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解決できるか?保育士不足。地域限定保育士(正式名称:国家戦略特別区域限定保育士)

2015年10月24日 | 日記

今日と明日、奥さんが保育士試験を受験しに、日大理工学部まで行くらしい。

20数年前に結婚したての頃は「育児なんて」「自分以外の生き物の面倒なんて」と子育てどころか子作りでさえ抵抗があったのに、男子をふたり育てて、縁があって地元のプレ幼稚園のお手伝いをすることとなり、保育士の資格を取ろうと思ったようだ。かれこれ五年がかりで受験しているが、合格しない。

が、今年は、「地域限定保育士(正式名称:国家戦略特別区域限定保育士)」となるための試験制度が新たに創設され、8月に全国で行われる試験に加えて、2回目の試験がこの10月に行われることになったので、この受験に行っている。

この制度は、平成27年通常国会で成立した「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律」により、資格取得後3年間は当該自治体内のみで保育士として働くことができ、4年目以降は全国で働くことができる制度で、地域が神奈川県・大阪府・沖縄県・千葉県 (対象地域:成田市)に限定されている。いわゆる「保育士不足」への対策である。

保育士になるには、厚生労働大臣の指定する保育士を養成する学校その他の施設である「指定保育士養成施設」(大学・短大・専修学校など)へ入学し、指定科目の単位取得と校外実習を終え卒業する方法(保育士国家試験の受験が免除)と、各都道府県が実施する「保育士試験」に合格する方法のどっちかの道がある。昔は、「保育士試験」は各都道府県が日程もバラバラで複数受験できた。僕の会社の後輩の女子が、勤務しながら通信講座で勉強して受験し合格した時に、山梨県で合格したと言っていたから。ところが、2004年からは都道府県知事が一般社団法人全国保育士育成協議会に試験事務を行わせることができるようになり、現在は全都道府県の保育士試験の実施に関するすべての事務を行っている。おそらくこのあたりから全国同一日の試験になったんだろう。

一般社団法人全国保育士育成協議会は、不思議なことに都道府県から事務委託を受けるのに、会員のほとんどが「指定保育士養成施設」である学校だったりする。役員には名を連ねていないが、ネットで見ていると厚生労働省の天下り先の香りもする。「指定保育士養成施設」は、ある意味独学で受験する「保育士試験」とは競合関係にもなり、高い授業料を払って資格を取ってもらう営利団体でもある。

厚生労働省のホームページに「平成13年1月31日に児童福祉法の一部を改正する法律が公布され、平成15年11月29日から施行されております。この改正により保育士資格が法定化されました。この改正は、保育士資格が詐称され、その社会的信用が損なわれている実態に対処する必要があることや、地域の子育ての中核を担う専門職として保育士の重要性が高まっていることなどに対応するため、保育士資格を児童福祉施設の任用資格から名称独占資格に改め、併せて守秘義務、登録に関する規定が整備されました。」とあり、保育士となるには、資格要件を有する者が、都道府県の備える保育士登録簿に氏名、生年月日その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。資格に関する管理要件が厳しくなったんだろうな。(http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shikaku_shiken/hoikushi/

この都道府県が実施する「保育士試験」の合格率(全国平均)が、昨年(2014・平成26年)が19.3%、2013年が17.4%、2012年が18.6%、制度が始まって最低の合格率が2008(平成20)年が10.6%と決して高くない。

 

【考察】

地域限定とはいえ、せっかく地域限定保育士の制度ができて保育士不足を解消しようとするのはいいことだと思うが、どうにも「指定保育士養成施設」を擁護し、「一般社団法人全国保育士育成協議会」の存在意義を堅持していくための役人らしい「仕組み」を勘ぐってしまう。

そもそも「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律」の「国家戦略特区」は、首相官邸のホームページを見ると、「産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るため、国家戦略特区を突破口に、あらゆる岩盤規制を打ち抜いていきます。」なんて書いてあるが、そもそもの規制は国が作ったもので、自分たちで作って、自分たちで打ち破るってただのマッチポンプじゃん。放火しておいて、第一発見者になるみたいなもん。それとも業界団体=「一般社団法人全国保育士育成協議会」が許してくれないと言ってるのだろうか?

