☆これは高校生だか中学生だかに書いたもんです。一人称が三種類使われてたりなど、めちゃくちゃな部分だけは直しました。今見ても稚拙な文章ですがご容赦下さい(´ω`;)
「8ページの本を書け」という課題が出た時、これを発掘してきて無理くり八分割したのでついでに掲載します。すごく短い。
ではでは。山椒の実って醤油に漬けとくと一年持つらしいよ。
―――雨とバス停の魔法使い―――
駅を出ると、急に冷たい雨が俺の鼻に当たった。空を見上げるといつの間にか、狭い空が一面不機嫌な灰色になっている。
「ちっ・・・」
思わず、舌打ちが出た。悪い癖だとは分かっている。バックの中を漁ったが、折り畳み傘は入っていない。代わりに、濡らすわけにはいかない借りものの小説が入っていた。
今度は、小さくため息をついた。
最初「ポツポツ」だった雨足が、「パラパラ」になってきて、俺は焦った。こうなったら自転車で帰ることは諦めるしかない。
バス停まで、上着を傘代わりに走った。
バス停には、誰もいなかった。ということは、次のバスまで間があるということだ。本当にツイてない。泣きっ面に蜂とか何とか言うやつだ。幸いバス停には、ベンチと屋根はある。
暇つぶしに小説を出したが身が入らなくて、俺は何度も同じ行を読んでいることに気づき、やめた。なんだか、妙に落ち着かない。
バスの時刻表には、四時七分とあった。腕時計は、四時五分を指している。
なんだ、あとたった二分。
その時俺は、駅の方からこちらに向かってくる人影に気づいた。
俺と同じ、高校生くらいの女の子だけど、制服じゃなくて地味なワンピースを着ている。髪は、いわゆるおかっぱ頭みたいなショートカット。うす暗いから断定できないけど…かわいい子にみえる。
一瞬目があったように感じて、慌てて逸らした。
バス停で、俺はその子と二人きりになった。雨のカーテンに遮られて、バス停だけが外部と切り離されたみたいに思われる。なぜだか緊張した。
バスは、来ない。
俺は後悔し始めた。もう長いこと待っているのだ。走れば、もう家に着いている時間じゃないか?でも、俺が行ってすぐにバスが来たらと思うと動けない。
今、四時十五分。
俺は、雨の中に踏み出しかけた。
「ねえ」
唐突に、隣りで声がした。おかっぱちゃんが、こっちを見ている。
「…な、に?」
驚いて、カッコ悪い声を出してしまった。すぐに後悔したけど、後からはどうしようもない。
「賭けをしない?」
「…ハ?」
またもや、間抜けな声を出してしまった。ほおが熱い。
「何?」
「賭け。あと五分のうちに、バスが来るかどうか。私は来るほうに賭ける。どう?」
俺は何と答えたらいいか分からなかった。きっと、馬鹿みたいな顔をしていたんだろう。おかっぱちゃんはクスッと笑った。
細められた目が、一瞬緑色に見えたのは偶然だろうか。
「…うん」
気が付いたらそう言っていた。そして再びベンチに座って、二人ぼっちでバスを待った。
バスは、来ない。
妙な気分だ。昔、正しい呪文を唱えれば魔法が使えると思っていたことを思い出す。思いついた呪文を唱えるたびに息を潜めて奇跡を待った、あの感じ。目の前のペンを宙に浮かせようと、身じろぎもせずに念じた、あの感覚。
俺は、彼女の奇跡を信じ込まされていた。彼女の魔法を。俺は待った。バスが来るのを。
バスは、来ない。
そうして五分経った。
俺は黙っていた。俺はまだ信じていたかった。
「五分経ったね」
なんでもないことのように、おかっぱちゃんは言った。
「わたしの負けだ」
俺は何も言わなかった。なぜか、彼女に対して怒りが湧き起こった。筋違いな話だけれど、裏切られたような気分がした。
