KIRA. Library

台本置き場

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.1「さよならゲーム」

2014-03-03 02:33:51 | 台本

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.1「さよならゲーム」


【ゲーム全編のあらすじ】

時は10月、学院祭を1か月後に控えた武蔵ヶ丘学院。
ここでは今、主人公の小野真治を含めて部員が3名しかいない映画部が、
学院祭で上映する自主映画作品のヒロインを務めるはずだった
藤原由紀恵の出演拒否という危機に立たされていた。
12月に開催される「全国学生映画コンテスト」の学校代表を決める予選でもある学院祭に、
穴は開けられない。
ましてや、ライバルは人員的にも資金的にも上を行く財前聖人の率いる、シネマ研究会なのだ。
真治は映画部部長の中田英明による後押しの下、
ひょんなことからヒロイン代役として抜擢された同級生の水野真琴や、
後輩部員の桜井茜と共に、手取り足取りの状態で映画撮影に挑む。


<ゲーム版「GREEN~秋空のスクリーン~」の後日談を収録したオリジナルストーリー>

真治と付き合い始めた真琴と、真治への想いを断ち切れない茜。
そんな中、些細な事で喧嘩になった2人。 喧嘩を収めようとした真治だが生真面目な性格が災いし、
感情的になっている真琴の言い分は正しくないと茜を庇ってしまう・・・。



【登場人物一覧】

・小野 真治(おの しんじ)

武蔵ヶ丘学院2年生。映画部部長の英明に映画への情熱や実力を見出され、
自主映画『portrait』の監督へ抜擢された少年。
真琴とは撮影を通じて惹かれ合い、恋人同士になる。

・水野 真琴(みずの まこと)

武蔵ヶ丘学院2年生。奔放な性格で明るく、赤い髪の少女。
ひょんなことから『portrait』の主演女優に抜擢されるが、
演技に関しては素人。12歳の時に父を交通事故で亡くしているため、
今では家計を支える母に代わって家事全般を受け持っている。
弟の雅志との他愛無い喧嘩が、唯一のストレス解消方法。
主人公の真治とは撮影を通じて惹かれ合い、恋人同士になる。

・桜井 茜(さくらい あかね)

武蔵ヶ丘学院1年生。映画部の部員で大人しく、水色の髪の少女。
成り行きから入部した映画部で制作を手伝う一方、真治への恋心を募らせる。
絵本作家になりたいという夢を持っているが、自分には無理だと半ば諦めている。
最初は真治の傍にいるだけで満足と自分を納得させていたが、
真琴の登場によってその気持ちが揺らぎ始める。

・藤原 由紀恵(ふじわら ゆきえ)

武蔵ヶ丘学院3年生。学院一有名で、
どことなく冷たい雰囲気と美しさを併せ持つ栗色の髪の少女であるが、本来は明るく素直な性格。
映画部の主演女優だったが、後に財前聖人率いるシネマ研究会に引き抜かれてしまう。

・本山 浩一(もとやま こういち)

武蔵ヶ丘学院2年生。自尊心が高く、周囲から尊敬されたいと思ってはいるが、
いつも無様な形で終わってしまう不運な少年。
しかし、作曲の才能は本物であることから、真治に『portrait』のBGM作曲を依頼される。

・中田 英明(なかた ひであき)

武蔵ヶ丘学院3年生。映画部の部長。変人の域に達するその独特な言動や風采のため、
周囲からは奇異の目で見られている。
しかし、映画に関する知識や編集能力には優れており、絶対に妥協はしない。
真治を深く信頼しているために『portrait』の制作には直接関わらないが、
日払いのアルバイトに励んで制作費の足しにするなど、彼を陰ながら支えていく。


【GREEN ~秋空のスクリーン~ 全4話】

GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.2「シーズ・ソー・ラブリー」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.3「好きと言えなくて」
GREEN ~秋空のスクリーン~ scene.4「君の瞳に恋してる」


【キャスト一覧】

小野 真治 ♂:
水野 真琴 ♀:
桜井 茜  ♀:
藤原 由紀恵♀:
本山 浩一 ♂:
中田 英明 ♂:


