藤娘的 2

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ああしんど

2008-11-13 | 猫←実家+α
 青空文庫で公開されている文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会 池田蕉園「ああしんど」

 よっぽど古いお話なんで御座いますよ。私の祖父の子供の時分に居りました、「三(さん)」という猫なんで御座います。三毛だったんで御座いますって。
 何でも、あの、その祖父の話に、おばあさんがお嫁に来る時に――祖父のお母さんなんで御座いましょうねえ――泉州堺から連れて来た猫なんで御座いますって。
 随分永く――家に十八年も居たんで御座いますよ。大きくなっておりましたそうです。もう、耳なんか、厚ぼったく、五分ぐらいになっていたそうで御座いますよ。もう年を老ってしまっておりましたから、まるで御隠居様のようになっていたんで御座いましょうね。
 冬、炬燵の上にまあるくなって、寐ていたんで御座いますって。
 そして、伸をしまして、にゅっと高くなって、
 「ああしんど」と言ったんだそうで御座いますよ。
 屹度、曾祖母さんは、炬燵へ煖って、眼鏡を懸けて、本でも見ていたんで御座いましょうね。
 で、吃驚致しまして、この猫は屹度化けると思ったんです。それから、捨てようと思いましたけれども、幾ら捨てても帰って来るんで御座いますって。でも大人しくて、何にも悪い事はあるんじゃありませんけれども、私の祖父は、「口を利くから、怖くって怖くって、仕方がなかった。」って言っておりましたよ。
 祖父は私共の知っておりました時分でも、猫は大嫌いなんで御座います。私共が所好で飼っておりましても、
「猫は化けるからな」と言ってるんで御座います。
 で、祖父は、猫をあんまり可愛がっちゃ、可けない可けないって言っておりましたけれど、その後の猫は化けるまで居た事は御座いません。

底本:「文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会」ちくま文庫、筑摩書房
   2007(平成19)年7月10日第1刷発行
底本の親本:「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂
   1911(明治44)年12月
初出:「新小説 明治四十四年十二月号」春陽堂
   1911(明治44)年12月
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2008年9月26日作成


 我が家の猫も猫又(9才)を過ぎた頃からいつ人間の言葉をしゃべりだすかと待っているのだけど、いまだしゃべっているところは家族の誰も見ていない(聞いていない)。
 いま17才だから、来年になったらしゃべるかな?

ところで作者の池田蕉園は画家の池田蕉園

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2 コメント

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17才!!! (room7ことdodo)
2008-11-22 21:40:46
17才ですか! 人間の言葉は話さなくても、人間の気持ちは十分に理解していそうですね。
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Unknown (藤娘)
2008-11-25 08:18:31
room7ことdodoさん おはようございます。
動物病院で見た年齢換算表によると、猫の17才は人間の84才にあたるようです。
猫が私達家族に笑いや楽しみをたくさん与えてくれているのに、私達は猫に応えられているか気になるので、人間の言葉で会話が出来たらなぁって思っています。
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