俺は彼女の方を見ずに、雨の中を走っていった。
バスは、それから一分ほど経ってからやってきた。
「8ページの本を書け」という課題が出た時、これを発掘してきて無理くり八分割したのでついでに掲載します。すごく短い。
ではでは。山椒の実って醤油に漬けとくと一年持つらしいよ。
―――雨とバス停の魔法使い―――
駅を出ると、急に冷たい雨が俺の鼻に当たった。空を見上げるといつの間にか、狭い空が一面不機嫌な灰色になっている。
「ちっ・・・」
思わず、舌打ちが出た。悪い癖だとは分かっている。バックの中を漁ったが、折り畳み傘は入っていない。代わりに、濡らすわけにはいかない借りものの小説が入っていた。
今度は、小さくため息をついた。
最初「ポツポツ」だった雨足が、「パラパラ」になってきて、俺は焦った。こうなったら自転車で帰ることは諦めるしかない。
バス停まで、上着を傘代わりに走った。
バス停には、誰もいなかった。ということは、次のバスまで間があるということだ。本当にツイてない。泣きっ面に蜂とか何とか言うやつだ。幸いバス停には、ベンチと屋根はある。
暇つぶしに小説を出したが身が入らなくて、俺は何度も同じ行を読んでいることに気づき、やめた。なんだか、妙に落ち着かない。
バスの時刻表には、四時七分とあった。腕時計は、四時五分を指している。
なんだ、あとたった二分。
その時俺は、駅の方からこちらに向かってくる人影に気づいた。
俺と同じ、高校生くらいの女の子だけど、制服じゃなくて地味なワンピースを着ている。髪は、いわゆるおかっぱ頭みたいなショートカット。うす暗いから断定できないけど…かわいい子にみえる。
一瞬目があったように感じて、慌てて逸らした。
バス停で、俺はその子と二人きりになった。雨のカーテンに遮られて、バス停だけが外部と切り離されたみたいに思われる。なぜだか緊張した。
バスは、来ない。
俺は後悔し始めた。もう長いこと待っているのだ。走れば、もう家に着いている時間じゃないか?でも、俺が行ってすぐにバスが来たらと思うと動けない。
今、四時十五分。
俺は、雨の中に踏み出しかけた。
「ねえ」
唐突に、隣りで声がした。おかっぱちゃんが、こっちを見ている。
「…な、に?」
驚いて、カッコ悪い声を出してしまった。すぐに後悔したけど、後からはどうしようもない。
「賭けをしない?」
「…ハ?」
またもや、間抜けな声を出してしまった。ほおが熱い。
「何?」
「賭け。あと五分のうちに、バスが来るかどうか。私は来るほうに賭ける。どう?」
俺は何と答えたらいいか分からなかった。きっと、馬鹿みたいな顔をしていたんだろう。おかっぱちゃんはクスッと笑った。
細められた目が、一瞬緑色に見えたのは偶然だろうか。
「…うん」
気が付いたらそう言っていた。そして再びベンチに座って、二人ぼっちでバスを待った。
バスは、来ない。
妙な気分だ。昔、正しい呪文を唱えれば魔法が使えると思っていたことを思い出す。思いついた呪文を唱えるたびに息を潜めて奇跡を待った、あの感じ。目の前のペンを宙に浮かせようと、身じろぎもせずに念じた、あの感覚。
俺は、彼女の奇跡を信じ込まされていた。彼女の魔法を。俺は待った。バスが来るのを。
バスは、来ない。
そうして五分経った。
俺は黙っていた。俺はまだ信じていたかった。
「五分経ったね」
なんでもないことのように、おかっぱちゃんは言った。
「わたしの負けだ」
俺は何も言わなかった。なぜか、彼女に対して怒りが湧き起こった。筋違いな話だけれど、裏切られたような気分がした。
俺は彼女の方を見ずに、雨の中を走っていった。
バスは、それから一分ほど経ってからやってきた。