【本編】


  《教室 真琴が勢いよく扉を開けて入ってくる》


真琴 「み、見つけたわよ」

由紀恵「あら、どうしたの? そんなに慌てて」

真琴 「とぼけないで!」

由紀恵「何のことかしら?」

真琴 「あなた、ヨシオに何ふきこんだの?」

由紀恵「何って、これといって特別なことは言ってないけど?」

真琴 「あなたの勝手でみんなが迷惑してるのよ! いったい、どういうつもり」

由紀恵「はぁ・・・何を言っているのかちっとも分からないわ」

中田 「カット」


《タイトルコール》

真琴「GREEN ~秋空のスクリーン~ 第1話 さよならゲーム」


真治 「部長、今度のは良かったんじゃないですか?」

中田 「うん、だが、藤原さんのセリフにもう少しタメが欲しいな。
    それから水野君。『とぼけないで』のところはもう少し突っ込んでいった方がいいだろう。
    そう、前の藤原さんのセリフにかぶるくらいでいいぞ」

真琴 「はい、部長さん」

由紀恵「はぁ・・・相変わらず中田君の要求は難しいわね」

茜  「あっ、由紀恵先輩、汗が」

由紀恵「あら、ありがとう茜ちゃん」

真治 「部長、ここの照明なんですが、水野さん・・・」(徐々にフェードアウト)

本山M「俺は、本山浩一。類まれなる天才にして将来のアカデミー賞授賞作曲家だ。
    で、その天才の俺がどうしてこんなところで、
    映画バカどもに混じってくすぶっているかといえば・・・
    ま、それには色々と事情があってね」

真琴 「ねぇねぇ、真治。ここのところはこういう解釈でいいのかな?」

真治 「うん、大丈夫。水野さんの演技は本当に素晴らしいよ」

真琴 「そ、そう?」

真治 「うん、頑張って。今日はこのシーンで終わりだから」

真琴 「うん」

本山M「部長の中田と2年の小野真治。映画部の中心はこの二人なんだが・・・
    揃って天然ボケの朴念仁。付き合わされる俺もいい迷惑なんだが・・・
    ま、二人共映画の腕は確かだからな。
    将来のアカデミー賞授賞作曲家の修行の場としては、まずまずってところだ」

茜  「どうしたんですか? 本山さん、何か考え事ですか?」

本山 「あ、いや、なんでもねぇって、茜ちゃん」

茜  「それじゃあ、ちょっとお願いしてもいいですか?
    このレフ板をこっちにこう向けておいてほしいんですけど?」

本山 「おう、任せとけって・・・ん~と、こうか?」

真治 「本山君。それ、もうちょっと上向けて」

本山M「へいへい、こうですかい。
    全く、なんで天才のこの俺がこんな映画バカにアゴでコキ使われなきゃならんのかねぇ~。
    ま、茜ちゃんの頼みならしょうがねぇんだけどな」

茜  「本山さん。それじゃあ、それ動かさないでくださいね♪」

本山 「あいよっ」

茜  「こっち、準備OKで~す!」

本山M「で、問題はだ。なんでこんな朴念仁共の部に、
    学内を代表するようなピッカピカの美少女が3人も集まってるかってことだ。
    しかも、可愛い~茜ちゃんは真治の虜だし。
    真琴ちゃんに至っては真治の彼女ときてやがる。全く、世の中間違ってるぜ」

茜  「由紀恵先輩、メイク大丈夫ですか?」

由紀恵「うん、OK。それじゃあ、頑張りましょう」

茜  「はいっ」

中田 「では、シーン31 テイク3」

SE:カチンコ音

本山M「う~ん、お姉さんタイプの由紀恵さんも捨てがたいよな~。
    って、コラコラ、俺は何を言ってるんだ。
    あっ、いや、俺の事はいいんだ。こうやって毎日顔つきあわせていると、色々あるわけさ。
    真治と真琴ちゃんのケンカなんていう珍しいもんだって見られる。
    そこで、情報通にしてクールな傍観者に徹するこの俺がそんな話の一つを
    皆さんにご紹介してしまおうってわけ。
    俺としては、ザマミロってとこなんだけどな。エヘヘ」

真琴 「み、見つけたわよ」

由紀恵「あら、どうしたの? そんなに慌てて」

真琴 「とぼけないで!」

由紀恵「はぁ・・・何のことかしら・・・」

真琴 「あなたの勝手で・・・あなたヨシオにって、あうん」

中田 「・・・カット」

真琴 「ごめんなさい」

中田 「ふむ、少し休憩をとるか」

真治 「はい、部長。休憩で~す!」


  《休憩中 真治と真琴が二人で話している》


真琴 「にゃははは、またやっちゃった・・・」

真治 「慌てることないんだよ。水野さんは気持ちさえ入っていれば、良い演技が出来るんだから。
    セリフを意識しすぎないでリラックスして。多少台本と違ったって構わないんだから」

