のピンポンキンと言われた俺様だぜ」

ほたる「アンポンタン? メンタンピン?」

信  「ピンポンキン! ピンポンキングの略!」

巴  「『グ』しか略されてないし」

健  「やってもいいですよ」

信  「よし。勝った方は・・・たるたるにキスしてもらえるってのは?」

ほたる「ええ~~!?」

信  「ま、いいだろ? 要はイナケンが勝てばいいんだ。な?」

健  「う、うん」

ほたる「健ちゃんが、そう言うなら」

信  「じゃ、始めるか~」


《お風呂上りに浴衣で四人が町を散歩している》


ほたる「あの、あの、ごめんね。だけど、ほっぺだから、いいよね?」

健  「負けた僕が悪いんだから、謝らなくてもいいよ」

ほたる「うふふふっ。こうして、健ちゃんとお風呂上りに浴衣着て歩けるなんて、嬉しいな。
    夢が一個叶っちゃった。健ちゃんにもキスしたげよっか?
    それとも、ほたるのチューなんて、いらないかな?」

健  「そんなことないよ」

ほたる「じゃ~」

信  「おい、たるたる! こっち来てみろよ~!」

ほたる「うわっ! 引っ張らないで、信君!」

巴  「イナ、どうしたの? 怖い顔して」

健  「いや、別に」

ほたる「うわ~! ほんとにおんなじ!」

信  「な? 言った通りだろ? これが本家の登波離橋(トワリバシ)」

巴  「確かに。桜峰にあるのと似てるね」

ほたる「健ちゃんとほたるが付き合い始めたのが、登波離橋(トワリバシ)なんだよね~?」

健  「そうだね」

巴  「何度も聞いた。耳にタコが出来るほど」

信  「二人にとっちゃ~、幸せな場所かもしれないけど。
    ここって、悲恋の伝説がある場所なんだぜ」

巴  「そうなの?」

信  「ああ。詳しいことは忘れたけど・・・
    二股野郎のせいで女の子が二人、谷川に落ちるハメになった。そんな話だ」

ほたる「ほんとに?」

信  「ああ。全く、俺には信じられないね。よそ見して女の子を傷つける野郎なんざ」

健  「・・・・・・」

信  「じゃ、ここらで別れようか」

健  「え?」

信  「旅館の話だよ。俺とたるたるは合流組だからな。お前達とは違うんだ」

ほたる「ええ~、そうなの~? 枕投げとかしたかったのに~」

信  「マンツーマンでやってやるよ。じゃあな、イナケン」

健  「ああ、ちょ、待っ」

信  「お前に文句言われる筋合いはないぜ」(健を遮って、小声で)

健  「・・・」

信  「じゃ、行こうぜ! たるたる!」

ほたる「う、うん。健ちゃん、また連絡するからね!」

巴  「・・・イナ?」

健  「あ、ああ」


《それぞれが旅館に着く。健の携帯が鳴る》


SE:携帯の着信音

信  「よう、イナケン。そっち、旅館着いたか?」

健  「とっくですよ! あの、ほたるは?」

信  「部屋にいるだろ?・・・本気でたるたる狙うぞ。じゃあな」

健  「待ってくださいよ!」

SE:携帯が切れる音

健  「ちょっと信君! 信君!? くそっ・・・」







第三話(Aパート) 終わり


第四話(Aパート)へ