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音楽家 ヲノサトル のブログ

[恐縮ですが育児中 16]

1900年01月16日 | [特集] コラム「恐縮ですが育児中」
ヲノサトルの
恐縮ですが育児中!

16. クルマと鉄道







子ども、というか男の子って、乗り物が好きですよね。

公園に行っても、鉄棒やジャングルジムではなく、まずはブランコやシーソーのような「動く遊具」めがけて駆け出します。

(余談ですが、A地点からB地点に移動する時は必ず、無意味に全力疾走する息子を見ていると、このエネルギーを発電にでも回せないかと思います)

当然、現実の移動に使われるヴィークルにも、かなり小さい頃から興味を示します。

ところがこの乗り物趣味、早くから「クルマ派」「鉄道派」に分岐するのが面白い。玩具がたくさん用意されている キッズランドのような場所に行くと、はっきりわかります。

レールを自分でつないで周回軌道を作り、電車を延々と走らせて飽きない子。ミニカーを集めてブーブーと自分で動かしたり整列させる子。

両者は別々に遊び、まるで別の惑星の生き物のように、ほとんど交わりません。

果たして生まれつきか、環境のせいかはわかりませんが。とにかく男子は2つの派閥に分かれるようです。

ちなみに、うちの息子は完璧にクルマ派。鉄道系のオモチャには一切、興味がない。ためしに鉄道博みたいなイベントに連れていっても、一向にテンションが上がらない。

しかし彼の気持ち、わかるんです。実は当方も鉄道には、実用性以外の興味が全くないんですよね。

聞くところによると、鉄道ファンというのは「乗り鉄」「撮り鉄」果ては時刻表を読むだけの「スジ鉄」などと、果てしなく細分化してしまっている。

ほとんどアンダーグラウンドなフェチの世界みたいになってるらしいじゃないですか。とてもじゃないが、入っていく野心も勇気もありません。

一方、自動車ならば当方とて、それなりにこだわりもあるというもの。

もちろん、やれミッションがイカれたエンジンが火を噴いたと、故障すればするほど嬉しがるド変態なマニア(イタリア車や旧車のファンに多い)には遠く及びませんが。

コーヒーをすすりながら、カタログを眺めては

「ほう、ツインカムターボか…」

などと、わかりもしないくせに、どこかで聞きかじった専門用語を、とりあえずつぶやいてみたり。

「カーナビ?あんなもの、シロウトのオモチャだね」

と、己のカンだけを頼りに道を選ぶ孤高の男を気取るものの、いつの間にか袋小路に入り込んで、帰れなくなってみたり。

その程度には、クルマ好きと自負しております。

しかし、そんな茶番劇はさておき、他の父子を見ても、この「派閥」は高い確率で遺伝しているようです。

プラレールで遊ぶ鉄道少年の横には、腹這いになって

「このレールはそっちだ!そこに、このモハ43系を置いて!」

などと唾を飛ばし、しょっぱい声で叫んでいるお父さん。

トミカで遊ぶミニカー少年の横には、

「はい赤はこっちね。白いのはこっちに並べよう」

などと色ごとに車を分類し、テーマパークの駐車場係にでも転職したら?と助言したくなるほどの几帳面さで、ミニ駐車場に整列させ続けているパパさん。

いずれも子どもをさしおいて、 開ききった瞳孔をギンギンに輝かせながら、それぞれの作業に没頭しているところが共通しています。

そして、その後ろを見ると、遊び場の外に座り込み「つきあっちゃられんわ」といった体で、無表情にスマートフォンをスクロールし続けるお母さん方の姿。

「大人の男とは結局、図体が大きくなっただけの "男児" にすぎないのか…」とあらためて認識させられるのは、こんな瞬間です。

いやはや、まったくもって恐縮です…。(男性代表として)

明和電機ジャーナル 第19期 第4号 (2012年11月15日発行) 所収, に加筆訂正

15. ヴァカンス < 恐縮ですが育児中!>17. 年中行事


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