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極私的日々忘備録ーみたものきいたものよんだもの

Van Morrison "Magic Time"

2005-07-18 21:08:29 | Music
イギリスのベテランシンガーの新作。特に新機軸がある訳ではなくいつものとおり、リズム&ブルースをベースにジャズやブルース、そして自身のルーツであるアイリッシュの要素を混ぜたゆったりした曲が続くが、どれも安定した透明感のある作風に力強い歌唱で、安心して聴ける1枚。

中沢新一「アースダイバー」

2005-07-18 21:03:41 | Books
もうひとつのBlog「東京の水2005Revisited」の更新で手一杯でこちらはすっかり間があいてしまった。その「東京の水」と似たような事を中沢新一がやってるよ、という友人からのメールで紹介されたのが本著。結構売れているようである。

東京の地形を洪積層で形成された台地と沖積層で形成された谷筋でとらえて色分けし、旧石器遺跡、縄文遺跡、弥生遺跡と寺社や墓地をプロットした地図をもとに、東京の風景を縄文時代に直結した視点から、湿った土地と乾いた土地、聖と俗、生と死といった対比を鮮やかに浮かび上がらせつつ読み解いていく。
縄文時代の海進期、海の水位は今より高く沖積層の谷筋がちょうとフィヨルド地形のように数々の入り江となっており、縄文人たちは入り江に突き出た岬=洪積層の台地を聖地として神社をつくっていたという。そしてこの岬の聖地の多くが現在も街中の寺社や墓地として同じ場所に残っているという指摘は魅力的だ。

「東京の水」では、東京の風景について、鉄道路線や道路による空間把握から、川の流路と地形、そして水による空間把握への再構成を図ろうという意図を込めているわけだが、本著でも、結果的に沖積層の土地=川を辿ることとなっており、また、東京の空間把握の再構成という視点は確かに共通している。

それにしてもイメージの連鎖やアナロジーによる議論の鮮やかで自在な展開は流石だ。そして本著のもとになったのが「週刊現代」への連載記事というのには驚いた。

高橋哲哉「靖国問題

2005-07-18 20:56:26 | Books
閣僚の公式参拝やA級戦犯の合祀問題、国立追悼施設の問題、近隣諸国との関係など、様々な問題それぞれに賛否両論が渦巻いていて、ややこしく複雑な靖国神社絡みの問題を、感情的な側面、宗教的な側面、政治的な側面、文化的な側面から丁寧に思考を展開していっている。
筆者の立場はやや理想論に過ぎる部分もあるし、立脚点となっている反戦平和的な思想についての掘り下げが本著では無いため、後半の議論において素朴な平和論に見えてしまう側面がなきにしもあらずであったけれど、情報の整理とそれらに対する論理的に掘り下げた思索は、筆者の立場への賛否を問わず議論の基礎となり得るものであると思う。特に遺族感情に対する思索は哲学者ならではの丁寧な分析だし、文化的側面に対する「日本固有の伝統」の虚構性の指摘についても然りだ。「右翼」だ「左翼」だといった思考停止のレッテル貼りによる感情的な賛成論・反対論では何も生まれない。
本書での筆者の主張を丸呑みにする必要はそれこそ全くないが、靖国問題を論理的に考えるためのてがかりとして一読の価値はあると思う。