yokkieの気になること

障害者・児童福祉のことが多くなるかな

『自閉症は漢方でよくなる』を読んで

2015-02-14 16:12:47 | 福祉
『自閉症は漢方でよくなる』 飯田誠:著 2010年

 障害や病気に効果的!とうたう本は、どうしても人目を引くのを第一にしたタイトルがつくことが多い。手に取ってもらわないと読んでもらえないというのはわかるのだが、この本も表紙に書いてあるとおり、漢方で緊張が和らぐと楽になるといった内容である。だいたい、自閉症がよくなるってどういう意味?と突っ込みたくなる。自閉症そのものはよいとかわるいじゃないよね、本当は。

 さて、本の内容に話を戻すと、国立精神研究衛生研究所で長年精神遅滞や自閉症の研究・治療にあたった後、開業医として多くの自閉症スペクトラムの児童の治療にあたっている著者が、漢方によって睡眠障害や行動障害が改善され、穏やかになる等の効果があったという経験をまとめた本である。前半は自閉症についての説明と漢方薬がなぜ効くかの分析。後半は症例及び処方例となっている。

 改善例については本格的な検証データではないため、症例の児童の行動障害などが改善されたのは確かなのだろうが、漢方の効果なのか、他の効果なのか、発達に伴う成長なのかはわかりませんというほかはない。手間とお金とを掛けてやってみたいなら、害はあまりなさそうですねというくらいの感じだろうか。

 自閉症について書かれていることは、豊富な臨床経験からの言葉でもあり、興味を引く内容が含まれている。特に関心をもった部分をいくつか挙げる。

 まず、自閉症の人は緊張が高い状態にあるので、緊張を取るだけでもよい影響があるという考え方は感覚的には共感できる。自閉症の症状として緊張が高いのか、健常者向けの世の中で生きていくことで緊張が高くなるのかはわからないし、緊張に対して漢方が効果があるかもわからないが。


 また、精神遅滞がある児童は運動機能の命令能力の発達が遅いために歩き始めが遅い。歩き始めが普通なのに精神遅滞を伴うという診断が出た場合は、自閉症の特性によって知能が発揮できない状況であり、精神遅滞を伴う自閉症とは違うという説明は、正しいかはわからないが、頭に留めておいてもよい考え方なのではと思った。感覚も知的発達もアンバランスな自閉症スペクトラムをどう捉えていくべきかという課題に関わることなのだろう。

 いろいろな考え方を知るという意味でなかなか興味深い本である。

『跳びはねる思考』を読んで

2015-02-07 19:24:37 | 福祉
『跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること』
東田直樹:著 2014年

重度の自閉症者でありながら、文字盤やパソコンを使って言語表現をする著者は、13歳の時の著作が翻訳されて欧米でベストセラーになり、昨年NHKがドキュメンタリー番組を制作・放送したこともあり、さらに著名となっています。

独語や常同行動、パニックなどの行動面、音声言語や直接コミュニケーションでの困難さに比べ、文字盤などでのコミュニケーションのギャップが多くの人に強い印象を与えているのでしょう。

正直、この本の書評を書くのは悩ましいです。著者はもともと、ファシリテイテッド・コミュニケーション(FC)という手法で表現しています。簡単に説明すると、介助者が助力することで、文字盤、パソコン、指文字等による情報の出力を行うことです。明らかに非科学的なあやしいものもあれば、科学的に立証されておらず判断が難しいものもあります。現在の著者は、先述のNHKの番組を見る限り、インタビュー等に対して自力で文字盤を指さししながら話すことができるので、いわゆるFCとは違うようにもみえますが、私にははっきり判断することはできません。

表現方法について考えても、現段階では結論が出ないので、少なくともかなり多くの人が感動したり、子どもの気持ちが理解できたと感謝したりしている本であり、私もちょっと読んでみましたということで、内容に関してだけ、以下は書きたいと思います。少なくとも、著者自身のことをそれほど知らずに読む本も多いわけですしね。

この本は電子メディアへの連載をまとめたものなので、短いエッセー集の形式です。内容的には大きく2つの側面があると思います。一つは、自閉症の人はこんな風に捉えているんだという捉えができる面、もう一つは社会や人生へのスタンスという哲学的な面です。エッセーが2つに分かれているというより、両側面を兼ね備えている話が多い印象です。

まず言えるのは文章が読みやすく、表現がわかりやすく、なるほどなという視点があって面白くよめることです。先ほどの2側面から受け取れることは、1点目の自閉症の人の物事や世の中の捉え方という部分では、「なるほど」とか「へー」とか思いつつ、それは著者独特の捉え方なのか、自閉症の人共通の部分なのかはわからないなということでした。2点目の哲学的な面に関しては、前向きでやさしい内容でありつつ、言い方には強い意志が感じられるなと思いました。簡単に言うと、前向きで共感できる捉え方が多いけど、自分はそんなに自信はないなという感じです。

自閉症の人が家族などにいて、苦しい気持ちにいる人が読んで前向きになれたといのはよくわかります。前向きにしてくれる効果はよかったんじゃないかなと思いつつ、自分にとっては少し視点を広げてくれるけど、悩ましい本だよなというのが感想です。