地震が起きた時、私は仕事で鳥取にいた。会議中だった。
気持の悪い横揺れが始まったが、まあ、この程度の地震はよくあることだから
とあまり気にしないでいた。
その会議に東京の人がパソコンで参加していた。机に置かれたパソコンに
東京にいるその人が映っている。
「地震だ!」と、その人が言った。次の瞬間、姿が消えた。
え? 東京も揺れてるんだ。するともしかして横浜も? 不安が湧いた。
その人の姿がまた現れた。「後ろの物が全部落ちました。なんかたいへんな
ことみたいです」
たいへんなこと? 会議に出ていた人達が、携帯でニュースを見始めた。
「マグニチュード8の地震が起きてるみたいですよ」
その中の誰かが言った。パソコンの向こうにいる東京の人は、会議どころ
じゃなくったらしく、姿を消してしまった。
それからは横浜が気になってたまらなかったが、
このあとは兵庫へ移動することが決まっている。落ちつかないまま駅へ。
新幹線だの在来線だのが停まっているらしいが鳥取から兵庫へ行く線は
普通に動いている。
兵庫へ着いてからは、我が家の近くに住む人となんとか連絡を
とろうと試みた。家には猫が2匹いる。猫の安否と家がどうなってるのか
心配でたまらない。でも横浜はどこも電話が通じない。
なるべく平静なふりをして、現地の方々と食事をした。翌日行われる
イベントをなんとか成功させようと、その方達は頑張ってこられた。
心ここにあらずでは申し訳ない。
11時頃、ようやく宿の部屋に落ち着いてテレビを観ることができた。
東京も横浜も在来線が停まっている。帰れない人達が街に溢れていた。
家に帰りたくてたまらなかったが、新幹線が停まっている。明日は動くのだろうか。
睡眠誘導材をいつもの倍のんで、無理に少し眠った。
朝早く目覚めてさっそくテレビを観た。東海道新幹線は動いている。
良かった、帰れる!
しかしイベントを観なければ申し訳ない。午後一時過ぎまでイベント会場にいた。
その後、姫路まで車で送っていただいて新幹線に。
無事、横浜に帰宅することができた。
が、家に入って茫然。引き出しという引き出しが泥棒に入られたあとのように
開いている。私の机がある部屋には本箱が三つあるのだが、無事だったのはひとつだけ。
ガラス戸棚の本箱は大きく開き、中の本が飛び出している。
もうひとつ、スチールの本箱はひどかった。本が散乱しているだけではなく
斜めに傾き、いまにも倒れそうに傾いている。隣にある物入れのおかげで
かろうじて立っていた。下の方はスチール自体が歪んでいる。
転倒防止のポールは二本あてがってあったのだが、二本とも吹っ飛んでいた。
荷物を放り出し、猫たちの世話も後回しにして、本箱の本を全部出した。
とりあえずこれを空にしないと危ない。
地震が起きた時この部屋で机に向かっていたら、後ろから飛んできた本に
頭を直撃されたかもしれない。
この本箱が倒れたらドアを塞ぐかたちになり、部屋から出られなくなっていただろう。
別の部屋の、本がたくさん入っている押し入れは中の本が崩れ、扉が開かない。
書庫に使っている三畳くらいの部屋も、本が崩れてドアが開かなくなっていた。
人にやっかいをかけるのは申し訳ないが、私の力ではどうにもならない。
兵庫県のイベントへ一緒に行き、共に横浜に帰ってきた男性が、「困ったことが
あったら連絡ください」と言ってくださってたので、お言葉に甘えて電話をかける。
もし明日、時間があれば助けていただけないかとお願いした。
お昼頃に来ていただけることになった。
それから猫のトイレを掃除し、御飯をあげ、落ち着こうとお風呂に
お湯を張った。が、ガスが機能しない。
もしかすると、うちだけじゃないもと思い、マンションの管理会社に電話をした。
同じ相談がやはり来ていた。こういう事態になるとガスが自動的に止まるらしい。
管理会社の指示に従って、ガスメーターのそばにあるコックを押し、停止を解除する。
心細さで落ち込んだが、最被災地の方達の苦しみはこんなものではないだろう。
あ、また揺れてる! 怖いけど、とにかくお風呂に入ろう。
家に帰れたし、猫が無事だっただけでもありがたい
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