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冬桃ブログ

病み猫を見つめて

 フータの鼻の悪性リンパ腫がわかってから、
もう三ヶ月がたとうとしている。

 猫の場合も人間と同じで、抗癌剤治療、放射線治療がある。
 しかしどちらも、猫の身体への負担、ストレスは大きい。
 私にとっても物理的に難しい。
 猫の放射線治療を行っているのは、かなり遠くの大学病院だ。
 車がないから、重いキャリーバッグを持って電車やバスを
乗り継いで行くことになる。
 一ヶ月に一回ということなら、なんとかなるかもしれないが
週一回、あるいはもっと、ということになると、
とても続かないだろう。

 抗癌剤治療は、お世話になってる動物病院の本院で
行われることになるが、これも入院させたり日帰りだったりと
状況に応じて、いろんな意味できつい治療を続けなければならない。
 
 動物病院の院長は友人なので、電話で相談してみた。
「まあ、ぼくの立場で言うのもなんだけど、それで
完治するわけじゃないからね。副作用とかストレスとか、
猫への負担が大きいから、もうそっとしておいて、
なるべくリラックスさせてやるほうがいいよ」

 院長はそうおっしゃったが、担当の若い先生はちょっと違う。
 きっちりと高度医療の説明をし、マスクから出た目を
まっすぐ私に向け、
「どうするか、決めるのはフータちゃんではありません。
私でもありません。飼い主である山崎さんです」

 これはたいへんなプレッシャーだったが、かなり悩んだ末、
やりません、という結論を先生に伝えた。

 では穏やかな治療を、ということになり、抗生物質と
ステロイド剤の錠剤を一日一回、服ませることになった。
 しかしこれがたいへんだった。
 食事に錠剤を混ぜたら食べなくなるので(非常に敏感に察する)、
捕まえて、むりやり口にいれるしかない。
 これを続けるうちに、フータは私を警戒して近づかなくなった。

 けれど、ノアと違ってフータは甘えんぼだ。
 居間の椅子に座ってると、必ず自分も乗ってくる。
 毎晩、私のベッドへ来て一緒に寝る。
 具合が悪いいまは、いっそう、くっついていたがる。
 私はフータにとって、たった一人の頼りにすべき人間だ。
 なのに、その人間を警戒して近づけないなんて……。

 鼻の中にできた腫瘍はだんだん大きくなり、いまは二センチ
くらいのコブになった。体重も、春から較べると2キロ減った。
 鼻水も垂れるし、目はいつも潤んでいる。
 
 先生に相談して、薬をやめてみた。
 薬でめざましい効果が上がるわけではないのなら
止めて、リラックスさせた方がいいのではないかと考えたのだ。
 食事も、病院で出された高カロリー栄養食を、スポイトで
無理に食べさせようとした。
 が、これも薬と同じで、いやがって私から遠ざかるばかりなので止めた。

 いまは一週間に一度、病院に連れて行き、一週間効果が続くという
ステロイドと抗生物質の注射を打って貰う。
 その際、栄養剤の点滴もしてもらう。
 あとはなるべくリラックス。私の傍らに居るときは、
首からおなかにかけて撫でてあげる。
 フータはこれが大好きで、やがて気持ちよさそうな寝息をたて始める。
 
 癌になった時、人であれ、猫であれ、どういう治療を
どこまでやるのが患者にとって、また介護する者にとって
最善なのか、あらためて考えさせられる日々である。

 私のベッドは昼間もフータに乗っ取られていることが多い。
 頻繁にシーツや枕カバーを取り替えても、あちこち、鼻汁のシミが……。


 「フータにかまけて、俺の毛梳きを忘れんじゃないぞ」


 
 
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