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History, Strategy, Ideology, and Nations

1月16日

2010年01月16日 | INTELLIGENCE
 従来、米国・国家安全保障局(NSA)について何か知りたいと思った時には、
 ジェームズ・バムフォードの著作を参照するのが、最も手っ取り早い方法であった。
 だが昨年、それに対抗するものとして、次のような著作が出版された。

 Matthew M. Aid
 The Secret Sentry: The Untold History of the National Security Agency
 New York: Bloomsbury Press, 2009

 著者は、元国防総省情報分析官だった人物で、
 退官後、米国の通信情報史を20年以上にもわたって追跡してきた在野の研究者である。
 これまで通信情報の分野と言えば、高い国家機密の壁に阻まれ、
 とても実証的研究に耐え得る史料環境にはないと思われてきた。
 実際、バムフォードも、情報公開法を駆使して、できるだけ文書収集に努力していたけれども、
 やはり細かい事実については、情報関係者へのインタビューによって補われていたし、
 その傾向は現代に近づくごとに強くなっていることは否めなかった。
 
 だが、本書をひもといて、最初に驚かされるのは、脚注の充実さである。
 これだけ見ても、NSAがもはや「秘密のベール」に覆われた存在ではなくなったことがよく分かる。
 本書の登場によって、そうした表現を用いることは陳腐と言わざるを得ない。
 最初の3章では、主に第二次大戦からNSA創設までの組織的変遷について取り上げ、
 残りの章では、国際紛争における通信情報の役割について検討する構成となっており、
 各章の分量はそれほど多くなく、トピック毎に小見出しが打たれているので、
 興味があるところだけ読むようにしても読みやすい作りになっている。
 一般読者に対しては大きなインパクトを与えないかもしれないが、
 情報活動を学術的に研究する者にとっては、きわめて有意義な著作と言えるだろう。