真琴 「由紀恵先輩との共演は初めてだから、
    足引っ張っちゃいけないって、どうしても緊張しちゃって」

真治 「大丈夫。水野さんだって負けてないから、自信持って。
    実際、カメラを覗いていると僕は嬉しくなってくるんだ。
    水野さんは、どんどん成長してる。眩しいくらいだよ」

真琴 「にゃはは・・・そんなに言われると、なんだか照れちゃうよ」

真治 「本当のことだよ。水野さんは素敵だ、自信持って」

真琴 「もう・・・真琴って呼んでって言ってるのに」

真治 「そ、それは・・・いや、撮影中に公私混同は」

真琴 「真治のいじわる」

真治 「み、水野さん」

本山M「あ~あ、もう見ちゃいらんないぜ。独り者には目の毒だね。
    でも・・・ま、俺はいいんだけどさ。
    茜ちゃんが、な。まだ真治にフラれて間もないってのに、アレは酷ってもんだろ・・・
    あっ、ほら、かわいそうに俯いちゃって。
    これだから、朴念仁は・・・おほん、しょうがねぇ。ここは、俺の出番か」

本山 「ねぇ、茜ちゃ」

真琴 「茜ちゃん、何か飲み物とってくれる?」

本山M「あっ、やば」

茜  「はい、どうぞ。大女優様」

真琴 「茜ちゃん、今なんて」

茜  「気楽でいいですね。水野さんのNGでみんなに迷惑かけてるのに」

真琴 「そんな・・・」

真治 「茜ちゃん・・・その言い方は」

茜  「先輩も先輩です。水野さんばっかり甘やかして、少しは裏方の気持ちも考えてください!」

真治 「茜ちゃん・・・」

本山 「茜ちゃん、らしくないぜ。気持ちは分かるけど」

茜  「関係ない人は黙っててください」

本山M「俺、関係なかったんだ・・・ガーン!
    くっ、それにしてもこの状況はちょっとヤバイっていうか」

真琴 「茜ちゃん、ごめんなさい・・・でも」

茜  「でもじゃないです。水野さん、確かに演技上手ですけど、素敵ですけど・・・
    ちょっと浮かれ過ぎてると思います」

真琴 「えっ・・・」

茜  「みんな頑張ってるのに、これ見よがしに小野先輩に甘えたりして」

真琴 「私、別にそんなつもりじゃ」

茜  「じゃあ、どんなつもりなんですか?」

真琴 「茜ちゃん。何か言いたいことがあるなら、はっきり言って」

茜  「言ってます」

真琴 「嘘っ!・・・茜ちゃん、真治のことが!」

本山 「もうやめときなって! らしくないぜ、真琴ちゃんも」

真琴 「どうして? 本当のことじゃない・・・公私混同はどっちよ!」

茜  「ひ、ひどい・・・」(しばらく泣き演技)

真琴 「茜ちゃん。そうやってすぐに泣くの、どうかと思うわよ」

真治 「やめて、水野さん。もういいよ」

真琴 「どうして? だって悔しいじゃない! この子、私達のこと」

真治 「もういいから・・・ねぇ、水野さん。やっぱり僕らの態度に問題があったんだよ。
    茜ちゃんの言う通り、もっと周りのみんなに対して気を配らなければいけなかったんだ」

真琴 「そんなことないよ! 私はただ、真治と・・・」

真治 「頼むよ、水野さん。聞き分けて」

真琴 「そう・・・真治、茜ちゃんの肩持つんだ」

真治 「違うって」

真琴 「そうじゃない!」

真治 「水野さん、どうして分かってくれないんだ」

真琴 「分かってくれないのは、真治じゃない!」

真治 「水野さん!」


  《真琴が駆け出して、その場を去る》


中田 「・・・撮影は中止のようだな」

真治 「すみません」

中田 「仕方あるまい。役者の精神状態が不安定なまま撮影を続けても、良い絵は撮れないからな」

真治 「本当にすみません・・・」

由紀恵「ねぇ、小野君? 彼女、追わなくていいの?」

真治 「え?」

由紀恵「行かないの?」

真治 「で、でも」

中田 「行ってこい、小野。きちんと水野君のフォローをしておくように。
    明日も放課後に撮影だ、いいな」

真治 「はいっ」


  《真治が真琴を追いかけて走り出す》


中田 「茜君。それまでに機材の準備を済ませておいてくれ」

茜  「は・・・はい・・・」(涙を拭いながら返事する)

