総天然色日記

映画、怪獣、プリパラなど好きなものについて色々書いていきます。

茨城県民の自虐が炸裂!特撮人形劇「イバラキ警備隊」を知っていますか?

2016-02-17 21:46:29 | 特撮
イバラキ警備隊とは。

茨城…それは最後のフロンティア。自然豊かな風土や様々な観光資源。おいしい食べ物や優しい人々。そして味わい深い寂れた田舎感。それらを狙う悪の手から自主的に防衛を行う組織。それがイバラキ警備隊(FRONTIER DEFENCE FORCE)である。
人形と茨城の実写風景とを融合させたハイブリッド人形劇です。メインキャラクターはすべて人形、物語の舞台となる場所はすべて茨城の風景や観光地。
事件の被害者・エキストラは茨城県の方々。県内の人間だからこそ分かるポジティブな事もネガティブな事も丸ごと盛り込んで、笑って見られる娯楽ヒーロー作品を目指します。
(公式サイトより引用)


ワッヘンフィルムスタジオ制作の、新感覚、しかしどこか懐かしいにおいのする特撮人形劇です。
美術造形はなんと、特撮ファンにはおなじみの造形作家である寒河江弘さん。
茨城県が運営するインターネットテレビ「いばキラTV」で本編が全話無料配信されています。

→いばキラTV「イバラキ警備隊」

本作は、ミニチュア人形の操演と特殊撮影技術の組み合わせで、私たちの知らない茨城県の新しい姿を見せてくれるすばらしい作品です。
私自身は茨城県に縁もゆかりもない人間ですが、イバラキ警備隊が大好きです。この記事では、私が感じた本作の魅力を紹介します。

1. 自虐が激しい

この作品は、タイトルのとおり茨城県のPRが目的で制作されています。それもただの宣伝ではなく、いつの間にか茨城県の「お家芸」となった自虐ネタで勝負しています。
そのため、とにかく自虐が激しい。気を抜いていると次から次へと笑っちゃ悪いけど笑うしかないネガティヴ・ギャグが飛び出します。



例えばこちら、イバラキ警備隊の警備ロボ「47号」。自虐に関係ないけど、まず目がイってて怖い。
この47号、名前の由来は茨城県が「都道府県の魅力ランキング」で47位、つまり最下位をとったことに関する戒めの数字だということが作中で語られています。設定が重い。

また、主人公のヒタチ隊員は、大学入学とともに上京、茨城と比べてビルがでかい(※劇中の表現)都会の空気に圧倒され、心の拠り所を求め大学卒業後は故郷である茨城へと帰ってきたという設定です。

さらにこちら。第二話に登場するメロン生産者の青年と一般県民のやり取り。



「茨城県はメロンの産地。しかしあまり知られていないんです!この現状をどうお思いですか皆さん…!」
「えっ!そうなの?知ってた?」「わかんな〜い。」
「馬鹿野郎、お前ら県民どもの意識が低いからいつまでも!!!!」

前代未聞、県民の意識の低さをハッキリと指摘するご当地PR番組。
(個人的にはこの台詞の登場するエピソード#2-1〜#2-4「誤ったアピール!メロンと有名な滝」が一番お気に入りのエピソードです。)



2. 特撮ヒーローものならではの作風

「イバラキ警備隊」は、変身ヒーローこそ出てきませんが、悪の怪人軍団「ブラックローズ団」vsイバラキ警備隊 という構図は特撮ヒーローものの作風そのものです。
変身しない、巨大ロボットの存在しない特撮ヒーローものというと、ウルトラQや怪奇大作戦や緊急指令10-4・10-10、また人形劇という点ではサンダーバードが近いですね。

イバラキ警備隊は、そういった「ヒーローもの」の作風で県のPRを自虐を交えて展開していくという、おそらく初の試みを行っています。
そのために、一般的なローカルヒーローとは決定的に違う点がひとつあります。
「県の名産品と怪人の関係」です。
多くの場合、ローカルヒーロー作品は県の魅力を伝えるために存在しているので、県の名産がそのままヒーローのモチーフになっていて、敵である怪人はそれらを脅かす存在となっています。
しかしイバラキ警備隊の場合、県の名産が怪人のモチーフです。



なぜかというと、悪の組織ブラックローズ団の目的は「茨城県のイメージダウン」だからです。茨城県の名産を怪人にすることによりその名産(例:あんこう、メロン)のイメージダウンをはかり、ゆくゆくは茨城県全体への印象が下がる、といった目論み。
劇中の紹介によると、茨城県の魅力が低下しランキング最下位となったのも彼らの仕業らしいです。

3. 純粋なPRもきちんとこなしている

自虐だけでなく、正直なPRもしっかりとこなしているのがイバラキ警備隊の魅力。
ブラックローズ団による観光地のイメージダウンという目的もあるので、怪人が現れるのは決まって県の中でも有名な場所。
ヒタチ隊員が現場へ向かう際は、突然ナレーションが丁寧な口調に変わって、車や公共交通機関でのアクセスをテロップ付きで詳しく教えてくれます。




更に、現地の人じゃないとわからない細かい情報も!

