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yokkieの気になること

障害者・児童福祉のことが多くなるかな

「認定こども園の未来」を読んで

2014-04-29 23:04:05 | 福祉
「認定こども園の未来 ~幼保を超えて~」 
特定非営利法人 全国認定こども園協会 編著
吉田正幸 監修

認定こども園の事例集といっていい本で、認定こども園について興味がないと面白くない本です。自分はまさに当事者なので興味深く読みましたが、それでも多少単調なつくりなので、一気に読める本ではなかったです。

ただ、認定こども園ならではの共通性や、逆にいろんな取り組みがあるんだなということを知ることができて、認定こども園に携わっていたり、参入を考えていたりする人にとってはとてもよい事例集だと思いました。

著名な方々が最初に認定こども園についての考えを述べたり、各事例のコメントをしたりがあります。コメンテーターにはいかにも幼稚園よりの人と保育園よりの人がいますが、それも含めて手短な事例集から何を読み取るべきかの参考になります。

午後の時間をどうするか、お昼寝はするのか、異年齢にどう取り組むか、シフトと打合せ時間の確保、学校との連携、子育て支援と保育の絡み方などは、どこでも直面する課題であり、面白いところでもあるのでしょう。こども園という新しい枠組みだからこそ、新しいことにチャレンジできるチャンスなんだなと強く思ったので、生かせる方法を考えたいな。

気になったポイントを書き出してみてます。こども園のスタッフにこの本の紹介をしたいな。

『運命の子 トリソミー』 松永正訓を読んで

2014-04-20 13:47:49 | 福祉
最重度の障害児を授かる家族の話を通して、生命倫理について考えさせられる本です。題材、取材力、文章力、そして保護者達に対する真摯な姿勢が素晴らしく、どんどん読み進んでしまいます。2013年の第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞したのもわかります。

トリソミーとは通常2本ずつの染色体が3本に増えている染色体異常で、13トリソミーの場合は様々な奇形を伴い、半数以上の赤ちゃんが生後1か月、9割の赤ちゃんが1歳を待たずして命が果てるそうです。

副題が「短命という定めの男の子を授かった家族の物語」。この副題のとおり。筆者は病院から退院する13トリソミーの赤ちゃんの主治医となって保護者の話を聴き、また他の重度障害児の家族のもとに訪れます。

というのも、かつて19年間、大学病院で多くの子どもの執刀を行っていた筆者は、同じように致死的なな染色体異常である18トリソミーとして、積極的な医療行為を行えずに命を落とすのをみるしかなかった経験があるからです。当時は13トリソミーや18トリソミーといった致死的な遺伝子異常の子に対しては、過剰な医療行為という考え方が主流でした。

長年の大学病院での仕事を終えた時も、筆者は「障害新生児の生命倫理」に対して自分なりの回答を見付けられなかったと書いています。短命の運命を持った障害児を授かるとはどういうことなのか、筆者は家族の言葉に耳を傾け、丁寧に書いていくことで何らかの答えが得られるのではないか、赤ちゃんの生命を鼓舞し、家族への勇気になるのではと思い至り、この作品に取り組んでいます。

この本の書評はたくさんありますが、読み始めてまず思ったのは、短期間の交流で、こんなに突っ込んで質問ができるのかということでした。もちろん筆者なりに配慮しながら言葉を選んでいるのでしょうが、こんなに貪欲に尋ねるのかという思いを持ちながら読み進めていきました。

そして、親たちはそれに応えて実にいろいろな話をしてくれます。真剣に聴きたい人がいれば、話をしたいのだということを実感しました。そして、医療職という立場で聴き取りができること、自分の経験から考えられることがさらに深みを加えているのでしょう。書くことのできる専門職の価値がここにある本という気もします。

とんぼさんのもたもた保育専門店を読んで

2014-04-08 00:11:33 | 福祉
軽く読めるボリュームの本です。著者の湯浅とんぼさんは保育の世界では有名な方らしいです。

1940年生まれで、豊島区の千早子どもの家保育園に勤務、副園長を長年務め、あそびうた、あやとりなどの達人で、非常勤講師、子どもコンサート、親子のふれあい遊びや保育士研修講師など多彩に活躍されているそうです。あ、大学の先輩なんだ。

2001年の本なので、まだ副園長だった頃の著書になります。連載をまとめたもので、様々な視点から保育のヒントや楽しさ、感じてきたことを書かれています。

10年以上経つ現在からみると、ちょっと危なくて受け入れてもらうのは難しいなと思う事例もありますが、具体的な事例で書かれていて、保育は素人の私でも、なるほどなと思わせる内容です。

一番頭に残ったのは「「いじめる」ということばを使わない工夫を」というコーナーで、子どもがいじめるという言葉を使うとき、具体的な内容を確かめないと状況判断は困難なんだなと気づかされます。話を聞いてその場で考えさせること、子どもと共に考えることが大切なんだなと上手く納得させる事例が書かれています。

