yokkieの気になること

障害者・児童福祉のことが多くなるかな

読書感想2つ

2014-03-26 21:56:14 | 福祉
『新版 ADHDのび太・ジャイアン症候群』 司馬理英子

ロングセラーの本に、新しい知識や情報を加味して改定した新版、といっても2008年ですが、今でも十分大丈夫な内容ですね。

サブタイトルの「ADHDとのじょうずなつきあい方がわかる」どおり、ADHDの子どもたちの特性を理解し、じょうずにつきあって子どもの持っている力を伸ばしていけるようにと書かれています。

当然専門家として、ADHDの特性やつきあうコツを書いてあるのですが、著者もADHDの子を最初はADHDのことを知らずに育てた経験を持っているので、そうした親子をはげます気持ちが伝わってきます。

読みやすいですし、ADHDについてはしっかりした知識はなかったので、楽しく読むことができました。しかし、かなりあてはまる部分があるなと思いました。不注意項目なんて、子どもの頃はまさにそのとおりな部分がたくさん。でも、すごく困ったわけではないので、診断の必要はないですが。学校にランドセルを忘れていったことのある人はあんまりいないみたいですね、おかげで話のネタにはなります!(^^)!


『自閉症スペクトラムとは何か』 千住淳

自閉症については、ADHDよりたくさんの方と接してきたし、知識もそれなりにはあるかと思ってますが、基礎研究者が遺伝について、心の働き、脳の機能からの視点、発達について、といった様々な角度から最新の知見を提供してくれるこの本は、知的好奇心の面からもとても興味深く読むことができました。自分の知識が知っているつもりの部分が結構あったことも気づかされました。

本の前半で自閉症に関する定義について、最新の診断基準DSM-5にのっとり説明してくれるのですが、それがとてもわかりやすかったです。私も自閉症やアスペルガーといった従来の診断が自閉症スペクトラム障害に統一されたのは知っていましたが、その検討経緯、理由などはわかっていなかったので、最新の理解を知ることができてよかったです。

のび太・ジャイアン症候群の本とはちがい、具体的なノウハウが書いてあるわけではないのですが、その分、自閉症という診断をする意味、さらには社会における「障害」とか「個性」についても考えることができる本かなと思います。こういう基礎研究に取り組む方って大切なんですね。著者の優しさも伝わってくる良本だと思います。

そういえば、身近なこととして、東学園が長年この著者の研究に協力していることが書いてありました。ありがとうございます。




ベビーシッター事件への意見を読んで

2014-03-23 10:22:03 | 福祉
ベビーシッターに預けての死亡事件が話題になってます。
単に容疑者や母親を叩いても何も変わらないことは多くのところで書かれています。でも、保護者の方々への注意喚起は必要として、それ以上の構造的課題をどう考えればいいのかは難しいです。
そこで気になった記事から考えてみました。

フローレンスの駒崎さんは、ベビーシッターへの公的支援が全くないことを指摘しており、補助券のような助成制度を提案されてます。
ベビーシッター宅での2歳児死亡事件についての解説

財源論にまで踏み込んでいて、資産を持つ高齢者の年金カットという正直乱暴でなかなか実現可能性が低いかなという提案をされています(わざとかな)。
影響力のある人は、啓発的な意味合いも含めてわかりやすく目立つ提言をするのもいいのかもしれません。

でも、子ども関係の予算増額は全く賛成だけど、子ども子育て新制度の予算も財源不足で削られそうななか、施設型中心の日本の福祉制度にそれを組み込むのは大変だぞと思ってしまいます。保育所も足らないし、質の確保のお金は削られそうだし、ベビーシッターに国費を出すなら、新制度にも対応できなそうなベビーホテルはどうするとか‥

結局、ベビーシッターという個別のサービスの話と、子育て支援への予算という財源の話を一緒にしてしまった結果、他の様々な政策との縄張り争いの話メインになってしまったのかなと感じました。

予算は予算で大切だけど、今まず大切な視点は、顔のみえる支援て大切だねということの確認なんじゃないかと思わされたのが、ばおばぶの五十嵐さんのエントリーです。
「制度外の福祉(人の福祉)」においては、事業者の姿が曝け出されているべきだ --ベビーシッター事件から考える

私は制度上の福祉をほぼメインで考え関わっている人間ですが、ここで書かれたことは重要な視点だなと思います。
制度上の支援だって、顔がみえることは大切ですが、誰か個人に依拠し過ぎない仕組みづくりも大切です。
制度に乗らない支援では、顔がみえることは生命線になってくるのかもなあと思いました。

整理すると、現状は制度外の支援であること、かなりの利用者がいること、顔のみえない提供形態が増えていることを再確認させられました。まずは現状で少しでも顔のみえる方法を考え、その重要性を保護者に伝える努力をし、その上で制度化の話も考えるということでしょうか。顔のみえる方法かあ。