中田 「うん・・・それでは、解散」

由紀恵「中田君、相変わらずクールねぇ」

中田 「クール? 何を言っているのかよく分からんが」

由紀恵「なんでもないわよ」

本山 「そういう由紀恵さんも落ち着いてますねぇ。しっかし、マジで大丈夫っスか?」

由紀恵「大丈夫よ、きっと」

本山 「そういうもんっスかねぇ?」

由紀恵「そういうものよ」

本山M「・・・何がそういうものなのかちっとも分からないが、
    まぁ由紀恵さんほどの人がそう言うんなら間違いないだろう
    う~ん・・・まっ、いっか。他人事(ヒトゴト)だし。さてさて、どうなりますやら」


  《校舎裏》


真治 「水野さん、ちょ、ちょっと待って! はぁ、はぁ、待ってよ水野さん」(真琴の腕を掴む)

真琴 「離してよ」

真治 「怒らないで、話を聞いて」

真琴 「離して!」

真治 「水野さん!」

真琴 「何が、公私混同するのよ」

真治 「いや、それは茜ちゃんの言う通りだよ。僕らが無神経過ぎたんだ」

真琴 「違うわよ! 君のこと言ってんの!」

真治 「え? ぼ、僕?」

真琴 「ねぇ、今も公(オオヤケ)なの?」

真治 「え? 何の事?」

真琴 「分かんなきゃいいわよ! 鈍感な小野君!」

真治 「あっ、そ、そうか、ごめん・・・ま、真琴。ちょっと話を聞いてよ」

真琴 「聞かなくたって分かってるわよ」

真治 「やっぱりあれは、僕達が悪かったと思うんだ」

真琴 「だから分かってるって。そんなこと」

真治 「それじゃあ、茜ちゃんに謝りに行こう。今そうしないと、後で顔合わせづらくなるよ」

真琴 「そんなことはどうでもいいの!」

真治 「どうでもよくないよ。茜ちゃんの気持ちを考えれば」

真琴 「・・・じゃあ、私の気持ちは?」

真治 「え?」

真琴 「私の気持ちはどうなるのって、訊いてるの」

真治 「そ、それは・・・」

真琴 「何で、私の味方してくれなかったの?」

真治 「だって、それは僕らが悪いんだし・・・」

真琴 「私の味方、してくれなきゃ嫌・・・」

真治 「そんなこと言ったって、あの場合」

真琴 「真治は、たとえ私が間違っていたとしても、私の味方でなきゃいけないの!」

真治 「無茶言わないで。そういうわけにはいかないよ」

真琴 「・・・・・・」

真治 「ねぇ、どうしたの? 普段はそんな勝手な事言わないのに」

真琴 「・・・・・・」

真治 「真琴?」

真琴 「勝手な子でごめんね、バイバイ」

真治 「あっ、ちょっと、真琴! 待って!」

真琴 「バカ! 嫌い!」

真治 「真琴・・・」


  《次回予告》


由紀恵「こんにちは、藤原由紀恵です」

本山 「で、俺天才の本山ね」

由紀恵「水野さんと小野君、なんだか拗(こじ)れちゃったみたいね」

本山 「だから言ったじゃないっスか。あそこで止めないで良かったんっスか?」

由紀恵「でもねぇ・・・そういうのって二人の問題だと思わない?」

本山 「そりゃあ、そうなんっスけどね。あの二人より、茜ちゃんの方がかわいそうっていうか」

由紀恵「茜ちゃん、まだ小野くんのこと諦めきれてなかったのかしら」

本山 「そんなの見てりゃマル分かりじゃないっスか」

由紀恵「ふふっ。本山君、よく見てるんだ」

本山 「あっ、いや、その・・・か、からかわないでくださいよ」

由紀恵「ふふっ、というわけで。
    次回は茜ちゃんが小野君に猛烈なアプローチを仕掛けちゃうみたいよ」

本山 「えっ!? そ、そりゃヤバイっスよ! え? 何で茜ちゃん?
    この天才を差し置いてあんな奴のことなんか・・・」

由紀恵「次回『シーズ・ソー・ラブリー』」

由紀恵&本山「お楽しみに!」






scene.1    終