実は長男が美術大学受験で浪人しているのだが、最近になって保育士になりたいと言い出し、職業選択として「保育士」を見ていて思ったのだが、保育士不足の真因は何か?ここにメスを入れないとだめだと思う。(専門家が見たら笑っちゃうかもしれませんが…)

・所得が低くキャリアパスが乏しい

・新卒者でない、育児を終えた母親たちの活躍が期待される領域だが、保育士資格取得のハードルが高い

・勤務時間などを考えると、肉体的にハード

・昨今のモンスターペアレンツ対策も含め、乳幼児を預かる点から、安全配慮等、精神的にもハード

・保育を担う職員には保育士資格保有者を100%配置することが求められている

・最も大切な「人を育てる」という観点での、資格教育ができていない(知識偏重)

・これに加えて男性では、更衣室の問題、乳幼児の母親の偏見、乳幼児の中には男性苦手等固有事情も発生する

もちろん保育園を経営する側の視点からすると、そもそも新卒者を安価な賃金で雇い入れ、結婚とともに退職していき、新たな新卒者を採用するというサイクルで、安い労働力を維持・確保していくことで経営が成り立っていたわけで、さらに少子化の中では無認可保育園などもあり競争環境が厳しくなっている背景はわかる。

ますます女性の社会進出を願うのなら、そして女性管理職比率を目標に掲げる与党政策を推進するのなら、そしてこの先社会的な問題に直面する「超高齢化社会」に向けた対策を実行するのなら、次の世代を担う子どもたちは、まさに「国の宝」として「社会で育てる」仕組みを早急に確立して、女性が仕事に出やすい環境を作りつつ出生率を上げていくことが課題であることは明白。また保育士不足という「数の問題」だけでなく、「質の問題」にも影響のある仕組みを考えるべきだと思う。

真因解決の最も効果的なのは『所得』『キャリアパス』を確保すること。これを解決できれば、すべてが好循環に回りだす。

一億総活躍社会の実現』なんて安倍政権は言ってるが、小手先の仕組みではなく、コンクリートに回す予算や各省庁の一過性の実証事業費などを削減してでも、「国の宝」を預かり育てる保育環境・児童教育環境へ予算を回すべきである。所得が上がり、男女共通の花形職業になれば自ずと人材も育つだろう。

構造的には、もっと若い男性と育児を終えた母親たちの活躍の場になり、現状の所管官庁が厚生労働省と文部科学省に分かれる『保育園』と『幼稚園』を一体化させ、「国の宝」を教育という観点で磨き上げていく構造にしなくてはならない。そうなると資格体系の見直しも必要なのに、「幼保連携型認定こども園」での職員(保育教諭)に「幼稚園教諭免許状」と「保育士資格」の両方の免許・資格を有することを要求している時点で終わっている。

宝物を守り、磨くことに、人と時間とお金をもっと投下しないと、この国は終わる。

いい加減、馬鹿な政治家と役人のおもちゃにしちゃいかんぜよ。

余談だが、この国家資格の『保育士』だが、昔は「保母」といわれていたもので、1985年の男女雇用機会均等法の制定以降、男性に対しては保母とは対象的に、「保父」という呼び名が使用されるようになった。しかし男性の場合、公式文書などの職業欄には正式名称「保母」を記入することになり、これら世相を反映して法が見直され、1999年に保母の名称改正が行われたのが『保育士』の始まりだそうで、振り返ってみると逆に『保父』というキャリアを確立した方がよかったのかもしれないとつくづく思う

【おっとっと、言いたい放題はこの辺で】

奥さんの受験から飛躍してしまったが、長男の職業選択にも関係してたので少しヒートアップしてしまった。

まずは合格を願う!

 

 

 

 


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