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「男性保育士物語」を読んで

2014-09-14 11:55:19 | 福祉
「男性保育士物語 みんなで子育てを楽しめる社会をめざして」 小崎恭弘 2005年:ミネルヴァ書房

保育士として12年勤務し、現在は大阪教育大学教育学部 准教授の筆者が男性保育士について、筆者自身の経験を中心に男性保育士の意義や社会の中での子育てなどの考え方も含めて書かれた本です。

2005年5月発売なので、ほぼ10年前ということになり、描かれている時代は20数年前~10年前といった頃です。本書で描かれている姿はまだ「珍しい」存在としての男性保育士ですが、現在は珍しくはなくなったけど、圧倒的に少数派なのは変わりないといった状況でしょうか。そのため、世の中の偏見に関してはこの20年間でだいぶ変わってきたなと思う反面、少数派としての悩みなどは変わらない部分があるなと思います。

また、男性保育士や育児をするパパに関する理解は表面的には進んできたと思う反面、性差によるレッテルを根強く持っている社会だなというのは、今も変わらないんだよなと改めて思いました。保育に際して性別は一つの重要な要素ですが、一人一人が持つ要素は様々で、その中の一つに過ぎないというのが著者の考え方で、現在もそれを広めている立場であり、NPO法人ファザーリングジャパンの顧問も務めています。

私も現在の仕事柄、よく男性保育士とも接していますが、とにかく集団の中で少数派というのは難しい面があるよなというのが率直な感想です。もっと比率が高まるといいなと思っています。そんなことを思う中、筆者の紹介したEUにおける男性保育士のレポートのなかで、興味深い記述がありました。「保育においては、社会的地位や作用による区別を含み、性別により分離された労働市場の一端となっていない男性は、ごく少数しかいない。男性に支配された職業は社会的地位が高く影響力が強い。そしてそれと正反対のことが女性が支配的な職業に関して言える。保育や福祉に関連する職業は社会的地位が低く、影響力が弱いがこれに反して、子どもや老人そして病人と密接に触れ合い、多大な満足感を我々に提供することができるのである。」
園の保育の中での男性保育士のことだけでなく、男性保育士の社会的意義を考えることは、日々悩んでいる男性保育士にとっても大切な視点かもしれません。

この本を読んでいて少し引っかかっていたのが、これだけ男性保育士について熱く語っている筆者が、この本を書いた時点では職を辞して大学講師になっていたこどです。社会に対する問題意識が高じて、大学教授の道を選んだのかなと思いましたが、保育士時代の話だけでなく、そう決断した経緯も書いてくれるともっと共感して読みやすかったのかなと思います。




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