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11日晩、もうひとつ葬儀に出る。
僻地の或る町内会の役員、子ども会の世話焼きなどを務めていた「凧揚げオジサン」こと山田弘さんの通夜。底冷えのする会館に町内の数十人の人々が寄りあう。
永年、さる大手の会社に勤めていたはずだが、葬儀では学歴や職歴の紹介もなく、ただ、親しく指導を受けてきた地域社会のオジサン、オバサン(元青少年)によって、その人柄が口々に語られる。
岡幸男さんとは同世代。著書も業績もなく、ただ愛の交わりの残り香のみ。これこそ「地の塩」。彼の「世の光」に対応する、此は見事な陰徳(いんとく)の生き様である。
「振返ったらあきまへんで、お礼を言われてしまうとな、御利益(ごりやく)が無(の)うなってしまいますのや」(樫尾忠雄「私の履歴書」より)
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