「そうだよ」
「赤は?」
「『止まれ』だよ。当たり前だ」
「はたしてそうかな?」
「え?」
「今から信号の常識を言葉の上でくつがえす。『赤は進め』『青は止まれ』にしてみせる」
「やってみろ。絶対無理だ」
「まず、赤と青、平等に扱う為に、中立の状態から話を始める。つまり、今お前は、交差点の真ん中にいます」
「はいはい」
「その時、信号が青だったら?」
「進めだよ」
「赤だったら?」
「『止まれ』だよ。ん?危ない!進まなきゃ危ない!」
「はい。『赤は進め』」
「本当だ!」
「その信号に交差している車は?赤だけど?」
「止まれ!」
「青は止まれ」
「本当だ!」
「つまりだ。"赤だから止まる"じゃない。"赤の時は危ないから止まる"なんだ。
"青だから進む"じゃない。"青でも危ないなら進んじゃダメ"なんだ。
路上駐車をしないのは駐車禁止のマークがあるからじゃない。迷惑だからだ。
酒呑んだら運転しないのは、検問やってるからじゃない、危ないからだ。
『ルールを守る』ってことは『その言葉の表面にだけ従う』って意味じゃない。
大事なのは"そのルールが持っている意味を理解すること"なんだよ」
「なるほどなー」
「だろ?」
「赤は進め、青は止まれ、ってことだったんだね」
「……違うよ」
「え?」
「赤は止まれ、青は進めだよ」
「何言ってんだよ。いいか?交差点の真ん中で赤になったらどうすんだ?」
「そりゃあ、進まなきゃな」
「車は?」
「止まれ」
「ほら」
「本当だ。赤は進め、青は止まれだったのかぁ、とはならないからな?」
「え?」
小林賢太郎戯曲集STUDY ALICE TEXTより「不透明な会話」
この続きもまだまだあるんですが、好きなくだりを選んで載せました。
youtubeやニコニコにあがってると思うのでチェックしてみてください。ラーメンズです。
この記事書いてて思ったんですけどこれって数学の公式にも当てはまりますよね。
「『公式に当てはめる』ってことは『ただそこに代入して計算すればいい』って意味じゃない。
大事なのは"その公式が持っている意味を理解すること"なんだよ」
勉強って結局こういうことだと思います。
うちの高校はレベルが低いので、先生すら「意味が分からない人は、とりあえず公式覚えて計算してください」とまでいいます。
これって「勉強」じゃないですよね。
定積分の計算をいかに間違わないかより、定積分がなぜ面積を表すのか、こっちのほうがよっぽど大事だと思うんですけどねぇ。。