yokkieの気になること

障害者・児童福祉のことが多くなるかな

『跳びはねる思考』を読んで

2015-02-07 19:24:37 | 福祉
『跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること』
東田直樹:著 2014年

重度の自閉症者でありながら、文字盤やパソコンを使って言語表現をする著者は、13歳の時の著作が翻訳されて欧米でベストセラーになり、昨年NHKがドキュメンタリー番組を制作・放送したこともあり、さらに著名となっています。

独語や常同行動、パニックなどの行動面、音声言語や直接コミュニケーションでの困難さに比べ、文字盤などでのコミュニケーションのギャップが多くの人に強い印象を与えているのでしょう。

正直、この本の書評を書くのは悩ましいです。著者はもともと、ファシリテイテッド・コミュニケーション(FC)という手法で表現しています。簡単に説明すると、介助者が助力することで、文字盤、パソコン、指文字等による情報の出力を行うことです。明らかに非科学的なあやしいものもあれば、科学的に立証されておらず判断が難しいものもあります。現在の著者は、先述のNHKの番組を見る限り、インタビュー等に対して自力で文字盤を指さししながら話すことができるので、いわゆるFCとは違うようにもみえますが、私にははっきり判断することはできません。

表現方法について考えても、現段階では結論が出ないので、少なくともかなり多くの人が感動したり、子どもの気持ちが理解できたと感謝したりしている本であり、私もちょっと読んでみましたということで、内容に関してだけ、以下は書きたいと思います。少なくとも、著者自身のことをそれほど知らずに読む本も多いわけですしね。

この本は電子メディアへの連載をまとめたものなので、短いエッセー集の形式です。内容的には大きく2つの側面があると思います。一つは、自閉症の人はこんな風に捉えているんだという捉えができる面、もう一つは社会や人生へのスタンスという哲学的な面です。エッセーが2つに分かれているというより、両側面を兼ね備えている話が多い印象です。

まず言えるのは文章が読みやすく、表現がわかりやすく、なるほどなという視点があって面白くよめることです。先ほどの2側面から受け取れることは、1点目の自閉症の人の物事や世の中の捉え方という部分では、「なるほど」とか「へー」とか思いつつ、それは著者独特の捉え方なのか、自閉症の人共通の部分なのかはわからないなということでした。2点目の哲学的な面に関しては、前向きでやさしい内容でありつつ、言い方には強い意志が感じられるなと思いました。簡単に言うと、前向きで共感できる捉え方が多いけど、自分はそんなに自信はないなという感じです。

自閉症の人が家族などにいて、苦しい気持ちにいる人が読んで前向きになれたといのはよくわかります。前向きにしてくれる効果はよかったんじゃないかなと思いつつ、自分にとっては少し視点を広げてくれるけど、悩ましい本だよなというのが感想です。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