▲ヒタチ隊員「よし、少し遠いが無料駐車場にとめてダッシュだ!!」

4. 監督ががんばっている

本作監督の飯塚貴士さんは、脚本・撮影・編集・音楽・声優をほとんどすべてお一人で担当されています。登場キャラクターは何人もいますが、生身の人間(エキストラの茨城県民の皆さん)以外はナレーション含め全員監督の声、女性であるミトコ隊員まで監督の声です。(そのため、時々誰の台詞かわからなくなることも…)

5. ギャグが全部面白い

自虐ネタが売りの本作ですが、自虐じゃないギャグ(この表現が既に駄洒落っぽいのがなんか恥ずかしい)もかなり盛り込まれていて、監督のセンスの光る独特なノリがクセになります。不意打ちで襲ってくることが多々あるので、家に1人でいるときじゃないと見られないです。
こういうのって文章で紹介してしまうと面白みが半減してしまうので、どんなものか気になる方は本編を見てください。

#0 プロローグ「説明!イバラキ警備隊のひみつ!」から見たほうが細かい設定などがわかってから作品を楽しめますが、本作の最大の魅力であるギャグと特撮技術が本領を発揮するのは#1「見ためが恐い!アンコウという魚」からだと個人的には思うので、お試し感覚で手っ取り早く作品のノリを知りたい方は、このエピソードから観賞を始めるのをおすすめします。



さて、私がイバラキ警備隊をどれだけ愛しているか、どこに魅力を感じているのかは大体わかっていただけたとは思いますが、
そもそも私がこの作品を知ったきっかけには、イバラキ警備隊と同じ飯塚監督が制作されたNHKの特撮人形劇「補欠ヒーローMEGA3」の存在があります。



補欠ヒーローMEGA3はイバラキ警備隊とほぼ同じ、ミニチュア人形と特殊撮影で展開されるヒーローもののショートドラマです。人形特撮ならではの画面の雰囲気やギャグのノリなど、作品の魅力的な部分はイバラキ警備隊とほぼ一緒です。
私はこの「MEGA3」、ゆうばりファンタスティック映画祭2015での一挙上映と監督による作品解説で初めて存在を知り、同時にその魅力に取り憑かれ一瞬で大ファンになってしまいました。
作品の概要やメイキング映像はネット上で公式に公開されているので、気になる方は是非調べてみてください。なんと声優として斉藤工さんが参加されています。

しかしこの「MEGA3」、かつてニコニコ動画で公式配信を行っていたようですが、2016年2月現在、インターネット上のどこを探しても動画が存在せず、ソフト化もされていません。
悲しみに暮れた私は、それでも飯塚監督のあの特撮作品への愛と最高の笑いを詰め込んだ人形劇が観たい、今すぐに観たいという気持ちで、執念深く情報を集めました。
そこで出会ったのがこの、イバラキ警備隊。ソフト化こそされていないものの、Youtubeの公式チャンネルで全話配信している。しかもかなりの話数がある(動画の長さ自体は、1話につき大体2分程度です)。
基本的なテイストは「MEGA3」と共通でありながら、ギャグ(主に自虐方面)のキレや話のテンポが更に進化したのがこの「イバラキ警備隊」。

また、本来茨城県のPRという目的で作られた本作ですが、しっかりその役目は果たしていると思います。
少なくとも私と、私が個人的に勧めた大学の後輩は、茨城県に縁もゆかりもない人間ですが、この作品の魅力に取り憑かれ、茨城県について沢山の知識を得ました。
あんこう鍋の作り方や、茨城県はビルが小さいこと、茨城県ではメロンを作っていること。また、かき氷のメロンシロップにメロン果汁は含まれていないこと……。

というか茨城県って、言うほど魅力ない?そんなに?と思います。私は茨城に行ったことは一度もありませんが、水戸黄門や納豆の知名度は言うまでもありませんし、つくば市という最先端の研究都市もあります。
またここ最近では、劇場版も公開されたアニメ「ガールズ&パンツァー」の影響もあり、大洗には沢山のファンが訪れてその魅力を共有しています。
そして何よりも、私がイバラキ警備隊以前から知っていた茨城のローカルヒーロー「時空戦士イバライガーR」の一員であるヒロイン、イバガールが超かわいい。
こんなに沢山の魅力があるのに、県の魅力ランキング最下位という、その事実が逆に意外でした。


▲イバガール(画像左)。「いばキラTV」内の茨城PR動画「なめんなよ♡いばらき県」THE MOVIEにも出演しています。


しかしランキング最下位という数字があるのは事実ですし、地域の魅力って、舞台となった作品の知名度、観光地や名産だけで決まるような簡単なものではないんだなぁ、というのもこの作品から学びました。

そんな中、魅力ランキング連続3年間最下位という事実を受け入れ、自虐という形で他の地域には真似できないPR方法を思いつき、こんなにすばらしい作品ができたのだから、茨城の未来は明るいはずです。

あわよくば、続・イバラキ警備隊を作ってほしい!!

◆参考

いばキラTV「イバラキ警備隊」
ワッヘンフィルムスタジオ
茨城県を守る【時空戦士イバライガー】公式サイト
「のびしろ日本一。いばらき県」PR動画 (平成27年度いばらきを知ろう!大キャンペーン)
「なめんなよ♡いばらき県」THE MOVIE

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