後は危機回避能力を身につけさせたいのは本当に多くの保育士が思っていることなんですが、いやー、とんぼさんのようにやることは今の状況ではなかなか難しいぞ、どうしたものやらと思ってしまいました。

でも危機回避能力の低下は、10年以上前から気になってることではあります。だって膝小僧とか身体がみんな綺麗だもん。




読書感想2つ

2014-03-26 21:56:14 | 福祉
『新版 ADHDのび太・ジャイアン症候群』 司馬理英子

ロングセラーの本に、新しい知識や情報を加味して改定した新版、といっても2008年ですが、今でも十分大丈夫な内容ですね。

サブタイトルの「ADHDとのじょうずなつきあい方がわかる」どおり、ADHDの子どもたちの特性を理解し、じょうずにつきあって子どもの持っている力を伸ばしていけるようにと書かれています。

当然専門家として、ADHDの特性やつきあうコツを書いてあるのですが、著者もADHDの子を最初はADHDのことを知らずに育てた経験を持っているので、そうした親子をはげます気持ちが伝わってきます。

読みやすいですし、ADHDについてはしっかりした知識はなかったので、楽しく読むことができました。しかし、かなりあてはまる部分があるなと思いました。不注意項目なんて、子どもの頃はまさにそのとおりな部分がたくさん。でも、すごく困ったわけではないので、診断の必要はないですが。学校にランドセルを忘れていったことのある人はあんまりいないみたいですね、おかげで話のネタにはなります!(^^)!


『自閉症スペクトラムとは何か』 千住淳

自閉症については、ADHDよりたくさんの方と接してきたし、知識もそれなりにはあるかと思ってますが、基礎研究者が遺伝について、心の働き、脳の機能からの視点、発達について、といった様々な角度から最新の知見を提供してくれるこの本は、知的好奇心の面からもとても興味深く読むことができました。自分の知識が知っているつもりの部分が結構あったことも気づかされました。

本の前半で自閉症に関する定義について、最新の診断基準DSM-5にのっとり説明してくれるのですが、それがとてもわかりやすかったです。私も自閉症やアスペルガーといった従来の診断が自閉症スペクトラム障害に統一されたのは知っていましたが、その検討経緯、理由などはわかっていなかったので、最新の理解を知ることができてよかったです。

のび太・ジャイアン症候群の本とはちがい、具体的なノウハウが書いてあるわけではないのですが、その分、自閉症という診断をする意味、さらには社会における「障害」とか「個性」についても考えることができる本かなと思います。こういう基礎研究に取り組む方って大切なんですね。著者の優しさも伝わってくる良本だと思います。

そういえば、身近なこととして、東学園が長年この著者の研究に協力していることが書いてありました。ありがとうございます。




ベビーシッター事件への意見を読んで

2014-03-23 10:22:03 | 福祉
ベビーシッターに預けての死亡事件が話題になってます。
単に容疑者や母親を叩いても何も変わらないことは多くのところで書かれています。でも、保護者の方々への注意喚起は必要として、それ以上の構造的課題をどう考えればいいのかは難しいです。
そこで気になった記事から考えてみました。

フローレンスの駒崎さんは、ベビーシッターへの公的支援が全くないことを指摘しており、補助券のような助成制度を提案されてます。
ベビーシッター宅での2歳児死亡事件についての解説

財源論にまで踏み込んでいて、資産を持つ高齢者の年金カットという正直乱暴でなかなか実現可能性が低いかなという提案をされています(わざとかな)。
影響力のある人は、啓発的な意味合いも含めてわかりやすく目立つ提言をするのもいいのかもしれません。

でも、子ども関係の予算増額は全く賛成だけど、子ども子育て新制度の予算も財源不足で削られそうななか、施設型中心の日本の福祉制度にそれを組み込むのは大変だぞと思ってしまいます。保育所も足らないし、質の確保のお金は削られそうだし、ベビーシッターに国費を出すなら、新制度にも対応できなそうなベビーホテルはどうするとか‥

結局、ベビーシッターという個別のサービスの話と、子育て支援への予算という財源の話を一緒にしてしまった結果、他の様々な政策との縄張り争いの話メインになってしまったのかなと感じました。

予算は予算で大切だけど、今まず大切な視点は、顔のみえる支援て大切だねということの確認なんじゃないかと思わされたのが、ばおばぶの五十嵐さんのエントリーです。
「制度外の福祉(人の福祉)」においては、事業者の姿が曝け出されているべきだ --ベビーシッター事件から考える

私は制度上の福祉をほぼメインで考え関わっている人間ですが、ここで書かれたことは重要な視点だなと思います。
制度上の支援だって、顔がみえることは大切ですが、誰か個人に依拠し過ぎない仕組みづくりも大切です。
制度に乗らない支援では、顔がみえることは生命線になってくるのかもなあと思いました。

整理すると、現状は制度外の支援であること、かなりの利用者がいること、顔のみえない提供形態が増えていることを再確認させられました。まずは現状で少しでも顔のみえる方法を考え、その重要性を保護者に伝える努力をし、その上で制度化の話も考えるということでしょうか。顔のみえる方法かあ。