会社が休みだったので富山県の黒部川にある黒部川第四発電所を見学してきました。関西電力が定期的に開催している黒部ルート見学会に申し込み、参加できることになったのです。黒部川第四発電所は、先日のブログ記事の黒四ダムの貯水を利用している発電所で、黒四ダムはこの発電所のためにある、と言っても過言ではありません。
10月1日、台風並みの暴風雨を引き起こす低気圧が接近中との予報を聞きつつ始発の北陸新幹線で長野を発ち黒部に向かいました。まだ真新しい黒部宇奈月温泉駅で新幹線を降り、富山地方鉄道に乗り換えて黒部峡谷鉄道の乗り換え駅の宇奈月温泉駅へ向かいます。
富山地方鉄道宇奈月温泉行きワンマン列車
新黒部駅は無人駅でワンマン列車のため、乗車時整理券を取って後払い精算になります。この駅の乗客は私だけでした。
さて、この見学会、黒部峡谷鉄道の終着駅欅平に9:20集合となっています。それに間に合うためには、7:57宇奈月駅発の黒部峡谷鉄道のトロッコ列車に乗る必要があります。そしてこの列車の宇奈月温泉着は7:50なので乗り換えの時間は7分しかありません。見学のしおりでは乗り換えに約15分掛かるとあり、単純に考えれば間に合わないので前泊になります。そこで、申し込む前に果たして7分で乗り換えられるものなのかどうか検討しています。その結果、駅間の距離は200m程度であり、乗り換えに手間取らなければ大丈夫と見込んでいます。料金分の小銭を用意して精算に手間取らないようし、降車後迷うことのないよう宇奈月温泉駅から宇奈月駅へのルートをチェックしています。
列車は定刻に宇奈月温泉着。ささっと改札に向かい料金をスパッと支払って足早にまっすぐ宇奈月駅へ。黒部峡谷鉄道の乗車料金は前払い済みのため、窓口で書類を提出して乗車券を発券し、改札を通って無事7:57発の列車に間に合いました。今回は列車の遅延や改札で待たされることもなかったので余裕で間に合いましたが、乗客が多かったり団体での移動だったら7分で乗り換えるのは厳しいかもしれません。
二重連構成の後ろ側の機関車。
小さいながらも立派な電気機関車です。
窓付きの特別車で室井滋さんの切れ目のないアナウンスを聞きつつガタゴト揺られながら黒部川沿いに一路欅平へ。黒部川にはその有効活用のためにダムと発電所が連なっています。
最初に目に入ってくるのが国土交通省所管の宇奈月ダム(2001年竣工)。
そしてダム湖。
それからダム湖畔にある新柳河原発電所(1993年4月1日発電開始, 認可最大出力41.2MW, 有効落差93.20m, 使用水量50.92m3/s)
線路がそのまま発電所内に引き込まれているのが格好いい!この発電所は出し平ダム、二見取水ダムから取水して発電とのこと。
列車は途中駅を飛ばしてどんどん進みます。黒薙川に架かる後曳橋を渡るトロッコ列車
トロッコ列車はこんなトンネルを次から次へと走り抜けます。
トロッコ列車車内
写真中央右下に見える小さい建屋が出し平発電所のようで、従来からあった河川維持放流管の先に発電所を設け、河川維持放流も発電に利用するというもののようです。途中で見かけた看板には最大出力540kWとありましたが、どちらが正しいのでしょうか。
続いて黒部川第二発電所(1936年10月30日発電開始, 認可最大出力72MW, 有効落差177.02m, 使用水量47.20m3/s)
戦前竣工の建物ですが直線で構成されたデザインは、今でも十分ありそうな現代的なもの。
黒部川第二発電所の取水口のある小屋平ダム(1936年竣工)。
小屋平ダム上流。
ダムに土砂が相当堆積しているようなので、この貯水を利用する第二発電所の発電電力量も運用当初に比べれば相当落ちているはずです。いつか浚渫するのでしょうか。
トロッコ列車の終着駅の欅平に到着。駅のホームから黒部川第三発電所(1940年11月22日発電開始, 認可最大出力86MW, 有効落差275.60m, 使用水量36.31m3/s)が見えます。
先の第二発電所に遅れること4年後に竣工したこちらも戦前の建物とは思えない現代的な作り。1940年といえば太平洋戦争開戦の1年前で、1937年7月の盧溝橋事件に端を発する終わりの見えない日中戦争に日本国内は疲弊し、国際社会からも既に日本は孤立してしまっていた時代です。そんな重苦しい空気に日本が包まれている最中に、この秘境ともいうべき黒部峡谷で建設が進められたのがこの発電所です。そして、この発電所の取水口となる仙人谷ダムの建設資材を運ぶための軌道用トンネル掘削中に遭遇したのが、かの高熱隧道となるわけです。
黒部ルート見学会はここ欅平からスタートです!