一般的な若い勤労者の生活指針として面白い新刊書を見つけたので、ご紹介します。以下は、現在発売されている号の「週刊ダイヤモンド」の連載コラムに私(山崎元)が書いた原稿です。
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● 節約と生活における規模の経済
「夫婦で年収600万円をめざす!」というサブタイトルに興味を持って、花輪陽子「二人で時代を生き抜くお金管理術」(ディスカバー)という本を読んでみた。
勤労者世帯の平均的な収入は4百万円台前半の金額だから、夫婦共稼ぎで6百万円という設定は、現実的で想定読者が多いだろう。しかし、この本の著者もいう通り、年収6百万円は多くもあり少なくもある金額だ。お金の使い方、つまりは生活の仕方で、満足にも不足にもなるレベルの収入だろう。
著者は「昭和の時代遅れのライフスタイルでは破産する可能性もあります」と警告する。そして、時代遅れのライフスタイルとは、家と車を買い、生命保険にたくさん入り、夫だけが外で働き、老後は年金と退職金で国と会社を頼るような暮らしだという。
本誌の読者は、収入・年齢共に勤労者の平均よりもやや上の人が多いだろうから、6百万円に優越感を持つ一方で、生活を「時代遅れ」と言われて、愕然とする方もいるのではないだろうか。
詳しくは先の本を読んで頂きたいが、花輪氏は、早目に結婚して、共稼ぎで、賃貸の家に住み、自動車代(経費が大きい!)と生命保険を節約し、早めの貯蓄と自己投資に励む生活を推奨する。
稼ぎ手が二人いると、お互いのリスクヘッジにもなるし、生命保険に加入せずに済む点がいい。それに、若者は自動車を「格好の良い」消費財だと思わなくなった。
この著者の偉いところは、将来の収入につながるスキルアップや社交のための費用をしっかり確保することの重要性を説いている点だ。「夫のおこづかいが月3万円では出世しない」という項目をわざわざ立てて、「収入アップをめざすうえで、交際費は非常に大切です。とくに、男性はケチだと思われると、致命的に仕事に響きます」と書いている。この本を家に持って帰って、妻が見ることになっても不都合がないことを、男性読者にはお知らせしておこう。
生活に対する考え方は人それぞれだが、いざという時に、どうやれば、どの程度まで生活費を縮小できるのかについては、目処を掴んでおく必要がある。いわば「最小生活費」だが、これを十分低く抑えることができるなら、会社でいうと損益分岐点が低いのと同じだから、仕事でリスクを取ったり、自由な時間を使ったりすることができる。
それにしても、過去何十年にもわたって進行してきた核家族化と晩婚化が、生活の費用面での効率性を下げてきたことを感じる。
要は、生活にも規模の経済が働くということだが、これは、結婚してみるとよく分かる。二人になっても、生活費は一人暮らしの頃と較べてほとんど増えない。
もちろん相手次第の面もあるが、経済力に自信がないから結婚を先延ばしにするというのは、問題の解決を遅らせる道である可能性が大きい。経済力に自信がないからこそ早く助け合うのが正解だ。
また、特に働く女性にとっては出産の時期をいつにするかが問題だが、産休期間中に諦める仕事や収入を機会コストとして捉えると、相対的に収入の低い若い頃に子供を生むことが経済合理的な場合が多いかも知れない。
個人のプライバシーをどう確保するか等、工夫すべき点はあるだろうが、家族の場合は大家族、家族以外の場合もルームシェアのような生活形態を考えると、生活コストは大きく節約できそうだ。
単純に大家族に戻ることは難しそうだが、生活における規模の経済は、考えてみる価値がある。
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● 節約と生活における規模の経済
「夫婦で年収600万円をめざす!」というサブタイトルに興味を持って、花輪陽子「二人で時代を生き抜くお金管理術」(ディスカバー)という本を読んでみた。
勤労者世帯の平均的な収入は4百万円台前半の金額だから、夫婦共稼ぎで6百万円という設定は、現実的で想定読者が多いだろう。しかし、この本の著者もいう通り、年収6百万円は多くもあり少なくもある金額だ。お金の使い方、つまりは生活の仕方で、満足にも不足にもなるレベルの収入だろう。
著者は「昭和の時代遅れのライフスタイルでは破産する可能性もあります」と警告する。そして、時代遅れのライフスタイルとは、家と車を買い、生命保険にたくさん入り、夫だけが外で働き、老後は年金と退職金で国と会社を頼るような暮らしだという。
本誌の読者は、収入・年齢共に勤労者の平均よりもやや上の人が多いだろうから、6百万円に優越感を持つ一方で、生活を「時代遅れ」と言われて、愕然とする方もいるのではないだろうか。
詳しくは先の本を読んで頂きたいが、花輪氏は、早目に結婚して、共稼ぎで、賃貸の家に住み、自動車代(経費が大きい!)と生命保険を節約し、早めの貯蓄と自己投資に励む生活を推奨する。
稼ぎ手が二人いると、お互いのリスクヘッジにもなるし、生命保険に加入せずに済む点がいい。それに、若者は自動車を「格好の良い」消費財だと思わなくなった。
この著者の偉いところは、将来の収入につながるスキルアップや社交のための費用をしっかり確保することの重要性を説いている点だ。「夫のおこづかいが月3万円では出世しない」という項目をわざわざ立てて、「収入アップをめざすうえで、交際費は非常に大切です。とくに、男性はケチだと思われると、致命的に仕事に響きます」と書いている。この本を家に持って帰って、妻が見ることになっても不都合がないことを、男性読者にはお知らせしておこう。
生活に対する考え方は人それぞれだが、いざという時に、どうやれば、どの程度まで生活費を縮小できるのかについては、目処を掴んでおく必要がある。いわば「最小生活費」だが、これを十分低く抑えることができるなら、会社でいうと損益分岐点が低いのと同じだから、仕事でリスクを取ったり、自由な時間を使ったりすることができる。
それにしても、過去何十年にもわたって進行してきた核家族化と晩婚化が、生活の費用面での効率性を下げてきたことを感じる。
要は、生活にも規模の経済が働くということだが、これは、結婚してみるとよく分かる。二人になっても、生活費は一人暮らしの頃と較べてほとんど増えない。
もちろん相手次第の面もあるが、経済力に自信がないから結婚を先延ばしにするというのは、問題の解決を遅らせる道である可能性が大きい。経済力に自信がないからこそ早く助け合うのが正解だ。
また、特に働く女性にとっては出産の時期をいつにするかが問題だが、産休期間中に諦める仕事や収入を機会コストとして捉えると、相対的に収入の低い若い頃に子供を生むことが経済合理的な場合が多いかも知れない。
個人のプライバシーをどう確保するか等、工夫すべき点はあるだろうが、家族の場合は大家族、家族以外の場合もルームシェアのような生活形態を考えると、生活コストは大きく節約できそうだ。
単純に大家族に戻ることは難しそうだが、生活における規模の経済は、考えてみる価値がある。
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